京都北山 雲心寺西平尾根、芦見谷東尾根からの愛宕山 ’16.10.10


 細野口バス停-細野峠-P588-708-雲心寺西平尾根-807-812-792-林道三叉路-展望地-首無地蔵
 -竜ノ小屋-芦見谷東尾根-811-地蔵辻-愛宕山-水尾岐れ-西尾根-大岩-水尾車道-JR保津峡

 関西の低山歩きでは紅葉にはまだまだのこの時期ですから、ほとんど見どころ期待なしのただ歩くだけの尾根縦走としましょう。最初のルートは久しぶりでしたが、入ってみれば近年比較的歩かれているようで、思わぬ踏み跡がそれなりについていました。

 JRバス細野口下車で、昔からの京北方面の人たちが登ったといわれる愛宕裏参道へ入ります。バスには登山者は他に9名グループがおられ、廃村田尻からのコースのようでしたが、先にスタートして歩かせてもらいましょう。田尻川沿いの細い曲がりくねった車道には植林帯の中で日当たりもよくなく、雨上がりの今日はジメジメした湿気が感じられ蛭は大丈夫かなと心配し、スパッツもバス内で準備万端でした。この先には田尻谷以外にウジウジ谷という名の谷もあるのです。昔は本当は宇治宇治谷と書いていたようですが、現在の山の地図ではカタカナ表記となっています。どうりでウジが出そうな湿った雰囲気の道が続いています。でも、結果として蛭の被害はなく、首無地蔵でスパッツは外すことにしました。

 そのような舗装路の両脇にいろいろ遅まきながらの花が咲き残っています。ヤマシロギク、シロヨメナ、ノコンギクなどの野菊の仲間たちが広がっています。それにオハラメアザミ、ナギナタコウジュ、オタカラコウなどや、他にもアキチョウジなどいろいろ咲いていたのですが、ほとんど見飽きたものばかりでスルーの歩きでした。

       
ヤマシロギク   オハラメアザミ  ナギナタコウジュ  オタカラコウ

 古くからあるペンション愛宕道を右に見て、その先には真新しい設備の細野簡易水道取水場などを過ぎ半時間ほどで、田尻廃村コースの岐れですが、こちらはそのまま直進しますと3分で細野峠への今回の登山口到着でした。入口前の車道に立つ標識を見ていますと、軽四輪車が我が道と同じように右折して止まりました。

 すると軽四輪から元気よく柴犬が飛び出し、あたりを走り回りだします。地元の山主の方でしょうか。どうやら、山の様子を見に来られたようです。「細野峠から雲心寺西平方面へ入らせていただきます。」と頭を下げて挨拶をします。その方は笑顔で「その方角には道はないやろう、気を付けて行ってよ!」とにっこりしながら、すぐにわたしとは違う右折の斜面に向かわれます。
 ところが、柴犬は一目散でどんどんわたしの行く方向へ上がって行きます。それを見たわたしはすぐに戻って「すいませ~ん、犬がご主人の方角でなく、直進して相当上まで行ってしまっていますよ」と大声で呼びかけると、「いいんや!、放っといたらすぐに戻ってくるから・・」と、犬の様子を見ようともせずにドンドン上がって行ってしまわれます。え~、あの犬がこちらについてこられたらどうしようと、折角、声かけしたのにどうすれば・・と思うのですが、仕方ありません。あの方が言われたように放っておけば、この犬は賢いのだろうと思うことにしようと、考えることにして歩きだします。

 

 次第に足元に水が流れるように道の真ん中に溝が造られた簡易舗装路ですが、倒木多しの状態で歩きにくくなってきます。それでも10分ほどで細野峠でしたが、わたしにはもっと長い時間歩いたような気がしました。ところが、やっぱりわたしの心配のとおり、その柴犬は待っていた峠で私が着くと安心したかのように、こちらの進行方向へ向かってしまうのです。「お~い、アンタのお父さんは向こうだよ」、と何度か指さしながら大声で戻るようにいうのですが、この犬にはこちらの呼びかけがどうやら通じないようです。こちらは仕方ない、犬のことは忘れようとマイぺース歩きとしましょう。

 最初のP588地点につけば、いつもの北山歩きの方の可愛い標識が下がっていました。後はほとんど南向きに進みましょう。だいたいの小ピークは自然林となっていましたが、周辺が植林の高い木のようで、日当たりはなく雑木も小灌木が多く、足がとまるような樹木の果実すら目に留まりません。しかたなく歩くばかりとなってしまいます。

