比良 コヤマノ岳 ’16.9.23

 JR比良-神璽谷-八雲ケ原-コヤマノ岳-奥ノ深谷源流-金糞峠-イン谷口-JR比良

 ようやくお天気になるとの予報を信じて武奈ケ岳にでも登ってこようと出かけた。しかし、予報はハズレで、曇りっぱなしの真っ白の様相、やむなくコヤマノ岳止まりとして、八雲ケ原へ引き返し奥の深谷源流コースをとって金糞峠、青ガレコースとしたのだが、お目当てのフクオウソウは完全終了で葉のみとなっていた。なお、この名は三重県菰野の福王山で発見されたことからの名といわれる。

 フクオウソウ(キク科フクオウソウ属)、花は見られなかったのだが、せめて葉だけでも見ておこう。この花はかって伊豆半島の天城山縦走時に出会っているが、比良のこの時期に歩いていなかったために、花を見損なってしまったのだ。比良でのフクオウソウの花は来年に期そう。

     
フクオウソウ、葉の表 葉柄長く翼ありや無いものあり。3~7裂する。  
     
 同じく、葉の裏 全体に腺毛が多い、右は紫色の滲みあり 

 (花はこちらからご覧ください。)

 他に咲いていた花はカニコウモリ、ウメバチソウ、ダイモンジソウが咲いていたのだが、とりわけダイモンジソウは岩影で暗く、またしてもピンボケが悔やまれた。ヒツジグサも多数咲き、シコクママコナも咲き残っており、残り花のヤマトウバナがまだ咲いていた。それにアカモノ(別名イワハゼ)までが咲き残っており、もちろんアカモノの赤い実も見られた。

         
 カニコウモリ(キク科コウモリソウ属)   ウメバチソウ(ニシキギ科ウメバチソウ属)    ダイモンジソウ(ユキノシタ科ユキノシタ属) 
         
 シコクママコナ(ハマウツボ科ママコナ属)    アカモノ(ツツジ科シラタマノキ属)   同左の果実 

 もちろん、このコースを歩けば三つの滝巡りは必須だろう。(笑)

         
神璽ノ滝 落差18m    金糞滝 落差8m    かくれ滝 落差18m

 

 それにしても、本日はおもしろい山歩きとなった。いや、おもしろい・・とは叱られるかナ。

 さて、今日は神璽谷を登ったのだが、人の姿は誰一人として見ることは最後までなかった。最後の方で今頃、アルプスでもないのにこんな低山でアカモノの花が咲き残っていたことから、思わず写真であった。そして撮り終えて最後の急坂を見上げると二人がこちらを覗いて見下ろしていた。
 着くといきなり「蜂はいませんでしたか?・・」と聞くので、「蚊はいたけど蜂には会わなかったヨ」と答えると、間髪を入れずに「蜂に刺されたんです、それも二人が4か所と2か所を・・」と泣きそうな顔でいうのであった。「蜂スプレーは持ってるけど、毒を吸い取るためのポイズンリムーバーや蜂刺されの薬もザックに入れてないぁ・・ごめんナァ」そんなやりとりをしていると、「刺された蜂のいるダケ道は降りたくないので、ここを降りようと思うのですが道は大丈夫でしょうか。」と不安そうな顔で聞くのである。蜂刺されのことより今はどうやら下山の道が心配らしい。

 「う~ん、このコースは初めてか・・」、聞けば山の経験はほとんど初心者らしい。もちろん谷の名前すら知っていそうにない。話しながら見ると確かに山歩きはそうやってなさそうで、共にひ弱な20代前半の今時珍しい清純な青年のように見えたのだ、ただ、最近よくある山のスタイルだけは恰好良く決めていた。いわゆる服装から入る今流の山ボーイであろう。

 こちらも意を決して、「本来であれば、それだけあちこちを蜂に刺されたのだから、その時点でいち早く下山し、医者に見せるのが一番だヨ、でも、今からこの神璽谷コースを下山するのはちょっと無茶というものだろう。ダケ道がイやというのであれば、少し遠くなるがこの上の前山に登り返して、シャクナゲ尾根から金糞峠周りで下山したらどうだろうか。」というと、うまく「シャクナゲ尾根は正面谷から歩いたことがあります。」というので、「ではそのコースで降りて早く医者に行くといいよ」と分かれることにした。

