湿地帯に咲く花 ’17.9.14

 一か月ぶりのこの地だったが、サギソウ、ヒメオトギリが咲き終わって、今回はサワシロギクもいよいよ満開で方々で咲き誇っていた。ところが本日は何といってもこれを語らないではいられない。それは溜池の水がまったく無くなっていたことだ。普段は水が多くあったり、少なかったりする山麓の溜池なのだが、今日の池には水はすっかり枯れきってしまっていた。昨日も大雨が降ったはずなのだが・・。
 この池を知ってから相当なるのだが、初めて干上がった水なし池となっていたのにはびっくりであった。それよりどうだ。うれしいことには池の中には花らしいものが見え隠れするではないか。すぐに池側へ侵入であったが、足の踏み場もないくらいのサワトウガラシの花だらけである。↓画像の最後のとおり、一面が草紅葉と化していたのが見事であった。。

 この花だが、アゼナの近似種でサワトウガラシといい、京都府RDBでは絶滅危惧種となっており、ずばり超希少種そのものであろう。そして、本日は他にもヒレタゴボウやカワラケツメイという珍しい花々たちにも出会え、素晴らしい湿生植物観察のいい日となってくれた。

 満開の花々たちのまずは大群落のサワトウガラシから入ろう。

     
サワトウガラシ(オオバコ科サワトウガラシ属)  
     
 萼は細長く先は尖る  葉が細長いのがポイント  サワトウガラシの草紅葉

 サワトウガラシは池や沼のほとりの湿地に多いことになっているが、近年ほとんど目にすることはない種である。茎の高さ10〜20cmで、花冠は唇形で長さ5~6mmで、花には10〜15mmの柄があり、萼はほとんど基部まで5裂して先は尖る。また、葉は細く長さ7〜10mmで細く先はとがり、線状披針形の葉を対生する。なお、近縁種の酷似する花でウリクサやアゼナがあるがそっくりの花であり、葉などの違いを知っていないと、現地では同定に苦労させられる種だろう。
 この面白い名前の謂れは、果実が卵状楕円形でトウガラシを思わせることからついた。さらにこの属は、近縁で葉が卵円形のマルバノサワトウガラシ.と二種しかなく、日本に分布の中心があるといわれる。


 続いて、次も出会うのは珍しいが、こちらは北アメリカ原産の1年草であるヒレタゴボウだ。雑草で埋まって本来の役目をなしていないような細い川原の脇に咲いていた。なんと、この花はチョウジタデの仲間のようだ。

     
  ヒレタゴボウ (アカバナ科チョウジタデ属)  

 ヒレタゴボウは水田、休耕田、 それに湿地や溜池畔に生育するようで、 茎はよく分枝して、高さ100~150cm、無毛で、ふつう4稜となる。葉のつく下部に翼がある。この翼(ひれ)が和名の由来。ちなみにタゴボウとはチョウジタデの別名で、こちらの花には翼(ひれ)があることからの謂れのようだが、もうひとつ意味がはっきりしないが、名前は面白いので忘れないだろう。花期は8~10月

 

 そして、最後はカワラケツメイだが、こちらも名前が面白い。漢字は「河原決明」と書くようだ。これまた漢字でも意味不詳だろう。笑  果実の追記(’17.10.8)

          ←画像の説明

果実の豆果はぶら下がらず、
斜め上向き方向につく

豆果は扁平で短毛があり、
黒褐色に熟す

中に四角形の種子が7~12個
ある 

豆果の長さは3~4cm
カワラケツメイ(マメ科カワラケツメイ属)    カワラケツメイの果実の姿   

 カワラケツメイは河原や堤防の日当たりのよい比較的乾いたところからやや湿った草原に群生するが、河原の植物群落は帰化植物が昨今非常に多くなり、在来種が減少している地域が非常に多い。そのため、カワラケツメイも稀少になっている。この種はネムノキの葉によく似ており、また、同じような葉をもつクサネムがあるが、こちらは葉が似るだけで、花の姿はまったく異なり、豆果はぶら下がり、カワラケツメイの豆果は立ち上がるので、花姿と豆果のつき方を知っていれば分かりやすい。
 高さ40~80cmになって群落となり、花は直径約7mmと小さく独特の姿。花はほとんど同じ形をした5枚の花弁であり、他のマメ科の花とは姿が違い、マメ科の花の特徴である蝶形花とはならず、これが本種の特徴となっている。豆果は長さ3~4cmとなって、ぶらさがらずに斜め上向きにつけるのも珍しい。マメチャ、ネムチャなどと呼んで茶の代用にされる。絶滅危惧種に指定されている『ツマグロキチョウ』の食草としても知られる。

 続いて、京都府では絶滅危惧種となっており、湿地に生えるコバナノワレモコウだ。こちらの花はやや遅く終焉となっていたのが残念だった。ワレモコウの近縁種で花は普通白花だが、ときに淡紅色も咲く。高さは充分1mを越すほど背が高くなり、細い茎で微風でも揺れている。葉の縁の鋸歯ははっきりとした三角形となる。

     
  コバナノワレモコウ(バラ科ワレモコウ属)   

 山野草の花はいよいよ秋花となってきたので、いろいろ楽しめるのだが、多くありすぎ主だったものを写真だけ並べよう。

     
 サワシロギク 満開多数咲く ミミカキグサ 満開   イトイヌノヒゲ まだまだこれから
     
 オオフタバムグラ 満開群生多し  イヌコウジュ 咲き初めこれから  センブリの草体

 他に、サギソウ、ヒメオトギリやブタナがまだ残り花を見せ、サワヒヨドリ、サケバヒヨドリ、ヒヨドリバナの仲間たちはまだまだ蕾でこれから咲き初めるだろう。ヒメジソが咲き初め、キンミズヒキは終焉で、イタドリは満開だったが、イヌタデなどタデ科類はほぼ終盤となっていた。ガンクビソウは満開であったが、地味すぎて・・。センブリの草体にも目がいったので10月以降が楽しみだが晩秋にまでやって来れるだろうか・・。


 さて、最後に木本類の果実等についても見てみよう。

     
 サルマメ(シオデ科) ウメモドキ(モチノキ科)  アオハダ(モチノキ科) 
     
 ガマズミ(レンプクソウ科) ヘビノボラズ(メギ科)   シャシャンボ(ツツジ科)
     
 サワフタギ(ハイノキ科)  イヌザンショウ(ミカン科)  マルバアオダモ(モクセイ科)

 他にもサカキはまだ緑色のままで、黒紫色に色が変わって熟すには11月から12月となるだろう。イヌツゲも緑色のままで黒色に変わって熟すには10月を過ぎるだろう。アオツヅラフジの実もまだ花から果実ができたばかりで粉白を帯びた黒色に熟すには10月を十分まわることだろう。それに、この地に多いジンチョウゲ科ガンピの果実は乾いて枯れた核果となり、萼筒に包まれるにはもうしばらくであろう。

 歩いているなかで、クロミノニシゴリやサワフタギというハイノキ科の樹木葉だけを糧に成長するとのホタルガがあちこちで飛び回っていたにはびっくりだが、やっぱりハイノキ科の樹木があちらこちらに生えているのだから当然だろう。
 それにツマグロヒョウモンの交尾が目の前で見られたのだが、しばらく見てそのまま静止が長いために、指で羽をつついてみるもそれでもジッとして動かなかった。邪魔してしまった~ゴメン

     
ホタルガ 飛ぶと横線の白色がきれい    ツマグロヒョウモンの交尾、離れてくれず

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