 ところが、ずっと私の前を行っては振り返るそのワンちゃんが気になります。できる限り知らない振りをしながら歩くのですが、先に行ってこちらを振り返る繰り返し、たまには先行後に周辺の斜面を駆けまわったりする元気よさで、おっ、もう帰ってくれたのかなと思っていると、しばらくで足元に纏わりつくようにハ~ハ~言いながら、また追い越していくことの繰り返しとなります。

 

 展望もないし、樹木の実もないし、かといって地形図を広げなくては歩けないほど、踏み跡が分かりにくいほどでもないためになすこともなく、やっぱりワンちゃんのことばかりが気になる歩きとなるのでありました。そもそも、犬とのかかわりがない我が身にとって、その扱い方も経験がありません。

 仕方ない、どうにかワンちゃん自身がするでしょうと思う始末で、とうとう雲心寺西平尾根からP807あたりまで下って引き返し、稜線上のP812はそろそろかな、と思う頃になって、本日初めて一人の40才前後のおとなしい青年がタブレットで地形図を見ながらやってきます。
 その青年は「びっくりしました、こんなマイナーなコースで人に会うなんて、まして犬連れの方に出会えるなんて、心細かったです・・」と遠慮勝ちにホッとしたような顔をして声を出すので、こちらは「へ~、そちらこそ、ここは初めてですか。よくもこんなルートに入ってこられましたね~。ア~、あの犬は勝手についてきてしまったんですよ。細野峠からずっとですよ。」というと「え~、細野からですって、長い歩きでよく道が分かりましたね~・・」なんて言うのを聞き、なんだ~道をイや、山はまだ経験がそんなにない青年だな・・と思いながら、「それでどこまで行くつもりなんですか?」といえば、「P807あたりまで行って引き返します。」というので、「それなら、大丈夫だろう、ただ、この稜線から降りだしてモミの木の大木以降はまだ踏み跡らしきものはあることはあるが、P807あたりがすぎればはっきりしなくなるから、さらに進めば要注意だよ」といって別れました。そんなやりとりをしている少しの間もワンちゃんは近くでじっと待っているのでした。

 そんなことより、こちらはP812の表式を探さなくてはと進めば、そんなに先だったかな・・、ひょっとしてP812地点は行き過ぎていないのかなんて思う始末でした。ワンちゃんのことばかり考えていて、小さなピークを見逃したのではなどと思う始末の悪い歩きになってきていました。でもまっ、もう少し先だろうと進めば、ようやくにして道沿いすぐ左手にその可愛い表式は下がっていたのでした。

 さぁ、次はこの山道が終わり、林道となるのだと自分の心にいい聞かせながら、ドンドン歩けばやがて幅広の林道地となります。ところが、また、林道に上がり待っているワンちゃんの姿を見て、この調子だと愛宕山の人の多い中にまで登ることとなってしまえば犬連れの登山者だと白い目で見られながら歩くこととなり、そんなことになれば恥ずかしいではすまされず、愛宕の主の皆さんからや、はたまた神主さんにでも注意されたのでは気まずいなと思ってしまいます。
 もちろん、これまでから愛宕神社にまで犬を連れて来ている登山者など見たことないな、そうそう、犬連れお断りの表示も愛宕山麓のどっかの看板で見たことあるよな、などと考えます。それに万が一、最後までついてきたのならば、JR保津峡駅まで纏わりつかれ、電車に乗る時はどうするのか・・と歩きながら自問自答の歩きとなってしまっているのでした。

 ダルマ峠、林道の三叉路で右折すればすぐに竜ノ小屋へ行けるのだが、と思いながら前を行く犬が恨めしくなるのでした。ところがこの三叉路で、わたしは犬に対しての悪知恵がハタとひらめきました。ここを左折し少しで道は大きく右カーブとなるナ、その手前でここまで飲水なし、もちろん犬も飲水なしで辛抱してもらっています。こちらが飲水や行動食を取れば、近くにいるこの犬にも与える必要が出てくるだろうし、そうすればどんどん情が移ってしまい馴れ馴れしくなって、こちらから益々離れなくなってしまうだろうとの思いで辛抱し、犬にも辛抱してもらったのです。そこで、三叉路左折から少しの道、ここで思い切りゆっくり歩き、仕方ないのでカウベルを片づけたり、自分だけでも飲水もしようかなと、ザックをおろしていると犬の動きを見れば、そろそろとその犬は先行して右へ見えなくなってしまいました。

