京都北山 フカンド山からP897 ’17,2,24 曇

 第二ヘアピンカーブP-Ca770南尾根-P743-フカンド山-P897-フカンド山南尾根-久多峠-P

 北山の奥深き雪山の魅力を探しにフカンド山へ登ってきた。車のない身にとってほとんど馴染み薄き山域だから殊の外嬉しい。今回の取りつきは久多峠へ向かう第二ヘアピンカーブあたりで、北上の東尾根へ突き上げるような南側の小さな尾根末端あたりから植林の中を緩やかに登り上げ、小一時間もしないで東へ続く尾根に着いた。道は西へ向かうのだが、反対に展望がいいP743へ立ち寄ろうとのことで下って行けば、なんと武奈やツルベ岳だった。この方角からの眺めは珍しく、最初はあの山は・・状態であったが、よくよく見れば比良の雄であったのだ。

 
最奥に武奈ケ岳と左のツルベ岳 

 そしてまた上り返してフカンド山へ登ろう。お蔭でしっかり締まった雪質であって、せいぜい今朝がた降った粉雪程度の上を歩くこととなり幸いの山歩きとなった。出てくる小さなピークや緩やかな登りも、ほぼ樹林の中の歩きである。この山域も無雪期でこそ物好きなマイナー人が踏んではいるようだが、このような雪の歩きにやってきたくても、それなりの度胸がいるのだろうか。どうりで人の影などあろうはずはない。

 P743から40分ほどでフカンド山であった。3等らしいが三角点はもちろん雪の下であり分からない。でも山頂には山名札が賑やかに下がっている。ところが眺望は取り巻く樹林で皆無に等しい。昼には早いので予定通り北西にP897へ向けて進もう。その後の眺望も、登山道途中から桑谷山東峰と本峰が目の前に見えていたのが鉄塔が見えて分かったくらいで、他に山座同定は容易ではないのが残念であるが、そうはいっても樹林がうるさいのが多いコースだろうか。

         
 樹林の道もいいもんだ~   フカンド山に山名札賑やかなり     穏やかな雪の廊下を

 もちろん、この後も計り知れないほどフラットな尾根歩き、これって山なの、傾斜がどこまでもないやないの・・?、と思えるくらいの雪原が広がっていた。これはヤマコウバシかな・・との声が聞かれてからは自然観察モードである。残念ながらヤマコウバシでなく、若木のブナの葉が雪のこのシーズンでも落ちずに残っていたのである。冬の山中で茶色くなった葉がいつまでの残るのはヤマコウバシが多いのだが、他にブナ科の樹種も遅くまで茶色の葉を残すことがあるのだ。

     
 さて、この蔓は何でしょう・・   ハイ、ツルアジサイでなくイワガラミなり 

 ところで、冬の山歩きの中での自然観察の楽しみは「冬芽」をじっくり探しながら、あっ、これはコシアブラだ、いやタカノツメだ。などと冬芽の特徴に関心を持つことによって、雪山歩きの楽しさが倍加すること請け合いであるのだ。少しその冬芽とやらをご覧いただこう。

     
 タカノツメでなくコシアブラだよ~ん   トチノキでなくホオノキなり 

 もちろん、樹木の同定方法は冬芽だけでなく、冬季の樹木全体の姿の在り様についても知っておけば一目瞭然であることが多い。例えばリョウブとナツツバキのこの時期の相違点だが、それぞれの果実の枯れ残り状態が大きく異なる点である。「かんざし」のようにダラリとぶら下がるのがリョウブで、見上げて高いところに親指の頭のような黒っぽい枯れ果実殻がついているのがナツツバキなのだ。今回はリョウブばかりでナツツバキが見当たらなかったのが残念ではあったのだが・・。

 * ↓画像のナツツバキ等四枚は三日後の2/27に比良で撮影分を追加したものである。なお、花での比較は誰でも一目瞭然であるだろう。しかし、樹肌での同定は素人目には容易ではないが、冬季には果実殻が区別し易い。ところが、リョウブの果実殻は多いのだが、反対にナツツバキの果実殻はそんなに多くは残らず見つけづらい。

     
リョウブ科 リョウブのかんざし状の果実殻    リョウブの樹皮
     
ツバキ科 ナツツバキの単独状の果実殻     ナツツバキの樹皮

  いろいろな姿の芦生杉見ながら、P897はあれだろう・・と声が出るころに尾根の右側に杉の大木が目に入った。どうやら盤取り杉のようで、実に見事な佇まいで君臨しており、これぞ森の王様であろう。その杉にはコシアブラが着生しており、そばのブナにはヤドリギだと声が出て、ヤドリギ観察である。

     
 大木の芦生杉随所に   大木の盤取り杉が君臨 

 ところでこのヤドリギだが、日本には五種あり、近畿圏の山にはヤドリギ、ヒノキバヤドリギ、マツグミ、オオバヤドリギが見られる。さらに他にホザキヤドリギだけが中部地方以北に分布し、関西の山では見られないようだ。とりわけ京都府下ではヒノキバヤドリギが絶滅危惧種で超珍しい。ところがヤドリギは日本全国どこにでも分布し、山歩き人は誰でもどこでも見られることで知られる。ところが、高い所に寄生することが多く、手に取って撮ることは機会すくないのだが、冬季には今回のように雪の重みで落下しているのは珍しいことではない。今日は雪に埋まったばかりの見事な代物を見つけ、花材のために本日のお持ち帰りのお土産とすることができ、玄関にでも飾ろうではないか。笑

     
 落下していて雪の中のヤドリギ    落葉樹に寄生、この木はブナ

 のんびり自然観察しながら、フカンド山から40分ほどでP897着だったが、またまた眺望はないに等しく、山名札が楽しいほど賑やかだった。ツエルト内でゆったり昼食とし、気の合った山仲間5人で山話が楽しい。そして、この後はフカンド山まで戻ってから、久多峠への南尾根であった。

         
 P897   ツエルト内で1Hも楽し~     南尾根への下り表示

 こちらの尾根は最初がやや急であり、中間あたりのCa700付近で地形図上の表記どおりに見えづらい個所があったが、その後は次第に緩やかとなって1時間もかからずで久多峠へ下山できた。そして林道歩きも半時間ほどで駐車地へ戻れた。本日は今シーズン中でなかなかの山旅となった感動の山歩きに酔いしれられたのも、リーダーの素敵な山の選択であったのだからと、感謝に違いない。これは、フカンド山からテントで天狗峠、そして小野村割岳をやりたいなとの思いが出始めたのだが、さてどうなることやら・・・。皆さん有難うございました。


久多峠へと下山なる

 軌跡は↓のとおり(クリック拡大)

 帰りの最後には、久多宮の町にある「久多の志古渕神社」に車を止めていただき、参拝してきた。この神社は京都検定でも出題される毎年8/24に行われる「久多の花笠踊り」で知られるのだ。HPによれば「左京区久多の産土神・志古淵神社に歌と踊を奉納する行事で、室町時代から続く風流燈籠踊の一つ。午後8時から花笠を持った男衆達30余人が、念仏風の文句を唱え、太鼓と音頭取りの歌に合せて、花笠をゆすって踊る。平成9年12月15日国の重要無形民俗文化財に指定。見学自由。8月16日頃から当日まで、5町内の花宿で制作作業や練習が見られる。」とある。が今日は雪の中で本殿へも雪の中を進んだ。

     
久多の志古渕神社     三間社流造の本殿

ホームヘ






inserted by FC2 system