比良 サカ谷南尾根から蓬莱山 ’16.10.23 曇り風強し

 坂下-サカ谷南尾根-P762-Ca1090ケルン地-小女郎ケ池-P1101-蓬莱山=ロープウエー=バス=JR志賀駅 

 そもそも、山歩きには誰もが登るルートではなく、一般的な登山地図に掲載のない良き稜線を歩けば、ほぼ貸し切り状態となり、山登りの良さを味わうメリットを求めてのマイナールート歩きをなさいませんか、との呼びかけでのご案内であった。

 ところが、珍しく今回の登山口のバス停下車時には、我ら以外に2パーティー計十数人の方々の姿があったのだ。これにはびっくりものだったが、でも、おそらく二組のメンバーは一般道のサカ谷道コースを行かれるのだろうと思っていたのだ。そして、スタート時の声にはその一組5人のメンバーが我らと同じで、「我々は小女郎ケ池西尾根ルートを登るヨ!」、との声を聞いて、「エ~、こちらも同じルートですよ、それはすごいですね!・・」、と思わず口に出てしまったのだ。

 思わず・・の声の訳は、これまでから、この坂下で近畿自然歩道からサカ谷南尾根に向かう姿を見たことがなかったからであり、ましてや5人もの方が登られるのはほんとうに珍しいコースなのだ。これだけマイナーコースを歩く人はほとんどが単独行であるのだが、5人とはなかなかにして結構なことであろう。というのも、これだけ魅力あるサカ谷南尾根コースなのに、どうして歩く人が少ないのだろうかと、これまでからHPで述べてきた甲斐があったというものだ。なお、「小女郎ケ池西尾根ルート」との呼び名は「サカ谷南尾根コース」と全く同じコースで、人によっていろいろな呼び方をしているのだ。

 結局、もう一組の十数人の方々が一般道を登られるようだったのだが、その中に以前あちこちの山への案内時に参加していただいていたMさんが居られたのも奇遇であったのだ。9月の別の山でも以前ご案内の方に出会い、〇〇さんですね!、と言われてびっくりしたのだが、こちらの名前をしっかり憶えていただいており嬉しいかぎりであった。
 もちろん、今日のMさんもこちらは忘れていたが、私の名をきっちり憶えてもらっていて感謝であった。我が方はどうしても、ツアーの場合には、お客さん側が多人数のために、アクシデントなど特別のことがない限り名前は毎回ほとんど憶えられないのが実情であるのだ。「Mさん、これを機会にまた是非私とご一緒しましょうね。メールをお待ちしてますヨ・・」、と一応営業しておきましょう。(笑)


 さて、本題に入ろう。サカ谷南尾根からの歩き初めは、葛川橋から右折すればすぐに「崩坂改修記念碑」の小さな丸っぽい石碑が座っている。その横に説明書きが新しく昨年秋くらいに立てられた地で、この碑について調べると『坂下町葛川橋南詰め付近、安曇川右岸の若狭街道旧道沿いに立っています。文政六年(1823年)6月の建立で、高さは69センチメートルの記念碑です。崩坂は街道中の難所で、その改修は待ち望まれていました。』とある。
 でも、文政六年と見て今日の同行の方もすぐに分かられる歴史好きな方だから話は早い。どうやら193年前のことのようだ・・。その説明文の文政六年は、オランダ人のシーボルトが来日した年のようだ。いやはや、大昔からの坂道がたびたび崩れ、あたりの人たちの往来に長年苦労あって、村の庄屋さんの尽力によってようやくにして改修とあいなったようで、改修による村人の皆さんの喜びの石碑となったのであろう。
 ところが、現在は崩坂という名に逆戻りとなっているようで、道は激しく痛み、車はもちろん進入禁止となっている。我ら登山者の救いは環境省による「近畿自然歩道」と指定されたその一部の道なのだが、肝心の登山者すら姿も、ほとんど皆無といっていいくらい寂しいのは残念至極である。
 なお、「近畿自然歩道」とは、ウィキによれば「環境庁(現環境省)の長距離自然歩道構想に基づき、日本で8番目に整備された長距離自然歩道で、平成15年に全線が開通した、近畿地方を中心とした2府7県にまたがる総延長3,258 kmの長距離自然歩道である。」とある。


