比良 釣瓶岳から武奈ケ岳 ’17.8.31 

 JR比良-イン谷-神璽谷-北比良峠-広谷-ナガオ-釣瓶岳-北稜-武奈ケ岳-ワサビ峠-中峠-金糞峠-イン谷口-JR比良

 連日の猛暑日だった8月も今日で終わりの8月31日だが、きのうまでとは違いやけに涼しいのが有り難い。でも空を見上げれど好天とは予報はずれではないの?という感じだが、久しぶりの比良をガッツリ歩いてみようと一番電車で向かった。
 歩き始めた朝方(6:30)から青空はほとんど灰色の雲に隠れており、加えて予想もしなかった風がドンドン強くなってきた。はたして本日は雨は大丈夫だろうかと思案してしまうほどである。さて、一日どうなることやら・・・。この強風も小笠原諸島あたりにいる台風15号の影響だろうか。世の中、地球温暖化現象はドンドン悪化状態に向かっているのだが、そんなもんこちらの本日に関係ね~、などといってしまえば叱られるが、とりあえず天気を祈ろう。ところが、歩きだしているとそれでも次第に時間がたつにつれ、それなりの青空が広がってきたようだ。ラッキー!、と現金なものである。

 ところで本日のお目当ては「フウリンウメモドキの真っ赤な果実をみたい」であるのだが、どうせその木に出会えるころは昼近くなることだろうから、それまではこの山域ではほとんど花はなく、花巡りはできないだろうと、歩くばかりの行程となる心としていこうと決めていた。

 歩き始めると、思うのはいつもと同じとなる。樹木は山野草とは異なり、その果実類はいろいろあるハズだが、しかしながら暑い夏も終盤となった時期的なのものだろうか、目についたのは比良山系では抜群に目立つシロモジの実の多さであった。だが、さすがに稜線まで上がればホツツジが満開となっていたのでようやくその花などに目を止めながら歩くことができた。

     
シロモジの実と三浅裂する葉     有毒種のホツツジ

 もちろん、歩き始めあたりではエゴノキ、クマシデ、アカシデ、ウツギにタニウツギなどの実は沢山あったのだが珍しくもない、やっぱりパスとしよう。ところがである、本日のお目当ての「フウリンウメモドキ」の真っ赤な果実だが、残念ながら野鳥が先に失敬済なのだろうか、まったく残っていなくて、ようやくにしてどうにか1個だけが辛うじて見つけられたくらいであったのだが、苦労してここまでやってきた甲斐がなく、いや、やっぱりいつものようについていなかったのだろう。
 この木は名がおもしろいが、果実がウメモドキによく似ていて、風鈴のように垂れ下がることからの謂れがあるのだ。なお、この花は6~7月に花柄は長いが、花は白い5㎜ほどと小いさくて、ほとんど人の目につかないほどで、山歩きの中でも可愛そうなくらい無視されている種の一つではなかろうか。でも、こんな種が我が心をつかむのであり、どなたにでも知られる花木は当然知り得るのは当たり前であって、不遇の樹種を気に掛けたいとの思いで山歩きを楽しみたいとしているのだが、このような思いは殊の外、賛同者のあるのが嬉しい。

 
フウリンウメモドキ(モチノキ科・属) 

 さらに、センニンソウ、ボタンヅル、マルバハギやリョウブやノリウツギなどの終盤が見られたのだが、いつもの興味心はわきもしない。しかし、相当汗が出だすころの神璽谷中間あたりまで詰めればヤマジノホトトギスやヤマトウバナが咲き、さらに上の方まで進めば残り花のイワタバコがよくも踏まれることを免れていたのだナ、と、これまた一輪が待っていてくれた。そして、八雲が原湿原でも残り花となった10輪にも未たずに、それでも可愛らしいサギソウが、今にも草むらの中から飛びだたんばかりの姿で咲き残っていた。

       
 ヤマジノホトトギス ヤマトウバナ  イワタバコ  サギソウ 

 もちろん、今が花時のオトギリソウはここまで上がれば大きく成長できずに風に揺れながら小さくいっぱい広がっていた。花びらや葉表の黒点を注意深く覗けば肉眼でも見えるほどであった。でも、この種は変種が多く、同定にいたるには多様なる植物知識が必要なやっかいな花であろう。小さな花であまりの強風により撮れずじまいとなった。

 もちろん、滝巡りも怠りない。カマブロ滝、神璽の滝、金糞滝に、かくれ滝もそれぞれ訪ねることとした。中でも今年の6月には神璽の滝で滑落死亡事故があったという、その滝ツボ手前で黙とうとし、充分注意しながら滝見物とするのであった。

       
カマブロ滝  神璽の滝   金糞滝 かくれ滝 

 さて、山歩きはどうだったのか。実は今回のコースもどの部分をとってみても何度も踏んでいるために、感動という代物は無いに等しい。できれば「この頂に立ってみて、あの山並みを見た晴れた秋空の日を忘れることはできない。」などというフレーズを表現したい山歩きなれども、この低山の釣瓶や武奈では屁にもならない。
 しかしながら、本日は強風でもあったのか、白山も肉眼でしっかりと目にすることができ、無雪期としては展望にも優れた日となってくれたようである。それに、頂の昼時には2名、7名だけの中にこちらが昼食中に単独の女性がやってきて11名しか姿なく、静かな武奈の頂であったのが、「あ~、今日もまたハイカーの登山欲を充分に満たしてくれた山だった。」との思いでいっぱいとなってくれたのである。

