比良 烏谷山から堂満岳 ’16.10.4

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 台風18号接近の前日はお天気の報によって、比良へ登ってみようと出かけます。もっとも雲厚く山から眼下の眺望は見込み薄だろうと承知のうえでした。そうなれば、比良の表側からの歩きではJRの駅よりほとんどのコースの登山口までは長閑な田園地帯の自然観察を楽しむ歩きができます。

 さぁ、この時期ですから、山より山麓の自然を心ゆったり楽しみながらの山歩き前哨戦としましょう。このようにわたしの山登りでは、山中の楽しみだけでなく、登山口までの野の花観察をじっくりとやりながら進んで、そして山歩きに突入とする方法であります。こちら湖西方面はまだまだ自然がしっかり残っている田園風景のように思います。そうです、いろいろな草花が咲き誇っているのでした。

 駅よりすぐで田舎道に入りますと、おっ、あのピンクの花はアカバナかなと少し沢沿いへ降りて側によれば、残念、アカバナでなくその近縁種のアカバナユウゲショウでした。この花の柱頭は4裂で平開し、それも大きいのですぐに分かります。そして葉は互生です。ところがアカバナの柱頭は太いこん棒状で、これだけで違いが分かります。もちろん葉も対生と異なります。とりわけアカバナユウゲショウは春から秋まで長い間咲いてくれます。南米原産の帰化種とはいえ、なかなか可愛らしい花で、野の花の女王といいたいくらいです。

 
アカバナユウゲショウ(アカバナ科) 

 小さな水の流れがありました。そちらには赤紫色のツリフネソウが賑やかに満開です。見飽きた種はパスしましょう。そして、雑草の中にはイネ科のジュズダマが群落で突っ立っています。この種こそ本当の自然が残っていないと出会えない種の代表でしょう。目にしたのも久しぶりでした。

 
ジュズダマ(イネ科) 

 そばにはタデ科のミゾソバ類がいろいろ咲いています。近くでは家庭菜園の人たちがせっせと野菜の手入れをなさっています。私の花観察を見て、「畑にも雑草が生えて苦労しているよ」、と声がかかります。「可愛らしい雑草は抜かないで育ててやってくださいね」と返せば、「こちら側とは思いが違う人にはかなわないナァ・・」と笑顔が続きます。

 さらに田のそばに進めば、これまた多数の種がいろいろと咲いていました。その中でも珍しいのはアギナシでした。その名の謂れはアギはあごの古名で、若いころのアギナシの葉の基部が裂けないところからきているようです。よく似たその母種でもあるオモダカとはあまりにも酷似し、容易に同定ができない種でもあります。
 その同定ですが、葉の頂裂片より基部の裂片がやや短く、この後の(くだり)はルーペの世界となる話ですが、先端は針のようにとがらず、まるみを帯びているのが究極の同定ポイントでしょう。この意味は分かりやすくいえば、ボールペンの先のような状態のことの表現です。もっとも↓の画像ではその部分が写っていないのはオアイソで、ということにしてお許しを・・(笑)。もちろん、こちらもわたしは久しぶりの出会いでした。

 
 アギナシ(オモダカ科)

 その近くの田の畔にはイボクサも多数あちこちに咲いているのでした。この名の謂れは葉の汁をつけると(いぼ)が取れることにより名付けられたといわれています。真相のほどは如何でしょうか。こちらもなかなか可愛らしい白地に花びらの先から淡紅色が濃い紅から薄くなって白色になります。でも、この花は一日草ともいわれ、その日の夕方にはしぼんでしまいます。美しさは何んでもその命が短いですね~。

 
 イボクサ(ツユクサ科)

 さて、稜線上の縦走路にある荒川峠の道標の名の謂れとなった荒川の集落地を過ぎ、湖西道路をくぐって舗装路の林道を次第に登って行きましょう。大谷川に架かる橋はP269地点、どんどん道も急になって10月というのに暑さが下がらず、もう汗びっしょりです。Ca350の中谷出合下登山口でしたが、駅から1時間ほどかかりました。ここで水分補給、アミノバイタルで元気をつけてからいよいよ山道に入ります。

 歩きなれた道ですし、この時期何の見どころもなく、大岩の水場で喉を湿らせて杉林の植林帯をマイペースで進みます。やがて登山口から1時間ほど登ればようやくにして自然林地帯に押し上げ、大木のブナが現われ、9人いや、10人兄弟のミズナラが立っているのを見れば、すぐで荒川峠南の道標地到着でした。多雪の歩き時は大いに楽しめるコースであり、道標地のここまで上がってくれば、すぐ南上方向にある蓬莱山のスキー場の賑やかな音楽が風に乗って聞こえる地でもあります。もうすぐその季節がやってくるのだなぁ~と思いをはせながら一本たてましょう。

 そして、これより荒川峠には向かわず、古道を北西よりにとってまずは烏谷山へ向かいます。そして古道から稜線上にレスキューポイント縦走14地でした。これよりの眺めですが、やっぱり想定内の景色は承知の助でした。さっぱりです。そして縦走路からRP16の立つ大木のシロヤシオの古木の上が本日の高みである烏谷山(1076.7m3等三角点)でした。荒川峠南道標地から半時間でした。

