京都北山に咲く花’16.4.2

 前回の北山ではキンシベボタンネコノメソウ(ユキノシタ科ネコノメソウ属)がひと花しか見られなかったので、今回は徘徊エリアを広げてみようと出かけた。やはり、山麓から奥へ入らないと出会いたい花にも出会えないことが判明した。手っ取り早いエリアはどうしても盗掘の手が出てしまうのか、今回も10日前の前回に咲いていたひと花だけだった株が、無くなっているのを見て心痛んだ。そして昨年見たヤマシロネコノメもまったく無くなっていた。やっぱりネット上にも咲く場所は伏せざるをえないのはご理解を得たい。最もこの種は湿気の多い場所を好むために、今年の異常気象による雪量少なしが大きく原因していることも判明した。去年まで咲いていた場所がほとんど乾いた地に変貌し、もちろん全く影も姿も見なかったのだ。

 さて、今回の花、キンシベボタンネコノメを中心にご覧いただこう。ただし、キンシベボタンネコノメソウにヒメヒダボタンが酷似するために自信はないが、後者が岐阜県方面に分布とあるので一応北山に咲くのはキンシベ・・で妥当だろうか。ただ、相違点は雄しべの長短による違いで、キンシベボタンネコノメソウの雄しべは萼より2/3ほどと短い方で、ヒメヒダボタンの雄しべの長さは萼と同じくらいのようだが、これは雄しべを細かく萼と長さの比較が必要であろう。今回は上からルーペで覘いての判断だったが、本来ならピンセットで萼を外して雄しべと萼との比較を観察したい。

     
     
    キンシベボタンネコノメソウ     
         

 

以下は以前にも書いたボタンネコノメソウ類についての解釈等であるが、再度取り上げてみよう。

 さて、このボタンネコノメソウ類等についてもなかなか同定が容易ではない種だろう。そもそもキンシベボタンネコノメソウはボタンネコノメソウの仲間である。他にはボタンネコノメソウにアカヒダボタンはよく似てはいるが、それはヒダボタンの新変種となったらしい。私なりのそれぞれの観察ポイント等をピックアップしてみよう。

キンシベボタンネコノメソウ
 こちらもヒダボタンに似るが 萼裂片が黄緑色と淡く、葯の色が黄色で、雄しべは萼より2/3と短いようだ。全体的には萼や苞の色合いが蛍光色に輝くように見え、私的にはネコノメソウ類の女王に見立てたいほどきれいなお花に見えるが・・・?。

ヒメヒダボタン
 こちらはヒダボタンの変種らしいが、ヒダボタンは岐阜、福井あたりの分布だが、ヒメヒダボタンはさらに滋賀県にも咲くようだ。でもヒメヒダボタンはキンシベボタンネコノメソウに酷似しているのではないだろうか。ということでここで比べてみたい。

 ヒメヒダボタンの特徴は萼裂片は黄緑色で直立し、葯の色は黄色で萼裂片より飛び出さないが長さは萼と同じくらいの長さのようだ。滋賀県ではこちらは湖東、キンシベボタン・・は湖西に住み分けているとのネット情報もある。なお、ヒメヒダボタンの母種であるヒダボタンとの相違点は葯の色が黄色でなく、ヒダボタンの葯は暗褐色であることが大きな区分点である。要するにヒメヒダ・・とキンシベ・・との相違点は葯の長さで、どちらも萼から飛び出さないが、萼の長さの2/3ほどと短い方がキンシベボタンネコノメソウであることになるのだが、いずれにしても極めて微妙なようだ。


ボタンネコノメソウ
 以前はみなボタンネコノメソウと呼ばれていたようだが、アカヒダボタンの名で1995年にヒダボタンの新変種として発表され区別されるに至った。ボタン・・の主たる特徴は萼裂片4個は暗紅褐色で直立する。雄しべ8個は 萼片より短く、萼の長さの3分の2程しかない。葯は暗紅色。

アカヒダボタン
 ボタンネコノメソウと似るが萼裂片の色合いがボタン・・よりやや赤っぽく見え、暗赤褐色か。萼は直立し、雄しべ8個は萼片と同じくらいの長さ。葯の色合いはネット上には黄色とよくあるが、日本植物分類学会会員の研究発表にある暗赤色とした。

     
萼色からアカヒダボタンかな、でもボタンネコノメか くすんだ暗褐色からボタンネコノメソウか

 続いてシロバナネコノメソウがいよいよ満開となっていっぱい見せてくれ歓迎してくれた。

シロバナネコノメソウ 
     
         
         

 母種のシロバナネコノメソウに対し、変種であるハナネコノメとの同定ポイントはボタンネコノメソウ類とは異なり、相違点が比較的はっきりしているようなので、観察時に悩まなくてすみ、ありがたい種だろう。

・シロバナ・・は全体に白軟毛が多く、ハナ・・は無毛ではないがそんなに毛は多くない。また、白色の花びらのように見える部分が萼裂片で、この幅がやや細っぽく、先が尖り気味に見えるのが前者で、また、萼裂片の幅がやや広く見え、その先が尖らずやや丸っぽいというのがハナ・・であるのが一般的な相違点である。

・さらに近年、分かりやすい相違点が世に出て観察しやすい種となった。それは花粉の色が白っぽいのが前者で、後者は黄色との同定ポイントであろう。

・もちろんそれ以外に相違点はいろいろあるのだがそれらは専門的すぎ、かたや近年の説である、花粉色に目を利かせれば素人にも同定し易い。しかし、いずれにしてもユキノシタ科ネコノメソウ属は相対的に相違点が細かく、同定には苦労する種であることも知っておきたい。

 ついでにタチネコノメソウもご覧いただこう。こちらは葉が離ればなれにつく姿は他にはほとんど見られない。しかし近縁種でツルネコノメソウも姿は似ている。ツルネコノメソウは走出枝のつるが地上に見え、タチネコノメソウのつるは地中につくために地上には見えないのが相違点であり、比較的同定は容易であろう。でも、ツル・・は北山では未確認で分布域ではなさそうだ。他にネコノメソウ、ヤマネコノメソウも多数咲いていたが、この二種はどこにでもある種のために省略としたい。

 








 
   
     タチネコノメソウ    

 続いて他に見られた山野草をご覧いただこう。これら以外にミヤマカタバミ多数満開、ヒメカンスゲ満開、トウゴクサバノオ実つけ終盤、ユリワサビ多数終盤

         
 スズシロソウ(アブラナ科)終盤  ヤマルリソウ(ムラサキ科)満開  ミヤマキケマン(ケシ科)咲き初め  コチャルメルソウ(ユキノシタ科)満開   カテンソウ(イラクサ科)満開

 最後に木本類だが、こちらは開花はまだまだこれからであろう。他にはキブシ満開、ヤマザクラ咲き初め

       







 フサザクラ(フサザクラ科)終盤  ツノハシバミ(カバノキ科)雌花、奥雄花  フッキソウ(ツゲ科)つぼみ  ダンコウバイ(クスノキ科)満開

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