比良 紅葉の武奈ケ岳 ’16.10.30 晴

 JR比良-イン谷口-神璽谷-北比良峠-八雲が原-イブルキノコバ-冬道-武奈ケ岳-コヤマノ岳-中峠-シャクシコバノ頭-小川新道-大橋-縦走路-荒川峠-中谷出合下-JR志賀

 きのう近畿圏では「こがらし1号」となったが、今日は打って変わって0%の予報で絶好の山日和である。さぁ、錦秋の比良へ紅葉狩りに出かけよう。岳人は同じ思いだろうから登山道は人混み必死である。ということで我が道は比良では普段から人の入りの少ないルート歩きとしよう。そう、その道には登りを神璽谷、下りは小川新道として、武奈ケ岳への山歩きと今秋一番の紅葉を楽しもう。

 山頂へ着けば、それにつけても、思わぬほどの久方の武奈ケ岳からの当たりの大紅葉日となってくれたのである。去年は紅葉時期が早かったために10/23に、やっぱり神璽谷から登って武奈だったが、紅葉はハズレであったのだ。まずはそのコヤマノ岳山頂から西の斜面下には口の深谷源流があるのだが、それより山頂までは全くの自然林に覆われており、秋の武奈ケ岳から眺めるには最上級の紅葉のベストポイントであろう。↓画像はそのコヤマノ岳西北から西南への斜面の大紅葉の様子である。これぞ錦秋の比良であろう!、見て、みて・・~♪♪


武奈ケ岳よりコヤマノ岳の大紅葉

 さて、歩いたコース順にその様子を綴ってみよう。

 比良駅を8時ころにスタートし、目の前には快晴の青空の下へ堂満岳や釈迦岳の面々が見ろしている。そしてイン谷口より神璽谷へ取りついた。いつもの神璽ノ滝はパスし、数えきれない砂防ダムを横目に限りなく谷を詰めていく。大分歩いたナ・・と思えるころになると、道は左岸高く通る道となって足元がガラガラの石の上をトラバースし、天神社の祠が祀られて朱塗りの鳥居が二つ見えるあたりまでくると、アっ、もうそこだなと思うのだ。あの神社あたりには杉の巨木が鬱蒼と聳える森となっているようだ。

 その先を河原へ下れば駅から1時間半で、56年前に「山を愛し、デキシーを愛した〇〇君ここに眠る」との遭難碑が、河原の中に転がるように、流れ流れてきた多くの岩石の中に埋まるようにある地なのだ。知らない大先輩だが、この岳人へいつもここで手を合わせ、冥福を祈って首を垂れよう。ついでにこちらの今日の山行の無事も見守ってと厚かましくお願いもしよう。

 すると、すぐ先に神璽ノ谷ルート一番の危険地帯通過となるのだ。ロープもある急を上がれば、10㍍は十分ある谷底のキレット上に架かる3㍍ほどの橋である。昨春に立派な橋に手直しされて、今では余裕で渡れるようにしていただいている。2年前には本来4本あった縦棒丸太の中の2本が無い状態であったのだ。それにしてもこのようにすごい技術と労力でのご苦労はどなたなのだろうか。2年前の積雪期に、アッ駄目かなとの経験者語るの張本人であることから、大きな感謝に堪えないなのだ。改めてありがとうございますとお礼を申し上げたい。