 南や東の蓬莱山や琵琶湖すらほとんどガスって見える状態ではありません。北側にようやく次に登る堂満がどうにか見えます。山頂には以前この時期でしたら、クロソヨゴが真っ赤な実をたくさん下げていたのを思い出していましたが、今は誰かがその木を刈ってしまったようで、カマツカが寂しく1本だけのっそりと立ってどうにか実をつけています。よく見れば近くにクロソヨゴの幼木が多数立っていますが、花や実はまだまだ年が経たないと無理なのでしょうか。景色や樹木達を諦めてちょっと早めのお昼としましょう。

 
 烏谷山の様子

 腰を上げて次の堂満へ向かいます。少し降りれば40前後の二人の女性がトレランでやってきました。イン谷から来たようです。ほとんど空身同然のようです。その経験のない我が身ですが、そんな姿で山のアップダウンを走り回ること自体に疑問を感じます。でも、そのスポーツは近年では若者にとって魅力いっぱいのようで、人気の高まりが年々高まっているようです。
 真剣に思います。このスポーツについて世界中がともに考える必要性を感じるのはわたしだけではないでしょう。互いに怪我のないように気をつけてと別れましたが、明日には台風がやってくるこの時期に、万一アクシデントでも発生すればその対処もどうするのでしょうか。

 山はいつアクシデントが発生するか、そしてその後の対処は・・ということを十分意識しないと困ります。スマホがあるからSOSすればいいヨ、というような安易さではひと迷惑ではないでしょうか。今日、山に限らないのですが、事故があれば119で救急車を呼べばいいという風潮も問題なのですが、山のレジャーに関しては下界ではない考えが必要です。それは常にアクシデントが想定されるために、その対処は自分で済ませられる、すなわち自己責任、事故対処が前提であることを学ばなければなりません。
 救急車どころではありません、ヘリを出動させれば相当の税金が使われるのです。それでなくともみんな税の苦しみがいたって大きくなっています。本年より「山の日」が制定されたのですが、国民は休暇が増えてありがたいので山へ行こうではなく、山へ行くにはどうあればいいのかとの判断も大切ではないでしょうか。いずれにしても、山歩きには最低限「雨具・ヘッドランプ・FAキット・ツェルト・行動食」は必需品であることも知っていただき、万一の場合に備えた山歩きでありたいと思います。

 さて、雪の多い比良山系ですが、とりわけ烏谷山から堂満岳への稜線は雪が多いのでしょうか。雪圧で上にまっすぐに伸びられなくて、根曲がり状態となったシロヤシオがいっぱい見かけます。若いシロヤシオの木は近年雪が少なくなっているために、まっすぐに上を向いて育っていますが、なぜかその木が早くも紅葉していました。古いシロヤシオはほとんどがグニャグニャになっています。可愛そうですが、そのような枝の根っこを越えながら稜線を北の荒川峠の道標地からさらに稜線を進み、少し下れば南比良峠です。

     
シロヤシオ(別名ゴヨウツツジ)  気の早いシロヤシオの紅葉   雪圧で曲がりくねったシロヤシオ

 南比良峠から縦走路を少し進めば二つの地蔵さんが祀られています。その先あたりから、いよいよ縦走路を離れ、右への堂満南尾根へ取りつきましょう。1~2月の雪山時期ともなれば、南比良峠一帯に来ても南比良峠の道標はどこだ・・?、状態となってしまいます。
 でも緩やかに盛り上がる雪面を見上げれば、よし、頑張って南尾根を登るのだ!、と気合の入る所でもあります。無雪期ではこの尾根の小灌木を縫うように上がって行き、半分くらいで後ろを振り向けばどうにか雲が薄くなって先ほど居た烏谷山が見えました。左奥には打見山と蓬莱山も見えるようになっていました。雪の季節に感動の気分がもらえる場所なんですが・・。

 
堂満南尾根から振り返ると烏谷山が 

 そして、すぐに今度は大岩が居座っている場所に上がり、さらに二つ目、三つ目の岩を過ぎれば、もう堂満岳への登山路は近いことを知らせてくれます。今日は南比良峠道標地から30分もかからないで堂満岳(1057m)でした。平日の13時前でしたから貸し切りで静かなものです。周りのシャクナゲの木々が思わぬ高さに茂っていることにびっくり、おまけに天候も思わしくなく、琵琶湖方面まで展望はよくなくてわずかな一息で予定通り東稜道を降ります。

 降りだせばもちろん、東向きの急坂は知っていますが、無雪期にこちらへやってきたのも久しぶりでしたから、随所に道の痛みがひどくなっているのもびっくりものでした。途中ではタンナサワフタギ、シロモジにチドリノキの果実に目を止めながら、ノタノホリの池を横目に、荒れ切った別荘地に下山し、腕を覗けば1時間10分ほどで下山となりました。
 簡易舗装路の林道ではヤブマメの花に目が止まって、ヤブマメの花は終盤で、もう果実ができていました。見ればノアズキの果実と似ており、あっ、これなら花が終わってしまっておれば、ヤブマメかノアズキのどちらの実なのか同定ができるだろうか・・?、その時には葉の比較も必要だなぁ、なんて思いながら半時間もかかって比良駅到着でした。今日は雨こそ会わなかったのですが、眺望は承知していたとはいえ、あわよくばと思ってたのですがやっぱりガスに泣いた一日となりました。それにこれといった面白おかしな山歩きとはなりませんでした。。トホホ

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