比叡山に咲く花 ’18.8.7 曇

 立秋の候、記録的な猛暑日が続いていますが、皆様お元気でいらっしゃいますか。本日8月7日は「立秋」で、まさに秋の始まるように感じる気配の一日となりました。

 さて、そんな暦どうりとなって涼風ただよう比叡山へ花巡りとしました。歩き始めますと、山麓あたりにまで民家が散らばっておりますがそこにはタカサゴユリが咲いています。このタカサゴユリは今ではどちらの高速道路を走っていてもよく目にする夏の白百合風景ですね。

 
 タカサゴユリ

 タカサゴといいいましても兵庫県の高砂市ではなく、元々、台湾原産の帰化植物のようで、その台湾を指す別称「タカサング」に由来するとの謂れです。昨今ではタカサゴユリは沖縄方面原産のテッポウユリによく似ているとのことですが、それより大型のようです。そして、そのテッポウユリとタカサゴユリから人の手が入ったシンテッポウユリという花がちまたへ広がっているようです。ちょっとややこしいですね。

 わたしのその後の木陰の山中では期待していたミヤマウズラの様子見でした、こちらでは昨年は裏年でさっぱりでしたが、今年はどうやら何とか咲いてくれそうで期待できそうです。でも今日の花は残念ながらまだまだ蕾始まったばかりのようで、開花には後一週間はかかるのでしょうか。さて再訪は如何なることでしょう・・?

 
 ミヤマウズラ

 そしてさらに木陰の中に山道は心地よく、それでも次第に汗を吹き出しながらの山歩きとなります。見晴らしの良い展望地あたりまでくれば、もちろん持参の冷え切ったボトルで喉を潤しながら山並みを眺め、心ゆくまでゆったり広くなった感じがします。そして少しの歩きのその先で、またホッと一息つけば目の前にウバユリが満開となっていました。
 さて、ウバユリといえば、名の謂れの問題のその葉ですが、咲く場所、日当たり状況や栄養度合い等で早く葉が枯れたり、長く青々といつまでも枯れないものもあるようです。↓画像の右が名前の謂れらしい葉の様子でしょうか・・。

     
 ここのウバユりには緑の葉が残るが・    こちらは先日見た枯れた葉のウバユリ

 このウバユリを撮っていたところへ女性お二人が寄ってこられ、「この百合の花の名は何だったかナ~」と声がします。すぐに名を言って、ついでに名前の謂れも話してみましょう。「ウバユリは漢字で書けば(姥百合)で、 姥とは年老いた女性のことですね。そのウバユリの名は花が咲く頃には葉が枯れてなくなっていることが多く、歯が欠けた姥(ウバ)に例えたとのことのようです。」、と話して笑って聞いていただきましょう。

 そのようなところへまた他のご夫婦が「この花の名を教えてくれませんか・・」と元気な声で聞かれます。さすがに比叡山、このあたりは観光地のためにいろいろな方々が交差されて喧しいです。

 最初の同級生二人連れの方も元気な方で、その後もいろいろな話をされます。どうやらこの山の下でかって○○高校の先生をなさってたようで、今は「坂本や比叡山などで観光案内もやってる。」とのことでした。どうりでいろいろと話が広がるハズですね。
 もちろんこちらも「山の案内人、とりわけ今では花の案内が主です。」と聞いていただきましょう。「へ~、わたしも立山の剣へ登りましたヨ!」とびっくりする話が聞けました。どなたでも若き頃の山登りの思い出を話される時の表情がイキイキした顔つきをされているのが印象的で素敵です。

 長い立ち話でしたが、「いつまでもお元気でお歩きくださいね、またお会いしましょう。」と別れた後は、山の野草や樹木の果実類の観察を楽しみ続けます。まずはイケマが満開の盛りをすぎようとしていました。つる性のイケマにはいろいろ聞きなれない話があります。

 きれいな蝶のアサギマダラの食草がキツイ有毒種のこのイケマやキジョランなどの葉です。ガガイモの仲間の植物には有毒なアルカロイドが含まれており、これを体内に蓄積することによって鳥などの捕食から逃れることが出来るようにとのことです。イケマは遠い昔に地球上に出現して、長い生命の進化の中での知恵らしですね。わたしには思いもしない生きる戦略を身につけるなど、自然界の不思議は面白いこといっぱいのようですから、自然観察の醍醐味がまさにこれだと感じるのです。。

