京都西山 ポンポン山 ’17.8.9

 立石橋-釈迦岳-ポンポン山-町界尾根-川久保渓谷-大杉-京青の森-嫁入り道-立石橋

 長い時間迷走していた台風5号だったが、幸い当地での被害は免れたようだ。そして、台風一過となって青空が広がったが、呆れる猛暑にも関わらずにやっぱり山へ行こう。今回はオオバノトンボソウも終わってしまい、取り立ててのお目当てはなさそうだから、まずは山頂へひと登りとしよう。

 しばらく台風の影響で天気思わしくなく、山人も上天気を待っていたのだろう。どっぷりと大汗かいてポンポン山の頂にたどり着けば、平日というのに結構な人だかりで山頂の憩いを楽しんでいるようだった。こちらのそばのベンチに二人連れが座って、すぐに携帯ラジオで野球を流し始めた。静かな山頂が一気に騒音並みの音量であきれ果ててしまった。こちらはやむなく腰を上げて山頂の植物観察としよう。イソノキ、カマツカ、アセビ、ナツハゼなどが多く実をつけている。しかし、ウワミズザクラ、カナクギノキにクロモジ、イヌツゲやマルバアオダモなどはほとんど実の姿は無くなっていた。

 さぞや11月中旬ころには真っ赤に熟して、野鳥たちの餌となる果実の主のカマツカが晩秋に見られることだろうと思い描いていた。その思い出は以前にアトリが多くのハイカーをしり目に、一生懸命カマツカの実をついばんでいたのを思い出していたのだ。今秋もそんな景色を見上げたいものだと期待しながら山頂を後にした。

 下山は今回は高槻市と島本町の町界尾根を久しぶりにとってみよう。しかしながら、この時期である。見るべきものは全くなく、おまけに道は台風の影響だろうか。落ちた小枝がずっと散乱して歩きづらくなっていた。降り立った川久保渓谷をまた登って林道終点の堰堤から川久保尾根の大杉地へととり、峠から大沢集落方向へ下って京青の森の四差路へ登り返して、またまたマイナールートの嫁入り道とした。そして立石橋へ帰り着いたのだ。

 このように、我が裏山の散歩道はただ一般ルートを往復するだけでなく、古道や尾根道に谷筋歩きを繋ぎ合わせるハイクを楽しむように心がけているのだが、もちろん、今回も山頂以外では誰一人として出会うことはなかったのが嬉しい。会うのは植物だけで十分だ、というハイクとしている我が身に今回は喜ばしい出合があったのだ。

 それは、今年のウバユリの咲いたものを見損なっていたのだが、二本だけではあったが一応咲いていたウバユリに出会えたのである。ここでも二本共、葉は完全に食いちぎられていたのだが、なぜか花は食べられなかったようで、どうにか咲いてくれて、もう一本は蕾が真上を向いて直立していた。この花が開きはじめたら次第に横を向いていくようだ。それは種をつくるための大事な蕊を濡らさないためらしい。さらに、横向きに開いていた花が終わるとすぐに上を向くらしい。
 そして、ウバユリの実は上を向いたままで熟していくようだ。実が熟したとき上を向いていると種を遠くへ飛ばすことができ、実には網のような隙間を作り、風が隙間から吹上げ、薄く軽い種を遠くへ飛ばす戦術を考えたようである。このようにウバユリの進化の過程でいろいろな戦略を取り入れるなどした仕組みを出来上がらせているらしい。こんな観察をする山歩きは楽しいの一語に尽きるというものだ。なお、↓右2画像は別地のウバユリの花後の姿を追記したものである。

         
咲く前の蕾は真上を向き、葉は食べられていた     ようやく咲いたウバユリ  8/14追記 左の花後の様子 別地個体   8/14追記 左の果実の様子 別地個体

 次にタカサゴユリが満開で咲いていた。いや、ちょっと待てヨ、タカサゴユリの花には横に紫褐色の筋が入っていたはずだが、この花は真っ白のユリであった。調べるとどうやら『シンテッポウユリ』と呼ばれているようだが、ネット上にはその旨の情報はほとんどなさそうだ。最近は紫褐色の横筋のある元々のタカサゴユリはあまり姿を見かけなくなって、こちらの真っ白なシンテッポウユリ?が多くなってきているらしい。