崩坂改修記念碑と説明板

 そして、林道沿いのフサザクラに、実をいっぱいさげたクマシデや珍しいアワブキなどの樹木を紹介しながら、石碑からすぐで行者山トンネル上がサカ谷南尾根の末端であり、その登山口となっている。しかし、今日は予報どおりの強い北からの風にさらされながら、これより尾根筋を緩やかに登ろう。
 尾根筋を東から直角に南へ曲がれば広い杉林に突き当たり、境界を東南へ下ると本日コース中で一番の急登である。こちらの急登は積雪期での直登はスノーシューでは辛く、ジグを切りながら登らざるを得ないのだが、今回は直登も辞さずに途中立ち休憩しながらどうにか直登で頑張ろう。それでも上部の植林の中あたりまで上がればやや傾斜は緩んでくれるのだ。


急登を振り返ると下が見えない

 急登からやがて穏やかなP762地点ではどうしても一本取りたくなってしまう。植林帯が過ぎてこれより自然林の森はやはり気分が爽やかとなるというものだ。途中には赤い小さな実がいっぱい落ちているのを花に詳しい方が見つけ「この赤い実は何の実でしょう。」との声で、「その赤い小指ほどの、大きくても1cmほどの実の表面に、白い斑点がついている赤い実は、バラ科のウラジロノキの果実ですよ」などと話しながら歩くのだが、でも、少し上がって行けばまた植林が出てくる。
 そして植林と自然林の、その境界線上にはブナの大木(Ca880)が立っている。昔の人は自分の持山が分かりやすいように、ブナなどの大木は切らずに残していく習慣としたのであろう。このようなブナはどこで見ても山歩きには特別の風景を作ってくれるのだ。皆さんにもこの景色を楽しんでいただこう。
 ところが、期待の紅葉はそんなに進んでいないようだった。また、落ち葉を手にされ、「これはカエデでしょうか。」との声に「あっ、それはカエデの葉のようですが、ほんとうはウコギ科のハリブキなんですよ。棘が幹や枝に一杯あり、若葉はタラノキ、タカノツメにコシアブラなどの新芽と同じで、美味しいらしいですよ。」などと話したりして歩きます。


あたりでは一番のブナの木

 次第に尾根の流れも右や左で、進み方も地形図チェックも当然であるが、今度は落ちている大きめの赤く色づいた果実がいっぱい散乱していたのを目にして、「こちらは先ほどのウラジロノキがバラ科のナナカマド属であったのですが、これはオオウラジロノキといって同じバラ科ですが、リンゴ属なんですよ、この実は強風で落下してしまったものですが、もう少したてばさらに大きくなって2~3cmくらいになったものを半分に割ればリンゴそっくりの姿です。その実を食べると、ほんとうにリンゴのような味で美味しいですよ」などと説明しながら歩くのであった。もちろん、この種は落葉高木で10~15mになるため、上を見上げるとその果実がまだまだいっぱいついているのがどうにか見えたのだ。

     
 オオウラジロノキはリンゴのような味がし、11月ころの山歩きの昼のデザートだ  

 そしてそのうちになだらかで広めの尾根にポンと上がってきた。お~、これより期待のブナやミズナラなどの紅葉地であったのだが、いかんせんやっぱり心配していたとおり紅葉の進み具合が思わしくなさそうだ。お目当ての山の幸のお土産もほとんど見当たらず、せいぜいナラタケの終盤しか残っていなくて、これまた期待外れであった。