 ここだ!、とすぐ右への林道に駆け上がって行き、好展望地へ上がり写真を撮ると、すぐに首無地蔵方向へ急ぎ足で降って行こう、と駆け下るようにして音のしないように静かに進みます。。

 
左が愛宕山924m  二番目の小さく低いのが890.5mの三角点地

 考えたとおり柴犬はやってきませんでした。好展望地から10分ほどで着いた首無地蔵で遅めのお昼とし、可哀想なことをしてしまったな・・、でも、もしも追ってくるかも知れないなと思い直して、できるだけゆっくり食事をすることにしよう。といろいろ不安に思いながら、40分ほども待つとはなしに呆然としているのでした。

 しかし、サカサマ峠の地蔵さん地へは結果的に柴犬は姿を見せませんでした。愛宕から降りて来られた下山者が、ここから梨ノ木林道を清滝へ降りられるのを見て、わたしもここから降りようかな・・と思ってはみたのですが、いや、待てよ、予定通り竜ノ小屋から芦見谷東尾根より愛宕へ登って、その後は西尾根をJR保津峡駅まで帰ろうと心に決めて腰を上げたのでした。

 竜ノ小屋はもちろん、管理人も普段から常駐されていないので、いつ小屋前を通っても寂しいのですが、今日は休日ということもあって、珍しく竜ヶ岳からの下山者でしょうか、竜登口までの間で2人が二組、単独が2人の6人もの方と小屋から渡渉地点間で出会うのでした。こちらは反対に下流に進み竜登口手前で渡渉してしまい、芦見谷東尾根への取りつきである急登斜面を悠然と上がります。というのも2人が竜登口から小屋方向へ渡渉をためらっているのを見ながら、こちらが道なき急登をやっているのをその二人が見上げているのが分かっていましたから余計に元気はつらつと登りあげるのでした。

 岩混じりの二か所のとっつきをそれぞれ右から巻いて枝木をつかみながらどうにか上がれば、もう自然林の穏やかな稜線歩きとなってしまいます。そうなれば思うのはあの柴犬はどうしているのかなぁ~、分かれた後の林道は地道にしても車の行きかう車道並みだから、ここからは自分の家へ帰ろうと心しただろうか・・・?。

 

 それとも、うろうろとこちらの姿を探し回って、見当たらないので歩いてきた道を引き返そうと雲心寺西平尾根から細野峠へ帰ってくれたのだろうか、などと考えながらの歩きで、芦見谷東尾根のP811で、ようやくここにきてさっき昼飯は終わったのに、また菓子を食べて、しっかり飲水タイムとしようと一息入れることにします。

 P811からの稜線も尾根芯を拾えばすんなり林道終点まで行けます。さらに愛宕三角点下の林道から地蔵辻へ上がって、ジープ道から比叡山や比良連峰を撮ってやれやれ、やっと柴犬と別れられたとホッとしたり、いや、可哀想だったかなと思ったり気も心も虚ろでした。そして愛宕山へ上がれば、なんと気温は10度であったのはびっくりでした。それでなくとも可哀想なことをしでかしたとの思いもあったために、自らの心もすっかり冷え切っており、ほんとうに身震いしてしまいました。

 
ジープ道から比叡山や比良連峰で心を癒しましょう~ 

 

 
愛宕神社は10℃寒い~ 

 この後はよく知られた道ですから、詳細は省略させていただきますが、表参道を降り、水尾岐れから西尾根、大岩から中尾根を下って、JR保津峡駅着は15時半頃で、約20Kmを6時間半で歩いたことになるようです。こんなことになるのであれば、もしものことを考えて、細野峠下の登山口で飼い主の方へ連絡先等を聞いておくべきだったと大きな反省となってしまったのでした。飼い主のご主人さん、もしこのページが目に入ったとすればのことですが、飼い主様へお詫びいたします、きっと可愛がっておられたであろうワンちゃんが万一お宅へ帰ってこないようであれば、大変なことをしてしまい、誠に申し訳ありませんでした。

 

 白状すれば、そもそも私事態が昔から犬嫌いでした。これまでから大きな犬や、いえ、小さな犬でも吠えられるばかりで好きになれなかったのが事実です。まして山へ犬を連れ歩く人たちの気持ちが分からないな・・と思うような考えの登山者なんです。そのようなことから、犬に対するいろいろな扱いもさっぱり関心もなかったためや、犬への偏見もあったりするのかもしれません。このような仕業であることも申し上げておき、伏してお詫び申し上げます。

歩いた軌跡は↓のとおりです。(クリックで拡大)

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