京北 京都トレイル第4回を歩く ’16.10.2

 弓削の八幡宮社-上中城跡-矢谷上橋-合併記念の森-熊田橋-宝泉寺-卯滝峠-ウッディー京北

 今回のトレッキングは京都一周トレイルである京北コースのうち、道標43番から68番さらには卯滝峠越えからゴールのウッディー京北S13番がゴールでした。台風接近と秋雨前線の影響下のころでしたが、幸運にも予報が良い方へはずれ一日中晴れの素晴らしいお天気となってくれました。

 まずは弓削の上中町といえば、そのあたりの地域では格式の高いといわれる八幡宮社の鳥居からスタートとしましょう。↓の画像にもあるように「明治の近代社格制度」において、京都府では府社33、郷社67、村社1004、無各社1580の合計2684社があったといわれていますが、八幡宮社は郷社67の一つであったようです。なお、この明治の近代社格制度は第二次世界大戦後に廃止されたようで、神社入口に立つ石標にあるその社格名はいろいろな方法で消されているようですが、こちらの神社の石標はそのまま読み取れました。

 最初の見どころでもある八幡宮社は国道162号線沿いの大鳥居を見上げてみます。この鳥居形式は日本に一番多く用いられているといわれる明神鳥居様式のようですが、笠木に屋根をつけ、それらの両端が反るいわゆる反り増しがある、なかなか凝った明神鳥居形式の大鳥居です。

     
郷社の格調高き八幡宮社    笠木、屋根へ反り増しの堂々たる明神鳥居 

 そして、京北第三小学校の校庭へ上がれば、今日は運動会が賑やかに行われていました。その校庭も昔から八幡宮社の参道であったようで、杉の神木が空に突き上げているのでした。記録によれば樹齢450年の大杉は樹高32.5m、胸高周囲が6.3mとビックでした。もちろん、京都市の天然記念物に指定されているとのことです。

 
 運動場内に立つ大杉の神木

 そのまま参道を進めば八幡宮社の杜です。この神社の境内は落ち着いた雰囲気でいつ来ても静まり返っています。社伝では三神は孝謙天皇(在位:749-758年)の御代に勅令をもって九州福岡にある宇佐八幡宮を勧請せられ、貞観元年(859年)に現在地に奉祀されたとあります。ご祭神は応神天皇、神功皇后(じんぐうこうごう)湍津姫命(たきつひめのみこと)とあります。
 三間社流造と檜皮葺の本殿は本格的で伝統的な神社本殿建築として価値が高く、境内にある石灯籠の刻銘から、寛永十八年(1641)ころに建てられたと考えられ、平成十八年十月に本殿の屋根の檜皮葺が八十年ぶりに葺き替えられたと駒札にありました。この神社には懸仏や鰐口などの美術工芸品が京都市指定登録文化財となっているようです。秋が深まればこの境内の桜を主体にした樹木たちの紅葉に染まる風景は見事なことでしょう。

 さらに農道を進めば、すぐに上中城跡でした。こちらは平地に造られた楕円形の城で、12~3世紀を中心に使用されたと伝えられており、平安末期の城としては良好な状態で残っている貴重な文化財といわれています。この城跡以降も矢谷上橋から右折し、いよいよ合併記念の森に向かいましょう。

 この後は長閑に続く上中から下中一帯の田園地帯に走る舗装された農道を野の花観察を楽しみながらトレッキングとしましょう。なんと各種いっぱいの花々が咲き乱れてくれていました。黄色花で細長い実をぶら下げて咲くヤブツルアズキがどこまでも咲いていました。なお、この種を改良して現在のアズキができたといわれます。またこの花姿とほとんど同じノアズキという種がありますが、その違いはこちらの果実が幅広く、長さも4cmほどと短いことで違いを見つけられます。