 しかし、蜂にやられとは気の毒であったが、聞けば二人とも持っているストックを振り回して蜂を追い回したり、大きな声を出したりしたそうだ。あまりにも山歩きの中での蜂遭遇時の対処方法も知らない様子である。しかし、ひ弱な若き青年なら致し方なかろう。
 それにしても、特に秋のこのシーズンなのだから、こちらもザックにファーストエイドキットを抜かずに持っておくべきだったと、反省だな申し訳なかったなと思いながら八雲ケ原へ向かうのであった。八雲でも団体ではなく、複数のグループの登山者15名ほどの姿があった。聞けばこのような真っ白な状態で武奈へ登っても・・とのことである。

 当方もそれもそうだな、でも、ここまで来たのだからせめてコヤマノ岳にでも登らないとネ・・と思い直して山頂あたりまでピストンとした。そしてまた八雲ケ原まで戻って、蜂がいてはとダケ道を逃避し、奥の深谷源流からのんびり霧のむせぶような中をそぞろ歩きとして金糞峠へ着き、行動食タイムとするのであった。
 先着の夫婦らしき方達がすぐに青ガレに降りて行かれた。こちらはシャクナゲ尾根道を覗くと何人かが歩いた形跡があったのを確認して胸をなぜおろし、この下のガレ道も無事に下山してくれているといいのだがと思いながら腹の虫抑えとしていたのだ。

 腰を上げると、道は結構歩きずらいのだが、あの青年のことばかり気になって仕方なかった。やがて先に降りられたお二人に追いつき、仲睦まじそうに歩かれる姿が羨ましく見え、つい、「フクオウソウの花を見ましたか?」と声をかけてしまった。するとそれを機会に奥さんからに「○○さんですか」と声をかけられ、「あれーどっかでお会いしましたかネー?」という始末であったのだ。
 すると奥様より「岐阜県のイワザクラ咲く山などへ案内してもらいました。」といわれるではないか。3~4年前だったのだろうか。その山は舟伏山だったが、こちらは何度も登っているために、いつころだったのか定かではない。いずれにしてもお客様にお会いでき、当方の名前をちゃんと覚えていただいてたのが大感動であったのである。お二人さん、感動をありがとうございました。蜂刺されの二人の青年のことばかり考えた歩きでしたから、ご夫婦のお客様にお会いできてマイナス・プラスでゼロとなって、いや、ゼロではなくプラスの歩きでした。

 正面谷を無事下山し、トイレ地でお客様と別れてすぐに、今度は年配の方が一人で上がって来られた。ゴ3時前だったが「エ~、これから登るんですか?・・」と声をかけると「いえ、イン谷口はどこでしょうか?・・」と聞かれるのだ。「イン谷口は反対のすぐこの先ですよ、どうしたんですか」とのトンチンカンな会話であった。

 どうやら、朝、JR比良駅からバスでやってきて、比良の遭対協小屋へ登山届を提出して正面谷から堂満岳へ登り、山頂から多くの人が東稜道を降りるのを見て、じゃその道を降りようと、ノタノホリまで降りたのだが、その先で道を間違え、そこへ降りて来た。と指さすのである。そんな話をしているとパトカーがトイレ方面に登って行った。

 それなら、「ノタノホリからすぐで右へが正規の道で、荒れた別荘地へ下山するのが正解なんですが・・、ノタノホリあたりで左へ向かわれたのでしょうか。それは道迷いだったですね。滑落もせずに怪我はなかったでしょうか、道なき道を歩いたのでしょうか。でも、さっきのパトカーに世話にならなくてよかったですね。」と話せば「少しは変な斜面を降りたが、なんとか林道らしき道に出てここまでこれました。ここがどこだかさっぱり分からなくなってしまいました。」とのことで「バス停はすぐ先を左ですよ。」と話し、「これからは山に詳しい方と一緒に歩くことですね。単独行は止めたほうがいいですよ。」といって、下山届を出してくるというその方と別れ、こちらはバス停とは反対の出合橋を渡って、比良駅へと帰るのだった。

 それにしても、山慣れたようには見えなかったが、単独で初めての堂満岳に登るなんて、あっぱれなものである。いや、無謀であろう、家族の方もさらに話合うべきではなかろうか。いや、それにしても山歩きを舐めているとはこのことであろう。年は相当いっているのだが、山の経験は子供なみではなかろうか。単独行が問題であることを強く申し上げたい。もっともあまり偉そうなことを言える立場にはないのだが・・・。「気を付けよう。人に言うより我がふり直せ!」(大爆笑)

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