京都西山 目出度い花キチジョウソウ咲く ’17.11.10

 今回はポンポン山の紅葉狩りをしようと出かけたのですが家を出るとすぐに、そうだ、キチジョウソウが花時だろうと思いだし一目散でした。してやったりの大満開となってたのです。たまにはラッキーなこともありますね。

 さて、吉祥草といって、吉事があると開花するという伝説に由来する花であります。野に咲く花の図鑑で見られるように、山麓で咲く常緑の多年草であるため、冬季となり山肌に草が少なくなって消えてしまえば、この花の葉は鹿にも目につくようで、ややもすれば西山では鹿の食害の一番手となってしまっており、年によってはすっかり葉毎丸坊主となりかねない種でもあります。

 キチジョウソウはキジカクシ科キチジョウソウ属で1属1科であり、関東地方から九州にかけて分布し、林の中や林の縁などに生えるといわれます。草の長さは10~30cmと長くなり、花の茎は8~12cmとなると図鑑にあるとおり、長く先の尖った葉が繁る中に隠れるように咲く、面白い姿の可愛らしい花に見えます。

 茎は淡紅紫色であり6裂する花冠の外側は濃い紫色ですがあまり見えず、内側は紅紫色で白っぽく見えます。それにしても何とも穂状で花弁が大きくカールする姿が独特な花でしょうか。更に詳しくいえば、下部の方に淡紅紫色の花柱が6個ある雄しべより長くあり、いわゆる両性花です。
 そして上部には雌しべが退化した6個の雄しべだけの花冠が並びます。花後には暮れから正月すぎのころとなれば、この下部の部分の両性花から赤くなった果実の先端に花柱が残る実(直径約1cmの球形)が見られることとなります。しかし、前述のように草も少なくなり、食べ物探しで目に留まってしまう冬場には、鹿が葉も実も食べてしまうために、山歩きの人たちが赤い果実を目にできるには鹿との競争で出かける必要が生じます。ちなみに当方は赤い果実は見たことがないのです。トホホ

         
    キチジョウソウ(キジカクシ科)吉祥草     
         


 続いて、今回の紅葉狩り(といってもわたしは赤や黄色くなった樹木たちの景色を見てきれいだねというだけでなく、さらにその種はなんだろうか・・?、とつっこんでいわゆる植物観察が主体のものでありますので悪しからずご了承ください。)で、目についた主たる樹種を貼りましょう。
 もちろん限られたページ上からも、名前だけで樹木の目立つ特徴の解説等は最小限となりますがご容赦ください。なお、紅葉はどうしてなるの・・?、との初歩的な紅葉のメカニズムなるものを別紙でまとめていますからこちらからご覧になってくださいませ。

       
ニシキギ(ニシキギ科)枝に翼あり、無いのがコマユミ  カマツカ(バラ科)材が硬く鎌の柄などに使われ、牛の鼻環に使われウシコロシとも
       
アワブキ(アワブキ科)葉の側脈が20~28対と多くきれいに並ぶ  ウリハダカエデ(ムクロジ科)若木の樹皮がマクワウリに似ていることの名前 
       
イヌブナ(ブナ科)ブナと違い測脈が14と多く、葉裏の毛は黄葉時も多く残る タカノツメ(ウコギ科)葉が3小葉で、5小葉はコシアブラ  
       
シラキ(トウダイグサ科)材が白いことからの名  サンショウ(ミカン科)山椒は棘の出方で 名が分かり、これは対生
       
カツラ(カツラ科)30mと高木になり、山形には幹回り20mの大木もあり*1   カナクギノキ(クスノキ科)葉はヘラ型、右は冬芽で丸いのは花芽 
       
 クロモジ(クスノキ科)葉は単葉だが、シロモジの葉は三浅裂するのが違い ムシカリ(レンプクソウ科) ヒトツバカエデの葉に酷似する
       
ザイフリボク(バラ科)神主の采配時の四出にそっくりな花を咲かす   コバノガマズミ(レンプクソウ科)紅葉は赤、黄色ばかりでない特異色の暗紫色も 
       
 アカシデ(カバノキ科)イヌシデに酷似  ケケンポナシ(クロウメモドキ科)鋸歯浅い 水声の道は昼でもなお暗しで葉青く、ツルアジサイ(アジサイ科)鋸歯片側30以上*2 

 

 *1 カツラの落葉期にはそばを歩く山歩きの方には、甘い香りで砂糖を焦がしたような良い匂いを感じたことのある登山者も多いでしょう。カツラがキャルメラ状の甘い香りを出すことは広く知られています。さて、この正体ですがカツラに含まれる香りの原因物質は『マルトール』という物質で、この物質は独特の香り、甘味を助ける働きがあるようです。
 そして多くの食品に添加されているようです。カツラばかりでなく多くの植物に含まれており、たとえば朝鮮人参やモミを含む針葉樹にも含まれていることが報告されているとのことです。そのマルトールはカツラの緑色の葉には少なく、秋の黄葉、紅葉となるにつれて含量が多くなり、結果的に葉が老化段階に入ったり、乾燥したりすると増加するようで、いくら黄葉していても落ちたすぐの葉には香りは薄いようで、時間がたって乾燥してくれば、醤油のような匂いがしてくるようです。(以上は”日本植物生理学会みんなのひろば”を参照させていただきました。)

 *2 蔓性の樹木であるツルアジサイとよく似たイワガラミの相違点ですが、花時は装飾花が前者はふつう4個で、後者が1個だけであり、その点では離れていても一目瞭然です。ただ、花のない時の見分け方では、葉の鋸歯が粗く片側に20個以下、また、もむと青臭いのがイワガラミというのが分かりやすいでしょうか。


 本日は8時に家を出たのだが、いろいろな方角へ徘徊をくりかえし、ポンポン山には13時前に着き、ゆったりと遅い昼を済ませ、さぁ、降りようかとしたところへ知り合いの方が到着されて、半時間ほども話し込んでしまったので、下山スタートが遅くなった。
 その下山道はいつものコースであるが、台風21号以来初めてのために、登山道沿いの被害にもびっくりしながら、また植物観察も楽しんで、結局総距離約26Kほどの道のりには自宅到着が17時過ぎとなり、9時間ほどもかかってしまい、あまりにのんびりしすぎたと反省だった。

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