東山の植物観察 ’19.3.6 曇のち雨

 雨は夕方からだとの予報で早朝からの観察としよう。3月6日今日は『啓蟄』である。今年は例年より暖かったのだが、やっぱり暖かいのは虫ばかりでなく人間様もありがたい。京の四条通も朝からもうそぞろ歩く観光客の人混みで賑やかだ。円山公園の桜の大木あたりまで行っても、もちろん着物姿が多く見られ寒さも緩んでようやく若い観光客の皆さんもやれやれの気持ちではなかろうか。

 さて、こちらはそんな街角から離れて東山を眺めながら、服部嵐雪の句である『蒲団着て寝たる姿や東山』を口ずさみながら、気持ち良く山道に入ろう。するとびっくりするような大きな音が飛び込んできた。たしかに昨秋の台風21号における大被害の爪痕は半年過ぎるも、登山道の整備もままならない状況が続いているのだ。
 この音はチェンソウの喧しい作業音のようだ。森の聖は深閑さを壊され可哀想だがしばらく辛抱してほしい。だが、人間様もそれを騒音ととらずにそのような現象を感謝の気持ちに切り替えながら、山歩きを楽しませてもらいたいものだと考え、そうして今日も心静かに植物観察をさせていただこうではないか。

 見上げても今日ばかりは青空はなく午後には雨予報なのだから、空模様ともども心なしか気持ちもうすら寒い。しかし、目に入ったのは薄黄白色を帯びた咲き初めのニワトコが、枝先の方の高いところで一輪だけ微笑んでくれていた。そばにあるのはまだまだ蕾ばかりが並んでいたのでこれからが楽しみな景色となることだろう。

 
ニワトコの咲き初め (レンプクソウ科ニワトコ属) (別名 接骨木) 

 この木は古くからいろいろ生活の場で利用されてきた有益な樹木であったそうな。

 所によっては小正月に魔除けとして飾り物の材料に使われたようだ。また、新葉は山菜として食用にされていたらしい。ただ、多食したことによる中毒事例も発生してるようで注意したい。真っ赤になった果実は焼酎漬けの果実酒の材料にされるとのことである。また、別名ともなっている接骨木(せっこつぼく)は民間薬として使われ、枝や幹を煎じて水あめ状になったものを、骨折の治療の際の湿布剤に用いたといわれる。それに、樹皮や木部を風呂に入れ、入浴剤に利用していたようだ。


 続いてはシロバイ(ハイノキ科ハイノキ属)の果実だ。この種は真夏に開花するのだが、とりわけ晩夏の開花はシロバイと同じ常緑組の仲間以外は比較的少ないだろう。開花すればすぐに果実化が始まり、そして成熟までには翌年の秋というロングランとなる。このような点ではさらに珍しい種ではなかろうか。シロバイはハイノキ科だが、この科はハイノキ属1属からなり、落葉樹と常緑樹に分かれる。
 とりわけ、関西のハイカーにはサワフタギ、タンナサワフタギなどの落葉樹がよく知られている。今回のシロバイは常緑樹で比較的分布域が広くなく、京滋では常緑のハイノキ科の名はそんなに売れてはいないようだ・・笑。ちなみに東山でも散見する仲間のクロバイの開花は4~5月であり、シロバイとの葉相違点ですぐ分かるのは、クロバイの葉柄は1cmであり、シロバイの2~4mmのほとんど目立たないとの違いだろう。。
 このように京都や滋賀ではハイノキ科の常緑組は少ないが、それでもシロバイは京都東山では部分的に多数かたまって見られるところがある。そもそもこれらのハイノキ科の多くの種にはアルミニュウムが多量に含まれ、焼いて得られる灰は染色の焙染剤に用いられて、灰をとる木から「灰の木」より「ハイノキ」と名がついたといわれるようだ。

     
 シロバイ果実(上の果実は前年夏に咲いたものの実で、今秋には紫黒色になって熟す)  
     
 シロバイ葉表、葉身4~6cm幅1.5~2cm柄目立ず    葉裏初め細毛、のちに無毛になり、縁は波打つ 

 以上シロバイについて簡単にふれてみましたが、開花から始まって果実の完熟するまでの画像による様子についての詳細な説明はこちらでしていますので興味ある方はご覧ください。


 冬芽も見よう。イヌビワとヤマハゼが目についた。高い枝先のためにハッキリ見えず残念だったが・・。

     
イヌビワ(クワ科イチジク属)の冬芽    ヤマハゼ(ウルシ科属)の冬芽 

 樹木の開花はまだほとんどなく、アセビがようやく咲き初めとなってきてたくらい。

 
 アセビ(ツツジ科アセビ属)

 山野草では常緑の多年草で1種のラン科が見られた。寒さの中を頑張って越したようで、今年も元気に夏には開花してくれるだろうと心の内で拍手しながら別れることにした。さぁ、雨の降って来ないうちに家路につこう。

 
それはコクランだった~♪ 

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