             
 ガラガラの上をトラバース    朱塗りの2基の鳥居   56年前の遭難碑    今は誰でもOKなほど立派な橋 
             
 左からコシアブラ、ミズメ、ウリハダカエデ    コミネカエデが今日一の赤色    今では花崗岩も角が消え丸く   左に次郎坊山が絶ピンで 

 この橋を渡れば後10分ほどで、三角おにぎり岩の座る二股地である。このおにぎり岩地でゆったりと一本たてよう。なにせ、この上の蟻地獄といわれる地は、ここまでの谷歩きとは違い、ザれた道が続くためにスリップなどに十分注意することに違いはないが、道はよく踏まれている。でもフィックスはほとんどみんなが古くなっていることも当然注意しよう。要するにロープに頼り切ると危険であるのだ。
 やがて空が広がって目の前には、もう始まっている紅葉が次郎坊山を錦秋の彩で染めている。そして右奥には釈迦岳もドンと座っているのだ。とはいっても、いろいろな奇岩も風化などで少なくなってしまい、以前の蟻地獄のイメージとは雲泥の差であろう。
 この地でも振り返って紅葉を楽しめばもうそこはダケ道の合流点に達し、やっとここまで登ってきたとホッとし、すぐ上に二体の地蔵さんが祀られているのが目に入り、小さな石仏もにこやかに出迎えてくれるようで、やっぱりここでも感謝の手を合わせよう。

 その後は広い北比良峠で、チラリと頭を覗かせてくれる武奈を仰ぎ見て待ってろヨ、と元気よく前進しよう。八雲が原はウメバチソウがわずかに咲き残っているだけで、寂しいかぎりだ。ススキの穂が風に揺れるパノラマのきくユーエンコースへの先行者を見上げながら、当方はイブルキノコバへと向かおう。
 そして冬道をフゥフゥいいながらコヤマノ分岐であった。イブルキノコバからの冬道上部ではブナたちの紅葉が進んでいるようで、他の樹種もいろいろ彩を見せてくれており、結構楽しみながら歩けた。しかし、樹高の高いブナあたりは昨日のこがらし1号のせいだろうか、落葉多く枝の寂しそうな木が多いようにも見られたのが残念であった。

 でも、ここまでくれば武奈ケ岳は近い。ラストスパートであった。直下の急登をぐんぐん先行者を捉えて山頂手前で、あれー、見たことのある顔が・・。出会いました。そうです、山とものAさんだったのだ。「お~〇〇さん、ご機嫌さん、前にはKちゃんにKさんも来ているヨ」と嬉しい出会いとなったのだ。
 山頂からの360度の眺望を撮るのも忘れて、Kちゃ~んKさ~んと大勢休んでいる先行者の人たちに遠慮もせずに大声が出てしまったのだ。それに若くて元気なAさんや他にもそのメンバーの方が一緒で、ほとんど知った方達であって、何年ぶりかの久しぶりの山ともの方々にお会いでき、感動の武奈ケ岳となってくれたのだ。もちろん、聞けば後行程が異なっていたのだが、楽しくゆったりとおしゃべりを楽しみながらお昼とし、まさにこれぞ「憩いの頂上」となったのである。「お会いした皆さま、美味なるいただきもの、ありがとうございました。」
 そうそう、Kちゃんの7歳のお孫さんも元気に登ってきたようで、思わずKちゃんに「こんなに可愛いイブキ君だから、目に入れても痛くないでしょう。」と笑顔が続くのであった。それに「イブキ君、大きくなれば植村直己か白石康次郎のような大冒険家になるんやで!」と声をかけて頂上を後にした。

             

 さて、下山はコヤマノ岳からシャクシコバノ頭より小川新道を下ろう。まず、コヤマノ岳の山頂表示そばには、ほうきを立てかけたように枝を広げる大木のブナの木が、この山を歩いた方には印象的だろうが、やっぱりこちらのブナの葉もやや寂しそうな姿となっていた。それに時間的に逆光にも泣くことになった。少し下がればきれいに黄葉したハウチワカエデも見ごたえ十分であった。

     
コヤマノ岳のブナの大木    ハウチワカエデの黄葉 

 中峠あたりのブナもやっぱり同じ状態でほとんどが落葉してしまっていたが、峠を素通りでシャクシコバノの頭へ向かうも、登り時はやはり踏み跡につられ、最後は消えた所から適当に頂へ登ってしまった。そうだった、ここの山道は大橋から登ってくればそう道は間違わないが、中峠からは山頂からの下りも気をつけることを思い出したのが遅かった。山頂手前で振り返って武奈とコヤマノ岳や、東の堂満岳も確認し三山の最後の姿を見納めて、大橋への道を西南側へ引き込まれないように慎重に下ってケルン地へとなった。

