京都西山に咲く花  '17.4.24 晴

  西山における春の花歩きがやってきた。例年のことではあるのだが、本年はどんな花に出会えるのだろうと期待しながら8時頃に家を後にした。小一時間も歩けば山麓に辿ることができ、早速足元に野草が目につきだしてくれる。最初はツルカノコソウの咲き始めであった。まだ初々しい咲き姿でやっぱり慄然とする姿は満開のころだろうか。道が心なしか登り坂となったなと気づくころには、あたりが白く見えるほどで、花びらがふるえる様なニガイチゴが一面に広がっていた。近づくとやや満開を過ぎているようだったが、やがて6月ころには赤く熟して美味しい果実がお目見えすることだろう。。

 さらに周りが里山のような雰囲気となってくれば、その足元にはシハイスミレの群生地にやってきた。スミレはほとんど終盤であっても、これだけ多くあれば彩色が残る個体もあろうというものだ。ところがその中に他とは雰囲気の相違するハグロシハイスミレに目が止まった。葉の表面が黒紫色だから、すぐに気がつくのだ。近畿地方を中心に岡山県から岐阜県で見つかっているという。
 もちろん、本日の花巡りの中では最初からタチツボスミレはあちこちで大群落が残っているのだが、色合いが薄れてもう見栄えがしない。そして、アオイスミレ、ナガバノタチツボスミレはもう姿はない。でも、本家のスミレはまだ頑張っていた。とりわけアリアケスミレの大群落は、まだまだ溌剌と凛として畦道を白く見えるほど群生で咲き誇っていた。しかし、今年はどうしたことかいつも見るツボスミレは目にしなかったが、どうしたのだろうか。

     
 ハグロシハイスミレ   アリアケスミレ 

 織りなす小山の間には鹿の害獣柵で張りめぐらされている水田があった。そこには何とも目に優しい自然いっぱいの山里が広がった。カンサイタンポポが咲いて畦道を黄色く彩っていた。もちろん、中にはスミレやアリアケスミレにオミナエシの仲間のノヂシャも一員である。
 こんな密やかな所だ、長期間にわたって休耕田が寂しいのだが、ここにはよ~く見れば黄色いサワオグルマが毎年きれいに見せてくれ、その花の姿はここでしか目にしない。今年は4~5株が咲き誇ってくれていたのだが、いつまで持ちこたえてくれるのだろうか。山裾そばにはウワミズザクラが咲き初めの模様で風に揺られている。アー、これならやっぱりポンポン山の頂では、まだまだこの木は蕾硬しだろうと例年の様子が思い出されるのであった。

 
 サワオグルマ

 いよいよ、山道へと上がろう。尾根まわりにはコバノミツバツツジがあちこちに咲き、日当たりよい箇所ではもう花びらを散らせているではないか。しばらく歩いて、割りあい元気な水音が聞こえるほどの場へ着いた。やっぱり今年もニッコウネコノメソウがしっかり咲き誇って待ってくれていた。そばにはチャルメルソウもきれいに咲いている。さすがにタチネコノメソウは茶色い種を作っていた。その付近にはミヤマキケマンも咲いていたが、去年あたりからその姿が無くなってしまった。

     
 ニッコウネコノメソウ    チャルメルソウ

 これらのユキノシタ科の面々のお花をゆっくりのんびり楽しんで、この後の急坂が苦しい歩きとなってきた。わずかな谷沿いを通過するのだが、以前と異なり今は花などとっくに鹿のせいで目に入るものは見当たらない。見るものはなく汗しながらようやく鹿も敬遠するミカン科のツルシキミの花が咲く場所である。
 稜線に乗ったのだ。そこは生駒山が見られる展望地である。腕を覗けばえ~、ここまで4時間近くもかかってしまったのか~?・・・。初めてだなぁ~、ここの展望台までこんなに遅く着いたのは・・。ならばゆったりベンチにかけて生駒山を眺めながらお昼としよう。
 そういえば生駒山にもご無沙汰である。クスノキ科のアオモジを見に出かけたことを思い出していた。半時間ほどで歩きだし、次はイヌブナの新緑を眺めて、釈迦岳の3等三角点に挨拶し、アカネ科のツルアリドオシ地の斜面を見ながらもう一ケ月もすれば会えるネとひとり言だ。すぐで次のツルシキミの雌花地であった。この種は雌雄別株といい株が違うのだ。雄花と異なり何と貧弱な花姿であろうか。

