ジャコウソウ咲き初め比叡山’16.9.1

 そうだ、ミヤマウズラが比叡山にも、まだ咲き残っていないだろうかと思いたって出かけてみた。その花は期待どうり待っていてくれた。でも、しかし、山に入れば思わぬ花が咲きだしていたのだ。それはジャコウソウである。これまでから、いつも9月後半の開花と思っていた花であったのだから、この暑い晩夏に出会える喜びがことのほか大きかった。

 
 ジャコウソウ(シソ科)

 もちろん、ミヤマウズラ(ラン科)が多数見られたのも嬉しい悲鳴であったのだが、惜しむらくは見ごろが概ね終えそうな様相だったのは今年の暑さから致し方なさそうだ。。

         

 アジサイの仲間でクサアジサイ(アジサイ科クサアジサイ属)が最後を飾っているように咲き誇っていた。この花は他のアジサイの仲間たちの木本類と違って草本であり、面白い点は他にもある。それはアジサイ科はみな対生なのだが、クサアジサイは互生に葉が出ているし、もちろん、図鑑でも互生と表記され対生の説明は見かけない。そこで他の仲間はアジサイ科アジサイ属となっても、クサアジサイはそうではなくアジサイ科クサアジサイ属となったのだろう。
 でも、でも、葉の様子を注意深く見て歩けば、時に対生のクサアジサイも見かけることがあるのだ。ところが、今回もその対生の個体を見ていたのだが、その葉を撮り忘れてしまった。どちらへ心根がいっていたのか、なんて片手落ちな植物観察力だろうか。(笑)

 
 クサアジサイ(アジサイ科)

 初秋ともなり山辺のあたりには、ススキの景色がよく似合う。京の花街の舞子さんたちは8月の(かんざし)にはススキとの習わしがあるそうだ。あっ、そうか今日は9月1日だ、9月の簪にはキキョウへと変わるらしい。思えばこの頃ではキキョウは8月には咲き終えているようで、もうあたりにはあの紫色の涼しげなキキョウは一輪たりとも見かけない。でも、花街では古来よりの習わしは少々の気候の違いや花の開花の状況変化で、おいそれとは変更はできないのだろう。それが歴史というものだと一人想いに耽っていた。

 そう、9月なのだ、秋といえば自然界にはキク科がかかせない。今日は見事にオタカラコウ(キク科メタカラコウ属)が咲きだしていた。その仲間のうちにマルバダケブキという種があるのだが、それらの種は有毒種なために山中でも鹿も食べないようで、大繁茂だがこちら、オタカラコウや本家のメタカラコウ等はややもすれば鹿の標的となっている種でもあって、山域によっては絶滅の危機に瀕しているところもある種である。幸い、こちらではまだそれなりに分布減少とはなっていないようだ。

 
オタカラコウ(キク科) 

 さらには、山歩きの人たちにはよく知られるサラシナショウマこそまだ蕾であったのだが、近くにはこちらはやや認知度低いと思われるイヌショウマ(キンポウゲ科サラシナショウマ属)が咲きだしていた。イヌショウマは丸い白花で、花弁状の萼片と小型の花弁はともに早落性で、とりわけ雄しべが目立つ線香花火のような花を見せて、一緒に淡紅色がかった丸い蕾もアクセントとなった花が風に揺れていた。

     
イヌショウマ(キンポウゲ科)    葉は2回3出複葉 

 そうそう、今回はマルミノヤマゴボウの秋姿を見られるだろうと期待していたのだが、残念ながら草刈りの対象となったらしく、きれいさっぱりの道となってしまっていたのが悔やまれた。できれば雑草とは異にする草刈り人を雇ってほしいものだが、それは贅沢な要望ではないだろうか。

 山人の怠惰で無様な生活者のわが身には、せいぜい、刈られていない裾のヤブマオ、コアカソにイタドリたちの小さな花たちをルーペで覘きこんだり、真夏の樹木花のタラノキの花たちが謳歌しているのを楽しみながら歩くのだった。そして樹木の果実であるアブラチャン、ミツバウツギなどの実の様子も楽しみながらの散策で今日の山中の日としたのである。

7月27日   ホームヘ   9月30日






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