 そもそも、本来のテッポウユリは沖縄での自生種が4~6月ころに咲くユリの花のようだが、その花と台湾原産のタカサゴユリの交雑種がシンテッポウユリらしいが、これも野生化が激しいようだ。元々はシンテッポウユリは園芸的に造られたもののようである。
 もっとも花びらに紫褐色の横筋をつける本来のタカサゴユリにも中には真っ白な純白のタカサゴユリを咲かせることもあるらしく、今回観察した個体が確実にこれはシンテッポウユリだとの同定は容易ではないらしい。要するに同定が相当複雑となっている種のタカサゴユリは違いが判別しにくい場合も多いようだ。自然界のややこしさを代表する花だろう。なお、タカサゴユリの花は7~9月ころに、横向きに咲くのだが、中には少し下向きに傾くこともあるとされる。

 タカサゴユリの名の謂れは、兵庫県の高砂で最初に発見されたユリと聞いていたのだが、それはどうやら間違いらしく、本来は元々、台湾に自生していたユリが大正時代に日本に入り、その強い繁殖力で各地に野生化したものである。
 その名前のタカサゴは琉球語に由来する台湾の別称で、台湾のユリという意味であるらしいが、テッポウユリに似て葉が細いのでホソバテッポウユリの呼び方もあるようだ。普通のユリは主に他家受粉をし、花が咲くまでに数年かかるといわれるが、このタカサゴユリの花は簡単に自家受粉をし、発芽した翌年には花を咲かせるほど繁殖力が旺盛である。

 なお、ウィキペディアによればタカサゴユリは、「いわゆる連作障害が出やすいと言われ、一時的に根付き拡がっても数年経つと姿を消す場合が多い。種子を多くつけ、種子は新たな原野を求めて風に乗って各地に拡がる。種子がたどり着いたその地が伐採などで一時的に明るくなると生育して勢力を拡げ、ときに群生して大きな花を咲かせるも、数年経つとまた他の地へ旅立つように去ってゆく。」と解説がある。

 
 タカサゴユリがイヤ、シンテッポウユリ満開

 さて、山中においての山野草たちはほとんど見られないのだが、咲いていたのはノギラン、メヤブマオがほぼ終わりで、アキノタムラソウが満開であり、タケニグサの果実化が始まり、コヒルガオやゲンノショウコもこれから咲き誇ることだろう。早く涼しくなってきての秋花巡りが待ち遠しいばかりだ。

 コヒルガオとヒルガオの見分け方  

         
 コヒルガオは花柄の翼を指でさすればわずかな翼があるのが分かる   葉の基部の先は2裂することが多し 

 * コヒルガオだがその花柄上部には縮れた狭い翼がある。(↑中画像)また、葉の基部が耳のように横にはりだした部分が2裂するのが多い。一方、個体数の多いヒルガオには翼は無いのが同定ポイントだろう。

         
アキノタムラソウがいよいよ満開    雌雄同種のヤブマオも満開だ    タケニグサは果実化始まる 

 また、木本類では数少ない夏の花が咲いているも、リョウブは終盤で、ノリウツギが満開状態が続き、クサギがこれから咲き誇ることとなろう。

         
クサギの咲き初めが初々しい     ノリウツギの花期は初秋まで続く    リョウブはそろそろ終盤だ

 この時期だ、樹木たちの果実が次第に熟すころとなってきたが、まだまだ山歩きの中での果実観察の楽しみが続くことだろう。その樹種によってその色あいの進み方も個性があり、その観察も楽しい限りである。 

       
 ウワミズザクラは最後は黒へ  ヤブデマリも赤から黒色で熟す  ウスノキは赤く熟す スノキは赤から黒色で熟す 
       
 ムラサキシキブは紫色に熟す ヤブムラサキ紫の実に毛密生   カマツカ晩秋に赤色に熟す  イソノキ赤から紫黒色に熟す
       
サンカクヅル実は黒色に熟す   アマヅルも黒色に甘く熟す  ナツハゼも黒く熟す、美味  アワブキ 個体数は多くはない

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8/19 8月のポンポン山

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