     
ツルシキミの雄花     同じく雌花

 そして、しばらくでポンポン山手前のカタクリ保護地であった。しまった、入って見てすぐに思った。害獣柵やボランティアの方々のお蔭であろう。すごい群落となっているではないか。もちろん、この時期であり花は終焉は致し方ない。でも、よくよく見ればなんとか彩の見られる個体も残ってくれていた。カタクリの多くなっているのはありがたいのだが、他の種はシハイスミレ、ミヤコアオイくらいしか目に入らなかったのが残念であった。近年、日の当たり具合が大胆な伐採で良すぎることも一員ではないだろうか。何はさておいても保護策や見守り等は大変であろうことにも感謝しなければならないと心しよう。

 
 今年は大群生だったよう

 頂はすぐであった。久方のポンポン山の山頂である。さすがに月曜日だ。三パーティの女子会だけで、単独の男性がニ、三人遠慮がちに立ってぼんやり景色を眺めている。いずれのパーティも、日ごろの憂さ晴らしだろう、中高年のおばさん達は大きな声で話し、笑いでバカでかい声が広がっている。誰に気兼ねすることもなく亭主をこき下ろしの競演であろうか・・。

 こちらは静かに笑いながら、2等三角点へタッチで挨拶し終わると、ウワミズザクラは蕾硬し、コバノミツバツツジは蕾がやや大きく膨らんでいる状態である。カマツカはまったく蕾も姿なし、イソノキは枯れ木同然の姿であることを確認したが、背の高いマルバアオダモは見上げることすら忘れ、でも、目の前にクロモジは満開を過ぎたようであったなどを観察し終えると、さっさと頂上を後にした。
 下りながら、静かな頂であれば、一人じっくり山頂で16種ほどの確認をしたいのだが、賑やかな雰囲気の中ではその気にもなれないのは致し方ない。やっぱり山頂には11時前迄には来ないと静寂は求められないことをあらためて知った感がしたのである。

 さぁ、気分を変えてこの後は、谷の花巡りとしよう。本日の一番のお目当てであったイチリンソウやヤマブキソウである。前者はこれまた今年が一番の大群生と言えただろう。とりもなおさず、イチリンソウといえば純白の清楚な大ぶりの花びらを知っているのだが、今年はわずかに紅がかって何とも言えない美しさを見せていた個体が多かったような気がした。それに比べて黄色いヤマブキソウは例年に比べてそう多くは咲いていないようだったが、開花時期はこれからだろうから、まだまだ咲いてくれることだろう。

     







ほんのり紅を染めるイチリンソウ     ヤマブキソウはこれからだろう

 もちろん、こちらへの花はこの二種だけではない。ニリンソウ、ヤマルリソウ、ミヤマハコベにマルバコンロンソウやヒトリシズカ、トウゴクサバノオ、ニッコウネコノメソウ、フタバアオイにミヤコアオイなど数えきれない花々が咲き誇っていた。そうだミカン科のコクサギも満開であった。

 こちらはこれでも、まだ物足りないのだろうか、同じような種の咲く場所を追っかけるよう、いやその箇所の開花状態の確認をするかのように、樹木花のゴマギやヤブデマリはまだまだ蕾膨らむ程度であるのも確認し、山野草たちもニリンソウ、ニッコウネコノメソウ、ミヤマカタバミ、イチリンソウなどの満開を確認しながら歩き回って徘徊するのであった。その後にはミヤマキケマン、ムラサキケマンにシロヤブケマンたちがそろそろ終盤となっているようだった。
 もちろん、最初から帰りはバス利用は考えてもいないので、善峯寺バス停での最終便も過ぎており素通りである。最後の花はやっぱり、いつものユリ科ホウチャクソウであった。こちらは寺の四隅の甍にぶら下がる宝鏑に見立てた名であるのだが、薄暗い藪の中で風に揺られる、なよなよしい可憐なホウチャクソウはじっとしてくれないのがいまいましい。

 
 微風の中のホウチャクソウ

 この花を撮れば、後はもう一目散で丘を越え、野を越えての歩きとなって、最後の最後は長岡天満宮八条ケ池畔に日本有数の名所で名高いキリシマツツジが五分咲きだろうか。一昨日あたりから屋台が出始めているようだが、この時間ともなれば今日はもう店終いとなっていた。池の畔のそんな中でもアベックがちらほらツツジをバックに撮影に余念がない。参道の両側が真紅に染まる圧巻の満開となるキリシマツツジのそんな光景に出会えるのは、ニ、三日後だろうから、丁度週末の土日あたりまで何とか期待できそうだ。

 そんなキリシマツツジを見て自宅には18時ころとなってしまい、10時間にもわたる無節操な山歩き花歩きとなってしまった。もっともこのようなことは今日に始まったことではないために、待っていた山の神は慣れたものであったが喜ぶべきか悲しむべきか分からない(笑)。
 最後になりましたが長文駄文にお付き合い有難うございました。

 ホームヘ

inserted by FC2 system