     
見事な落葉樹が広がりを見せる広い尾根も紅葉の始まりはこれからのよう  もうナラタケも乾燥気味・・ 

 この広尾根はお昼の予定地であったのだが、これではこのもう少し先のケルン地まで行ってからにしようということで、ドンドンと前進である。広い尾根から最後はやや登り気味となって真東方向に登り上げ、シダ類が現われてくれば鹿にでも食べられたのだろうか、刈り込んだごとく丸く揃った小さな盆栽のように見えるイヌツゲが足元に多数出てきて歩きにくくなる。
 なだらかな斜面には多雪で大きくなりがたいカマツカが小木なのにしっかり赤い果実をつけて立っている。この一帯までやってくれば、「ここで皆さん後ろを振り返ってご覧ください。」と声をかけよう。ところが、本日のどんよりと今にも泣きだしそうな空模様では、京都北山の大パノラマとはいかないようで、申し訳ない眺望となってしまったのが残念であった。本来であれば青空の中に南の比叡山から右へ京都府下一番高い皆子山に、No2の峰床山が指呼の間で、さらに奥には愛宕連山が浮かぶのであるのだが、はっきりとしない眺望にも泣いてしまった。

 しかたなく、道なきササ原の中、アセビ、カマツカ、シャクナゲなどの小灌木を縫うように進んで、ようやく本日のサカ谷南尾根の高みであるCa1090に立つケルン地へ到着であった。そして目の前の小女郎ケ池を見下ろすと、朝スタートの坂下で一緒であった一組10数人グループらしき人達が池から小女郎峠へ向かうようなところが見えたのだった。こちらはゆっくり目の歩きであったのだから仕方なかろう。もちろん、我らと同じルートを先に歩きだした男性5人グループはその後には姿を見ることは一度もなかった。
 我らは小女郎ケ池や蓬莱山にさらには武奈ケ岳とコヤマノ岳を眺めながら、北風を避けてアセビを背にお昼(12:10~35)の憩いだったが、やや寒く心ゆったりとここで腰を据えることはかなわなかったのが悔やまれたのが本音であろうか。。

     
 Ca1090のケルン地    蓬莱山の左にコヤマノ岳と武奈も見え

 腰をあげると、目の前に広がる小女郎ケ池へササ原の中を下って、池の周りのサカ谷道からのぬかるむ一般道へ合してから池の看板地へ行き、その説明板を見ながら、標高1060mの滋賀県最高地の高層湖沼を見物してもらい、その昔からの伝説話を読みながら、昔話とするのであった。

 
貸し切りの小女郎ケ池

 この後は小女郎峠ではなく、看板からあくまでも今日のマイナールート歩きとし、直にササ原を北へのP1101へ上がって、また真正面に蓬莱山と対峙してもらおう。ようやく地蔵さん座る縦走路と合流であり、ここで初めて琵琶湖を見下ろしていただいた。ここまでササ谷南尾根歩きでは結局誰にも出会うこともなかったのだが、早速この縦走路道では何組かのハイカーに出会うのである。
 我らもその縦走路を進めば、岩場の地蔵さん地から登り上げてどうにか蓬莱山へ到着となったのであるが、今日の強風と雨こそなかったが一日中どんよりとした曇り空の中の山歩きには、初めて歩いてもらった方々には申し訳ないような日となってしまったのが残念であったが、本日の高みである1147.3mの山頂で登頂成功の握手となった。

 
山頂にも人の姿は少なく

 さらに、蓬莱山からいったん下って笹平へ、そして若者たちのジップライン、スカイウォカーなどで賑わうそのそばを見ながら打見山へ登り返し、本日のゴールであるロープウェイ山頂駅到着となったのである。後は東の斜面の始まった紅葉を、100人乗りロープウェーの満員の中より眺めながら降り、山麓駅から路線バスに乗り換えてJr志賀駅へと下山した。お疲れ様でした。

本日の軌跡(↓画像クリック)

ホームヘ






inserted by FC2 system