     
 振り返り武奈にコヤマノ岳    紅葉の始まりか

 なお、このきつい下り道の小川新道は、そもそも滋賀県庁山岳部によって拓かれたコースらしいが、それは北アで遭難された小川潔さんを偲んで開かれた道のようである。ケルン状の遭難碑が建てられているこのコースを5度も歩かせてもらったことになるのだ。でも、きつい登りが後にまっているのに、ケルン下からの荒れ放題の箇所で単独行の男性に1:30頃交差したが、相当山慣れた方であるような雰囲気だったので、コンチワの挨拶一言だけにし、余計な注意などのお節介は止めにした。

 そして流れで削られたザレ場の下り道は初めての人なら、え~これが道だろうかと不安になるような道で心細くなりながら降りることとなろう。しかし、山と高原地図にはこのコースが点線でなく実践での表記となっていること事態が問題であろう。でもアシュウスギが目に入りだせば奥の深谷道に出合ことになり、左へとればすぐに大橋の流れに渡された3本の丸太橋を渡ることとなった。

         
 遭難碑    アシュウスギの大木多し   大橋の三本丸太橋 

 その丸太橋を渡ると、スリバチ水があるので、そこで一本としようと思ってたところに、先客が行動食をつまんでいたので、こちらも同じように菓子を口にほうりこもう。スリバチ水も久しぶりにのどを潤すことができた。聞けばその男性は蓬莱山に登って牛コバに戻ってそれからここへ来た。後は金糞峠からJR比良駅へ下山予定だという。え~、そんなルート歩きをする人もいるのだ・・、いや待てよ、それって無駄骨あるきではないの・・?、などと考えていると、そこへ若そうな女性が一人で、手元の地図を見ながらうろうろとやってきた。

 「これからどちらへ行くの・・?」と声をかけると「南比良峠から荒川峠へ行こうと思うのですが、これが道ですか・・、これを行けば峠に行けますか?」と逆に道を聞いてきた。「なんだ、こちらと同じように荒川峠へ行くのであれば、一緒に歩きますか、ついてきて下さい。」といって、金糞峠へ行く男性と別れて荒れた東南への南比良峠手前を目指して向かった。
 最初に「こちらの足は遅くはないですよ、いいですか?」といえば、「私は耳がほとんど聞こえないのです。大声で言ってください。」だって・・、え~えらい人につかまってしまった。でも仕方ない、逃げるのもなんだ・・・、大丈夫かいなと不安になってくる始末である。で、もう一度今度は止まって後ろ向きになって大声で「こちらの歩く速度は遅くはないけど、大丈夫ですか?」と言えばなんと「大丈夫です、ついて行けますから・・」との答えであったが、ここまでの数分で言うとおり結構ついてきてくれていたので、足元はよくないがそのままのスピードで登って行くことにした。

 その内に、「どのコースでここまで来たのか」と聞けば「坊村から上がり武奈ケ岳に登って、コヤマノ岳から中峠、小川新道を降りて来た。」と答えるではないか。「なに~、それで比良には初めてやって来たというのか、小川新道はきちんと歩けたのか、道は迷わなかったか?」と聞けばやっぱり、「道迷いでシャクシコバノ頭の上りと下りの両方で4~50分くらい迷いまくっていました。」と平然と答える人だった。どうやら、こちらよりも早く大橋へ降りて丸太橋よりさらに上流にまで進んでうろうろしていたらしい。その後にやっぱりおかしい、と引き返して丸太橋までもどり橋を渡ってこちらと会ったとのことである。