 もちろん、昨今の野山では増えすぎた鹿などの害獣で、植物好きなわたしたちを困らせています。ところが、こちらのイケマは有毒の持ち主のために、鹿除け柵の外でさえもただポツンと青々とした形きれいな葉姿を多くつけ、白花をいっぱい咲かせていることができるのですネ・・。

 
イケマは有毒種です・・

 山野草類の最後の方でも、まだまだまだジリジリと頭を焦がすがごとき炎天下の中に、オオキツネノカミソリの残花が咲いていました。その近くには奇妙な花色姿のマルミノヤマゴボウも、葉などを鹿の食害に耐えながらその姿を残してくれていたのでした。

         
残花のオオキツネノカミソリ        毒々しい色あいのマルミノヤマゴボウ 

 もちろん、この間の歩きでは木本類の一部の残花や果実たちがいろいろ楽しめました。

       
 ホツツジが可愛く・・  ノリウツギはまだ咲き続け・・ アブラチャンの実は1.5cmと大き目   マタタビの面白い実 *1
       
 ミツバウツギの実も変わってる~  イヌガヤの実は珍しい~ *2 ヤマコウバシ *3    この葉はアマヅルで酷似種はサンカ
      クヅルだが同定は容易ではなさそう 


*1 マタタビ科のマタタビの実には「かぼちゃ型」と「どんぐり型」とがあります。↑の写真は前者で、いわゆる虫こぶ又は虫エイと言われます。よく言われるマタタビ酒には両方とも使われます。花の開花時期に「マタタビアブラムシ」が寄生し、果実は正常に成長せず「かぼちゃ型」にこぶ状に成長した果実となります。もっとも10月頃には赤っぽくなって熟しますが、だいたい熟す前に落ちてしまうようです。また、正常な姿は細長い実になる方で長楕円形で2~3cmと細長く、いわゆるどんぐり型となり10月頃には橙黄色に熟します。

 もう一話ですが、またたびは「猫がよろこぶまたたび」としても多くの方がご存じでしょう。わたしも山から枝葉を少しばかり持ち帰って近所の猫へ遊ばせた経験があります。ネット上にも次のような記述がありました。

「ネコ科のライオンやトラなどの大型動物類も、またたびの臭いに恍惚を感じ、強い反応を示すために『ネコにマタタビ』という言葉が生まれたとのことです。このように猫にまたたびを嗅がせると興奮・陶酔状態になり、唾液分泌が促進します。これはまたたびの葉、茎、実に含まれている揮発性の物質(マタタビラクトン類)が、猫の神経を刺激したり麻痺させたりして、性的快感を覚えさせるような成分が出てくるからだといわれております。なお、このまたたび以外にも、同様にネコ科の動物に恍惚感を与える植物としてイヌハッカ(キャットニップまたは西洋マタタビ)がある。」とのことです。


*2 イヌガヤはイチイ科イヌガヤ属の常緑小高木の針葉樹ですが、この木の果実はわたしにとっては初見でした。3~4月に開花する雌雄異株です。調べますと「果実は翌年10月頃に褐紫色になって熟します。種子には油が含まれており、かっては果実から油を絞り「灯明」に利用したようです。また、果実は苦くて食用にはならないとのことです。」と解説がありました。このイヌガヤの雌株は今後も定点観察としたく思います。


*3 ヤマコウバシはクスノキ科クロモジ属の落葉低木です。和名は枝を折ると香ばしい匂いがすることからの謂れで、冬芽はクスノキ科唯一の葉と花が一緒に入る混芽であることも特徴でしょう。さらにもうひとつ面白い話題のある樹なんです。それは『日本では雄株は見られず、雌株しか見られないのに、10~11月ころに7mmほどの球形の黒い果実ができるという、なんともミステリアスな樹木』であります。

 この木は春の花もほとんど目立つこともないのですが、山肌に落葉広葉樹が葉を落とす冬枯れの頃となりますと、さあ、わたしの出番だといわんばかりに地味な枯れた葉をつけたままで春まで頑張り続けるので、どなたであろうとも3月頃の山歩きの中で「あの枯れた葉の木はなんというの・・?」と声の出る木であり、かくいうこのわたしもこの手法でいち早く覚えられた想い出の樹種であります。さぁ、まだヤマコウバシの木をご存じない方も、ぜひこのやり方で正月以降の雪のない里山の山肌で見つけてみてくださいね。

7/20ヤマユリ ホームヘ 10/2ミカエリソウ、マツブサ






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