 
細長い実を下げるヤブツルアズキ 

 深紅のゲンノショウコ、黄色いカタバミ、鮮やかな紫色でひょうきんな花を咲かせるアレチヌスビトハギも多数咲いています。さらに紫花のヤブマメ、薄黄色が透けるような花をつけて、何と清楚な雰囲気のお花をを咲かせているアキノノゲシにうっとりしましょう。そしてまさに雑草のごとくピンクをポイントにわたしも見てと主張するように咲き乱れるキツネノマゴや、地味にわずかに黄色花をつけたスカシタゴボウや、まったく地味なタカサブロウ、タウコギに、帰化種の紫色のヤナギハナガサなどがたくさん見られました。
 さらに、夏の暑い頃から咲きだし秋がくれば終わってしまう花期の短いアカバナは対生ですが、これによく似たアカバナユウゲショウという種もあるのですが、こちらは春から長く咲き、前者と同じ9月ころまで咲く種で、大きな相違点は後者が互生の葉をつけることでしょう。

 さて、由良川左岸沿いを進んで、矢谷上橋を右折すればいよいよ山道に入れる合併記念の森です。さて、昔の京北町は2005年4月に京都市右京区へ合併いたしました。それを記念し京都一周トレイルコースは合併記念の森の周囲に道を開通させたのです。その開通が2012年3月17日がオープン記念式典があったそうです。4年ほど前となりましたが、その合併記念の森は高み(428.4m)は避けて道が開発されたようで、踏むことにはなりませんが、巻き道を緩やかに登ってすぐに林道歩きでした。それでも矢谷越や笹原峠という小さな峠道を歩きましょう。途中にはアケボノソウの残花やコバノガマズミが真っ赤な実をつけて下がっていました。この種の真っ赤に熟した果実に出会ったのも久しぶりで、早速一口小話でした。

 コバノガマズミは4月ガマズミ属の中で一番に咲く白色の小さな花ですが、秋の果実時にはオトコヨウゾメと見間違い易い種でもあります。花時には葉柄基部に線形で針状の托葉があればコバノガマズミと同定OKですが、秋の果実時のポイントは葉の表面が無毛か、あるいは両面とも有毛かで見分けがつきます。
 でも葉柄の長短ではどちらも短く似通っていて容易ではないようです。葉柄の長さが2~6mmで葉柄部分も有毛であればほとんどコバノガマズミで、葉柄の長さが3~8mmで無毛であればオトコヨウゾメでしょうか。それに赤い実だけでは見比べは容易ではなさそうです。今回は葉柄がほとんどないくらい短かったし、毛もあったようでしたからコバノガマズミとの同定でした。また、コバノガマズミの葉とほとんど同じ種でオトコヨウゾメの件ですが、他のガマズミ属にない大きな特徴のひとつに、オトコヨウゾメの葉を押し葉などして乾燥すれば、黒くなることを知っておれば、後日間違いないことが確実に分かって嬉しくなること請け合いです。

 なお、このコバノガマズミなどはこれまではスイカズラ科の仲間でしたが、新しいAPG分類体系では、スイカズラ科の内で、ガマズミ属やニワトコ属はレンプクソウ科へ編入されています。

     
アケボノソウ(リンドウ科センブリ属)     コバノガマズミ(レンプクソウ科ガマズミ属)

 合併記念の森を越え、熊田橋からまたまた農道でしたが、こちらの畑道にもツリガネニンジン、ゲンノショウコ、イヌタデ、ミゾソバ、ツユクサなどでお花畑状態となっていました。畑の鹿除け柵を通過させていただき、こんどは川沿いの農道までくればゴール標識67番は近くなりました。そして66番標識で宝泉寺を誘導標示を左折してお寺さんに向かいましょう。

 着いたお寺さんは弘法大師が修行した高雄の神護寺と関係の深い真言宗御室派のお寺でした。本尊は十一面観世音菩薩のようです。奥様がお接待していただき、いろいろお話も聞けました。以前には大変な評判であった花菖蒲祭も、鹿などの食害によって今では絶滅してしまい、出来なくなったのが残念ですとのことでした。でも、春の花時には「また会いたくなる京の桜」といわれるほど見事な「宝泉寺のしだれ桜」は京北100選にも指定されるほど有名で、多くの人出で賑わうそうです。機会があれば近くの魚ケ淵の桜とともに二つの桜を繋げた山歩きもやりたいなと思いながら、宝泉寺を後に最後の卯滝峠を越してゴールのウッディー京北まで歩いたのでした。お疲れさまでした。

     
 下熊田の宝泉寺    きのこのシロヤリタケ、食不適

 本日の軌跡です。画像クリックで拡大

筒江、合併記念の森、下熊田を経て卯滝峠よりウッディー京北へ

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