比叡山に咲く花’16.4.10

 早春の頃に出会える花を求めて比叡山を10日毎に三度目の花散策であった。今回はいつもの徘徊をやや広げてみることとしたために、あるいは4月中旬となったこともあって種類や咲き誇る状態が変わってきたこともあって楽しい花巡りでもあった。

 まずは早春の頃が見どころであるネコノメソウ類からはいろう。

◎シロバナネコノメソウ(ハナネコノメではなく・・)

 この種はもう終わり同然となっていたが、よく見れば残花もあり今年もこの花に方々で多くの出会いがあったと感慨深く眺めているのであった。結局、比叡山はもとより、京都北山の各所を含めてユキノシタ科ネコノメソウ属のシロバナネコノメソウを母種とする変種の仲間で、ハネネコノメを見ることができなかったことを自らの判断とし、本年のネコノメソウ類の観察を終えることとしよう。
     
ほとんどが咲き終わり花粉状態    でも中にはまだ残り花も少しあり 

 シロバナネコノメソウとハナネコノメの相違点は、前者が全体に毛が多く、萼の広さが細長く先が尖るのが特徴だろう。また、後者は全体に毛は少なく、萼は幅広くその先は丸みをおびて尖らない。なお、葯の色合いは共に暗紅色だが、花粉の色が違い、前者は白から灰色で、後者は黄色であることが最も判断しやすい同定ポイントとなるようだ。


◎キンシベボタンネコノメソウ

 滝の下の湿っぽいところで咲いていた。この種はキンシベボタンネコノメソウだろう。酷似するものにヒメヒダボタンという種もあるのだが、その区分点は雄しべの長さであろう。ヒメヒダボタンが萼と同じくらいか、またはやや低い。それに比べ、キンシベボタンネコノメソウは萼より短く3分2くらいしかないとのネット上表記が多い。いずれにせよ、両者の雄しべの長短の比較は素人目には容易でないことも承知しておこう。従って今回の同定も確たる保証はない。

     
ヒメヒダボタンでなく、キンシベボタンネコノメソウではなかろうか 

 このようにヒダボタンの仲間なども同定が大変容易ではないのだが、最後は萼片や葯の色、または雄しべの長さなどで判断したい。また、ボタンネコノメソウの仲間との区分点は、ヒダボタン系が萼片と雄しべの長さがほぼ同長であるのに対し、ボタンネコノメ系は、雄しべの長さが萼片のほぼ3分2ほどと短いのが違いであろう。


◎ボタンネコノメソウ

 こちらもアカヒダボタンと新種発表により日浅く、さらに同定が難しくなってきた種であろう。区分点はボタンネコノメソウの萼裂片は直立し、暗赤褐色~淡褐色で萼より3分2くらいと短いが、アカヒダボタンは萼の色合いが赤褐色でやや赤っぽく見え萼も直立し、雄しべは萼片とほぼ同長と、母種のボタンネコノメソウより長いのが相違点であろう。もちろん、これもしべの長短は容易ではないが・・。

     
ボタンネコノメソウであろう 

 

◎ニッコウネコノメ

 こちらは、この山域では一番遅く咲く仲間であろう。主たる同定ポイントは萼片が平開し淡黄緑色で、葯は萼より飛び出し、葯の色は赤褐色となる。この種は咲く時期からみて比較的同定しやすい部類だろう。

     
     

 他にネコノメソウ類はネコノメソウ、ヤマネコノメソウ、タチネコノメソウなども見たが、イワボタンは今回の山域には個体数少なく見逃したようだが、前回の様子からおそらく花は終えているはずである。なお、わたしが今年比叡山で徘徊した比叡山の山域においては結局8種を観察したことになろう。


 さて、ネコノメソウ類はこれくらいしにして、他の種に移ろう。まずは草本類から

         
シロバナショウジョウバカマ(ユリ科)    フモトスミレ(スミレ科)   ミヤコアオイ(ウマノスズクサ科) 
         
ノミノフスマ(ナデシコ科)全体に無毛、葉は無柄で、花弁は約7mmで萼より長く、近年少ない       サワハコベ(ナデシコ科)茎無毛

 山野草の中では、今回トウゴクサバノオが大群落であったのだが、この花は曇りの時は花開かないのだ。本日はあいにく一日中青空とはならず、せっかくのトウゴクサバノオ満開の様子が写真に撮れなかったのが残念至極となってしまった。このトウゴクサバノオはいろいろな所で出会ってはいるのだが、これだけの大群生に出会ったことはないことから、本日の曇り空が何としても不満足であった。いつかこのお花畑に巡る機会があるのだろうか。来年こそトウゴクサバノオの大満開の景色に出会おう!!

 他にはとりたてて珍しい種はなかったが、こちらではエイザンカタバミと呼ばれている花も満開時期だったのだが、これまた曇り空では開かないでうつむいてすぼんだものばかりを目にしていた。だが、ようやくミヤマキケマンがいよいよ満開となっており、ミヤマハコベも満開だった。シハイスミレにタチツボスミレが林道設置のために伐採され、日当たりのよくなった稜線に踏みつけんばかりに乱舞であったが、デジなど手にせず素通りであった。

 また、前回大群落で超満開であったあのバイカオウレンはさすがに今回は終焉であったが、この種の大群落地に大きな感謝としたい。それにヤマルリソウ、マルバコンロンソウが終盤となっていた。カタクリの一枚葉があちこちで見られ、ここはこの種は咲かないのだろうかと思いながら歩いていると、咲き終わった花びらが枯れしおれていたのが飛び込んできた。来年は比叡山の場所を変えてカタクリのもう少し多い地を探りたい。

 木本類だが、タムシバ、オオバヤシャブシはもう終焉だった。ヤマザクラ、カスミザクラ、クロモジ、ミツマタ、キブシ、ニワトコ、アブラチャンにダンコウバイが満開で、ナガバモミジイチゴ、コバノミツバツツジ、シキミはちらほらと咲き初めとなってきている。

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