中井新道から登る釈迦岳 ’16.7.20

 JR近江舞子-登山口-P761-ヤケオ山-釈迦岳-大津ワンゲル道-イン谷口-JR比良

 比良のガイドブックによれば、昭和34年ころに南小松からヤケオ山に至る中井新道と呼ばれる道が拓かれたようであるが、近年このルートを歩く登山者は激減しているようで、下部が倒木多しの荒れた道となっている。そうはいっても、このような道だからこそと、マイナー好きな人が赤布をけっこうつけているようだ。しかし、なぜかS社の山と高原地図には中井新道のコース表示はなされていない。

 もっともJR近江舞子からの歩きには、住宅街そして別荘地などで分岐多く、登山者向けの道案内も皆無で、なおかつ、住人の姿も少なく、たまに出会っても山歩き道を分かる住人もなさそうで、道を聞こうにもどうしようもないようだ。そのようなことから、当方は過去から中井新道はヤケオ山からの下りでしか使ったことはなかった。梅雨明けしたこんどは登りで初めてとってみた。

 今回、駅から別荘地まではすんなり入ったが、奥の荒れて放置の別荘跡を過ぎて梅ノ木谷大堰堤の工事用に使ったと思われる幅広い荒れ放題の道を直進して登山口あたりへ到着であったのだが、ダムの見える場所まで進んでしまい、アレー、見覚えのないゴウゴウと水の流れる堰堤の景色に、戸惑う始末であった。
 いったん引き返してみると東北側に赤布が下がっているのを見つけ、これよりいよいよぬかるんだ荒れ道突入であった。しかし、考えてみれば、この登山口の入口にある赤布が、もし無くなると舞子駅からやってきた登山者はもうお手上げだろう。その点ヤケオ山から下山してきた者には林道に出るのだから、表示など無くても支障はない。次回はここ登山口の赤布をもっと、下山でなく、登るどなたにでも分かるように、しっかりつけるために赤布をさらに準備して入りたい。

 さて、登山口さえ入れば、その後は適度の赤布があったり、さらには古道の道型が現われて、もう誰でもモードとなってくれるのだ。そうはいっても倒木散乱や、道の分岐もあってテープを確認しながら登らないと踏み跡だけ見て進んでしまうと、とんでもない方向へいきそびれるなど注意は必要であろう。
 しかし、当方は分岐のそのあたりは頭に入っていた。そうなれば、こちらは花探しの山道歩きである。道沿いにはこの頃はオオバノトンボソウの小さな葉が何か所かに見られた。どうやら鹿が多いようで成長した葉は鹿の餌になっているようだ。なぜなら、大きく成長すれば鹿に目に入りやすくなり、葉を食べてしまうようで、花をつけ咲き終わったと思われるほど大きくなったものは見られなかったのだ。

 どうにか古道が終わりとなれば、すぐにP761の稜線である。これよりヤケオ山への稜線は踏み跡は薄く、みんな適当に歩いているようで、同じ所を歩かないために道はないに等しいが、尾根芯をとれば大丈夫と知っていること、またヤケオ山山頂は木陰が狭いので暑いことも知っているために、手前で早めの稜線の木陰を見つけてリトル比良の山並みを眺めながらゆったり昼食とした。

 そして、ヤケオ山へ着けば案の定、じりじりと照り付ける暑さで休むことも面倒であったが立ち休憩としよう。そこへすぐに声がして、二人連れがヤケ山方面からフウフウ言いながら登って来られ、着くなり倒れるように腰を下ろす姿を見て、こちらは逃げるように釈迦へと前進である。

 私はいつもお客様へは、「山の頂へはヨレヨレで登頂ではなく、体力に余裕を持って登れることが重要です。なぜなら、山頂へ登れば当然下山の一仕事が待っているのです。だから、自らの体力に合った山へ向かうことが大事であることを承知して頂きたい。」といっている。

 そして、フジハゲあたりからの琵琶湖側や北側に続く釣瓶岳に武奈ケ岳そしてコヤマノ岳などの山並みを眺めながらの稜線漫歩をほしいいままに、足元にはタツナミソウの花枯れや咲きだしてきたオトギリソウなどを楽しもう。そしてやや登りにかかるとやがてブナの古木が目にはいれば、もうそこが釈迦岳となるのだった。そして北側の展望地から蛇谷ケ峰などの眺望も楽しめた。


ヤケオ山すぎの稜線から釈迦岳の左奥には蓬莱も

 いつ来ても静かな釈迦の頂はこれはこれで素晴らしい。わずか1063mという高みだが、比良山系ではなかなか立派な一語であろう。昔からの仕事道だったのだろうか、この釈迦へはいろいろな登山道がつながっているのだが、シロヤシオの満開時期以外には武奈ケ岳のような人ごみのないのが嬉しい。

 さて、下山は予定どうりの大津ワンゲル道としよう。この道は古くからあった道を大津市公民館ワンダーフォーゲル部によって手を入れられたところからの名のようだ。道中の道標の中にも(難路注意)とわざわざ表示されているが、山慣れない初心者にはやや苦しい登山路が続いていることは知っておきたい。

 でも、こちらは結構花の咲く道である楽しめるルートであり、今回もノギランが咲き、オオバノトンボソウの残り花もあったが、茎から上の花の部分あたりが食いちぎられた鹿の食痕の痛々しい姿まで見られる始末であった。そして間もなく開花を迎えるであろうクルマバハグマも見られたのだ。
 中でも本来果実色は暗赤色のアカモノなのだが、ここにはピンク色の果実が本来色のものとそばに並んでの初めての出会いであったのだ。だが、残念ながら下が切れ落ちた斜面に広がっていたために、じっくりと写真撮影を楽しめる場所でなく、冷や汗ものの場所だったのが残念であった。

 山頂から小一時間で標高約680m付近の雄松山荘道岐れがほぼ中間点である。ここまでは痩せた尾根やロープがフィックスされる岩混じり場もあったりの急傾斜ありで、道は険しさが続いていたのだ。でも、これ以降は穏やかな道となるので、ホッとしてここで一本とする。
 しばらくで腰を上げてまもなく道沿いの左横にはノミ跡がある割石が積まれた石崖が奇妙に見えるが、これはどうやら昔の石切場の石を下ろす道として使われていた名残りであろうか。さらに下れば道は細く谷水交じりとなってくる。沢音が聞こえだしたなと思えると、もうそこには白煙を上げるがごとく豪快な渓谷の流れのような雰囲気が出迎えてくれて小橋を渡れば、イン谷口の駐車場で本日の歩きもフィンとなった。後はヤケオ山から釈迦岳を振り返りながらJR比良までのんびり歩きとした。


果実がピンク色のアカモノは初見

       
 ヒメヤブラン  オトギリソウ  クルマバハグマ  オオバノトンボソウ

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