 一番体力を使う神璽谷コースの部分をどうにかやっつけて北比良峠へ上がって、見下ろす武奈の頭に向かって、「待ってろヨ、すぐに行ってやろう!」と勇ましく呟いて、無人の八雲が原から、その先で賑やかな笑い声がするのはパノラマライン下方で10人近い中年男性グループが興じていたが、こちらは道をイブルキノコバへととって広谷の危なっかしい丸太橋を渡り広谷へ降りた。

 そして広場から、サワグルミの大木たちの前よりすぐ右手の斜面に取りついた。今日は久しぶりにいつもと違う谷筋を追ってナガオの稜線へ上がろう。と枯れた細い谷筋のゴロ石道をゆっくりと稜線に上がった。しかし、その稜線に着けばあたりは小さな樹々の藪が多くて踏み跡などすっかり消え、ここはどこかナ・・?、状態であった。進むべき方向の反対側の南東へ少し様子を見に進むと、そこにはいつもの見覚えある紐が下がっており、これで現在地を確認で、先ほどの上がってきた古い倒木の横たわる広場へ戻って一本であった。

 これより、すぐで左に白く丸い札に「平成七年 北比良財産区」の看板が目につく。その先になるとまもなく足元の藪状態は解消し、それより北北西のナガオ稜線歩きは、薄い踏み跡もまばらにある。しかし、あたりの稜線には見どころ無しで、すぐに半時間ほどで釣瓶岳だった。ここの山頂北側下でブナやアズキナシの古木たちに「ご無沙汰!、また来たヨ」と木肌にタッチしてご挨拶とした。なにせ、この方面には今年の大雪時の3月初めに野街道から釣瓶に歩いて以来だったのだ。それにナガオの無雪期歩きは、もっと久しぶりであったので初めてのような気分であった。

 
薄暗い山頂の釣瓶岳
   
     ブナの近くにアズキナシの古木立つ*

                                  *アズキナシにからむつる性の葉はツルアジサイでなく、イワガラミであった。

 釣瓶から細川越より北稜をオオバアサガラやコハクウンボクなどの枝を払いのけながら、フ~フ~いって、1時間もかかって武奈ケ岳に上がるも、人影は少なく、すぐにこちらもお昼(11:25~12:00)としよう。静かな頂は何にも代えがたい御ちそうのように思いながら、スキージャンパーの高梨沙羅ではないが、弁当が「極ウマ」であった。笑

 
武奈ケ岳1214m 
     
左の方に白山も見えた~もう雪はなさそう     南にはコヤマノ岳から蓬莱山

 男女7名が西南稜を駄弁りながら降るのを見て、こちらも半時間ほどで腰を上げ、そのメンバーを追ってワサビ峠から金糞峠へ下ろう。大勢を追い越すのもなんだからとのんびりと進む。あたりにはホツツジの満開が広がっていた。振り返るとなだらかな西南稜の先には左に細川尾根が見え、武奈が「また、おいでヨ」と見送ってくれているような気がした。

 
 第一ピーク上あたりからの西南稜

 それでも第一ピークで二人の女性が立っているのが見える。「ア、お花摘みだな」、こちらの追い越しを待っているのだと気がつき、急ぎ足で追いついて「坊村へ降るの?」と聞けば「知らない、前の人たちに聞いて・・」との声には、やっぱり驚いた。
 相変わらず全員に行程説明もロクにせずに歩くグループがいるようだ。万一道迷い、怪我等でもあったらどうするのか。とよけいなお節介なれども遂、心配してしまう。グループでのリーダーは充分気をつけたいものである。

 ここは、先のワサビ峠で待っていたグループに「坊村へですか・・?」、と聞けば、「イエ、そっちへ」と、こちらが降りようとしている方向を指指すので、「この後の道は歩きにくいですから気をつけてくださいね。」とリーダーらしき男性に注意を促し、さっさと降りて行った。

 しかし、男性はともかく、5人の女性は小さなリュックでおしゃべりばかりらしきハイカーに見え、ほんとうにヨキトウゲ谷あたりは大丈夫だろうか・・。と思ってしまう。でも、そんな他人事など心配してられない。すぐで口の深谷のテン場であった。土曜の夕方はここも所せましの地となることだろう。

 ところが、これより中峠までは結構きつい登り道が待っていることを知る我が足はのんびり歩きに喜んでくれそう。もちろん、着いた中峠も0人である。さぁ、後はJR比良まで降り一辺倒だ。でも、これからが本来のヨキトウゲ谷歩きである。慎重に岩場をやりすごそう。清らかな早い流れの大岩おりなす道歩きはいつ来ても見事な渓谷である。できればこの渓流の苔むす岩場に花でも咲いていてくれるとより感動感も増すだろうに・・。それに芦生杉の巨木が人知れず長い間、ハイカーを眺めているのだ。こんな景色は登山者を喜ばせてくれること間違いない。

     
早い流れの中の大岩を縫うように歩く
芦生杉の古木     

 そして最後の登りというほどではないが、奥の深谷入口のテン場あたりからすぐで金糞峠であった。腕を覗けばワサビ峠より丁度1時間と長くかかったなと思う。どおりで足も喜んでくれていた。「イヤ、待てよ、注意はこれからの青ガレだよ」と声が聞こえるようだった。

 でも、勝手知ったる道、まして、見るべきものは何もなし状態だから、歩くだけのことを考えればよい歩きである。青ガレ横の金糞滝に、やや下のかくれ滝を見て、大山口で汗を拭き、後はのんびり比良駅(15時着)までとした。今日の歩きはほぼ20Kだったようだ。しかし、総体的には充分なる喜びとはならなかったのだが、やっぱり一日も早く秋花巡りや涼しさの中の紅葉期を待つばかりだなぁとの気持ちであった。

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