京都北山 愛宕山の花と果実 ’17.9.4

 今年のミヤマウズラの咲き具合はどんなものだろうか・・と愛宕へ登って来た。実は先月下旬に別の地へもミヤマウズラの偵察にいっていたのだが、葉のみで花は0と悲惨な山歩きだったのだが、ならば場所を変えてとリベンジしたのだが、これまた惨敗であったのだ。

 昨年の花の開花はあまりにも早かったのだが、このランの仲間であるミヤマウズラの花も8月25日には終盤となっていたのだ.。そのため今年の開花は平年並みに戻るのだろうと今日となったのである。ところが、エ~、この辺りに超大群落となっていたハズだがと探すも、ようやく辛うじて二つのみの開花であった。
 さらに葉すらもほとんど見当たらない状態であった。やっぱりこの種も裏と表年があるのだろうか・・?。あれだけ昨年に咲けば花も力を使い果たしたことだろうから、今年は一休みの裏年となったのだろう・・と勝手な判断で、あきらめることとした。それにしても極端きわまりないありさまにびっくりであった。花の高さは15㎝で、花の周りには毛が密生し、一方にかたよって穂状に5~10個の淡紅色の花をつけると図鑑にはあるのだが、今回の個体は3つしか咲いていなかった。

         
葉の斑紋を鳥のウズラに見立てた謂れ    ミヤマウズラ(ラン科シュスラン属)     仕方ない、角度を変えてでも(泣)

 トホホのミヤマウズラの様子であったのだが、今日は8月末からの気温一気下がりで、急登であってもそんなに汗もかかない。山頂の神社温度計は14.5度とこの数字だけで気持ちまで涼しくなってきた。月曜だというのに相変わらず賑やかな人たちがいる。こちらは静かな三角点まで足を伸ばして木陰のベンチでお昼としよう。

     
 愛宕神社(924m) 神社の温度計地、日が当たらず   愛宕三角点地(890ⅿ)

 食後は山野草はもちろん、樹木の果実たちにも目を向けて楽しみながら下山としよう。こちらでは初めて出会えたイケマの果実が目を引き付けてくれた。あたかもオクラのような実の姿だが、残念ながらこちらのイケマは美味しい野菜のオクラと違い、持ち帰ることはできない。なぜならば有毒なために食べられないのだ。

 ツルや葉を切ると白い乳液が出るが、ヘタに触るとかぶれるので要注意である。葉にも茎にもさらには根にも強い毒性を持ち、特に根にはアルカロイド系の強い毒を多く貯えていると言われ、危険な植物のひとつであることも知っておこう。
 どうりで鹿も食べないようで、鹿柵以外の地でもポツンと青々とした葉をつけて、夏の暑い7月ころに面白い姿の白い花を咲かせて元気な状態を見ることがあるのだ。要するに鹿の忌避植物だ。

 もう一つ変わった話をしよう。アサギマダラという綺麗な蝶がいるが、その蝶はキツイ有毒種のこのイケマを食草としているのもびっくりポンではなかろうか。そのアサギマダラの幼虫は毒のある葉を食べ、身体の中に毒素を貯えて鳥などの外敵から自らの身を護るといわれている。遠い昔に地球上に出現して長い進化の中から、思いもしない生きる戦略を身につけるなど、自然界の不思議は面白いことだらけであるのだ。。

         
 イケマ(キョウチクトウ科イケマ属)    果実はオクラの実にそっくりだ!   つる性だが、高い木なくシダにつるむ 

 愛宕山ほど花の少ない山はないと勝手に思い込んでいたのだが、時期を変えると思いのほか咲いてくれる花を目にすることが分かってきた。晩夏から初秋に咲く花では、まずホトトギスの仲間のヤマジノホトトギスであり、またランの仲間のミヤマウズラであろう。
 さらに古い話だが、花の百名山で知られる田中澄江さんが愛宕山へ登られた時代にはキクの仲間のオタカラコウがいっぱい咲いていたとのことだが、その花は今では残念ながら鹿の食害により絶滅してしまったのだろうか。この山域では、黄色く咲くオタカラコウを目にしたことはない。

 さて、本日はその中のヤマジノホトトギスが開花の咲き初めとなっていたことから、これからドンドン開花が楽しめそうな雰囲気を初めてこの山で味わった。なにせこの暑い時期の低山歩きをすることはほとんどなかったのだ。しかし、最近ようやく低山を歩きだしたのだが、この我が身をどう考えればよいのだろうか。
 そしてヤマジノホトトギスの近縁種にヤマホトトギスという種もあるのだが、こちらは近年の山登り範囲が限られてきているために、個体数が少ないといわれるそのヤマホトトギスとの出会いには遠ざかっているのだと思い出しているのだった。トホホ

         
    ヤマジノホトトギス(ユリ科ホトトギス属)     

 他にはツルリンドウが咲き初めとなってきており、こちらの花も真っ赤な果実ができる楽しみのある種であろう。さらに、ミヤマカタバミの閉鎖花にも出会えた。この種は花が終わってからも閉鎖花を出してよく結実するといわれるようだ。

     
 ツルリンドウ(リンドウ科ツルリンドウ属)   ミヤマカタバミの閉鎖花後の実 

 木本類にも完熟する前の段階の果実がいろいろと見られたが、下記以外にもガマズミ、ヤブデマリ、ツルアジサイ、ムラサキシキブ、エノキやカエデのいろいろなどの実が見られた。

         
カラタチ(ミカン科)神社の植栽     ヒロハゴマギ(レンプクソウ科)   コマユミ(ニシキギ科) 
         
オオウラジロノキ(バラ科)葉裏は名ほど白くない、落下の実    ホツツジ(ツツジ科) 

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