 荒れ放題の水晶小屋から先の紅葉地は残念ながら、まだまだの状況で当方はここがお目当てだったのだが、ハズレだったなと思いながら進んで、南比良峠手前の縦走路分岐着で、「荒川峠へは右へ行くが、南比良峠へは何か目的でもあるんですか」と聞けば、「いえ、別に用はないです。荒川峠へ行きます。」とのことで「あれが今、下山してきたシャクシコバノ頭ですよ、それにこちらが堂満岳、写真を撮るのなら今の内ですよ、少し登れば植林帯に入ってしまい、もうここでお別れの二座の頭ですよ。」と話して説明するが「写真はいいです。」となってすぐに杉林のうす暗い中に入ってしまったが、すぐの登りで稜線に上がり少しで荒川峠着(2:30)となったのだ。ところがこの後がびっくりだ・・・

 「この道標から下ればJR志賀駅に下山になりますよ、でも1時間は十分かかるだろう。」というと「あの、蓬莱の紅葉を見たいので、蓬莱まで行きます。ゴンドラからでも見れるのでしょうか。」といわれるではないか。「え~、蓬莱の紅葉を見たいって、蓬莱山の紅葉なんて山頂にはないですよ、それなら打見山からゴンドラに乗ればスタート直後に東面に確かに紅葉は見られますが・・、僕も先週ゴンドラから見ましたよ、でも、これから打見山まで地図では110分とありますよね、もちろん、もっと早く歩けると思うけれど、初めての道ではっきりしない部分もあったりして、また道迷いしていたら紅葉どころではなくなりますよ、たとえ上手く着いたとしても、もうこれからの時間では山肌は日陰となってるから、紅葉はきれいには見えないですよ」と説得して下山することとしたのだ。

 でも、この女性は思っているほど紅葉には執着心もなさそうで、ケロッとしているではないか。どうやらこちらの話も全部は聞こえていなかったように思えるのであった。その後もそれなりの速さで歩いたが、遅れずについてこれた。最後の休憩の水場で、もう一度山暦などを聞けば「北アルプスは何度も歩いています。この前も奥穂から前穂をピストンしました。槍はもちろん、3000m峰は大分歩いています。」と軽く言われるではないか。「なんだ、どおりでよく歩かれる人だなと思ってたんですよ」という始末であったのだ。

 
 最後の水場は大岩の下から湧く

 それに「山はもう30年近くやってます。」とのことで「え~何歳?」と言えば「53です。」とアッサリの返事にこちらはぎゃふんとなってしまった。せいぜい30代かなとみてたのだが、余りに女性の年を見る力のなさに情けなくなってしまったのだ。女性だと言っての下心など、こちらは日ごろから微塵もないための所以なのだろうか。
 それにしてもアルプスの3千メートル峰をいろいろと失敗談までも聞かせてもらったが、どうりで道迷いしても平然と話すなど度胸が据わっている方であった。でも、「知らない山域の山歩きには、山と高原地図だけでなく、本当は地形図を持ち歩く習慣をつけないと、今に大変なことをしでかすかも知れないですよ。だから今後は地形図を読むようにしましょうね。」と話しておいた。

 JR志賀駅(15:25)に着けば、「僕はここで着替えてゆっくりと帰りますから先にお帰りください。」というと「私はこの後は比叡山坂本駅で下車し、これで堺まで帰ります。」といって3day切符を見せて笑っているではないか。え~、JR坂本駅から京阪坂本まで上りの道を大分歩く必要があるのに・・でもあの人だったらへっちゃらかなと笑っちゃったのだ。.さすがに大阪のおばちゃん丸出しのように見受けた。そんなことが察知したのか、「僕は山のガイドですから一度ご一緒しませんか」などとの台詞は口に出そうとは少しも思わなかったのが功を奏したようだ。

 いずれにしても、今日は山では旧知の山ともの仲良しグループの方々にお会いできたし、本日のお目当てであった錦秋の比良も十分に楽しめたし、最後はエライ方・・?に「これからは一緒に山案内しますよ」などとつまらぬ声かけなどしなかったし、万々歳の極上の山日和となったのである。

 それにしても駄文、長くなりましたが最後までお付き合いいただき有難うございました。

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