湿地帯に咲く花 ’16.10.7
四季折々の希少で多彩な植物が楽しめる湿原を訪ねました。そちらには秋を代表する名花のスイランが咲き始めました。長かった夏の少雨で沼地も干からびるほどで、こんなに雨が降らないと今秋のスイランは咲いてくれるのだろうかとの一抹の不安でしたが、ようやく池も満々と水を湛えてくれ、心配の思いは徒労に終わってくれました。湿原の水色と黄色い花が鮮やかなコントラストを成して素敵な風景となっていたのですが、あまりに多い雨の後でしたから、その花に近寄ることもままならず、黄色花をいれた見事な風景が写真に撮れなかったのが残念でした。
まっ、スイランの咲いてくれたのが遠くからでしたが、見られたのだから・・と、次の沼地へ行ってみると、な、なんと、こちらでそのスイランが20個ほども咲いているではありませんか。この水の少な目な小さな沼で初めてのスイランを目の当たりにしたのでした。これぞまさにびっくりポンでした。うまい具合にこちらでは黄色花まで寄っての撮影が叶えられたのであります。この花は比較的長く楽しめるようですから、10月末あたりにはその様子を本年最終の湿生植物群訪問としてみようと早くも計画をインプットするのでした。。
調べれば、スイランは「水蘭」と書くようですが、ランの仲間ではなく、キク科の植物です。中部地方以西 の本州・四国・九州の湿地や沼沢地の湿った場所に生育する0.5~1mの多年草で、花冠は舌状花の集合したもので、頭花は直径3~3.5cmで、ニガナの仲間とよく似た黄色い花を咲かせ、花弁の先端は浅く5裂します。花期は9~10月とあります。水の中に咲き、葉はラン科のシュンランの葉のような線形の細長い葉をつけることからの名がついたのでしょうか。なにはともあれ、スイランは希少種で多数の都道府県でレッドリストの種の指定を受けています。もちろん、京都府では絶滅危惧種、滋賀県では準絶滅危惧種となっている花で大事に見守っていきたい花なのです。
京都府では絶滅危惧種 |
滋賀県では準絶滅危惧種 |
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スイラン(キク科スイラン属) |
続いてサワシロギクも咲いていることでしょう。しかし、スイランの咲くあたりでは見られず、咲く地への移動となります。ところで、沼溜池などの湿地帯に咲くスイランと違い、サワシロギクは比較的きれいな流れがある沢沿いで見られます。調べると主に鉱物質の土壌からなる貧栄養性の湿地に点々と生育する種のようです。また、開花時期にも両者には若干のずれがありそうです。こちらの開花時期は8~10月とあります。どうりで、前回訪問時(8/16)の咲き初めに記憶があります。ということはもうほとんど終わりの状態でしょうか。このサワシロギクも希少種で京都府では準絶滅危惧種、滋賀県ではその他重要種の各指定を受けています。
ネット情報によれば、次のように説明があります。
「本州から九州に分布する多年草。細い地下茎があり、茎は細いがしっかりとしており堅い。葉も堅くて細長く、下部の葉は長い柄があって7~17cm。中部の葉は長さ10cmほどで幅1cm前後。縁にはわずかに鋸歯があり、鋸歯の先端は球状の突端となっている。中央脈は凹んで、縁には微細な堅い毛があり、ざらつく。花期近くなると細い茎を直立し、高さ50~80cmになり、上部の葉腋から普通2~3個の花茎を分枝する。花は長く伸びた花茎上に直径3cmほどの頭花を1つ付ける。頭花の花数は少なく、周辺は舌状花で中心部は筒状花。舌状花は最初は白色であるが次第に赤色を帯びてくる。」
京都府では準絶滅危惧種 |
滋賀県ではその他重要種 |
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舌状花は咲き初めは白い | サワシロギク(キク科シオン属) | 開花後日数が経つと紅色がかる |
次に池の畔に咲く背の高い花でしたが、どうやらほとんど開花時期が過ぎていたようでした。それはコバナノワレモコウでした。このコバナノワレモコウも希少種で京都府では絶滅危惧種、滋賀県ではその他重要種の各指定を受けています。
図鑑やネット上での説明によれば、「湿地に生える多年草で、 高さは60~130センチ。茎は上部で分枝し、無毛。根出葉は奇数羽状複葉で、小葉は線形、縁には三角形の鋸歯がある。花序は枝先に穂状に垂れ下がって付き、長さ2~7センチ。花は白色、ときに淡紅色。花期は8~10月。本州近畿地方以西~九州に分布する。」
京都府では絶滅危惧種 | コバナノワレモコウ(バラ科ワレモコウ属) | 滋賀県ではその他重要種 |
以上三点はわたしにとって気になる花でありました。これからは、それらの年中の生き様を関心をもってみていきたいと思うのでした。さて、この後は惰性で取り上げてみましょう。
オオフタバムグラ(アカネ科) | コマツカサススキ(カヤツリグサ科)果穂 | ツリガネニンジン(キキョウ科)花と実 |
↑のみ、京都府で絶滅危惧種の指定
最後はお決まりの樹木の果実たちを並べてみましょう。
ガマズミ(レンプクソウ科) | ヘビノボラズ(メギ科) | アオハダ(モチノキ科) | ||
イヌツゲ(モチノキ科) | サルマメ(シオデ科) | マルバアオダモ(モクセイ科) | ||
京都府で絶滅寸前種の指定 |
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クロミノニシゴリ(ハイノキ科)実が黒 | ウメモドキ(モチノキ科) | クロミノニシゴリの葉裏、無毛白っぽい |