早春のポンポン山を歩く ’19.3.24 晴のち曇

 今年もようやく待ちに待ったシュンランがまた春を運んでくれました。咲き初めの花はいつ目に入っても心ときめかせます。野山での再会をいつまでも願いたく感じるのはハイカーの永続的な願いでしょうか・・。

 
 シュンラン(ラン科シュンラ属)

 長いポンポン山通いですが、今回初めて目に飛び込んできた花はヒイラギナンテンでした。この花は街路樹・庭木・公園等に植栽されて昔からよく見かける花木ですが、どうやら日本産でなく中国~ヒマラヤ、台湾原産で江戸時代に渡来した常緑樹のようですね。
 生活の中では珍しくもなんでもない種なのに、わたしが取り上げましたのは、外来種で自然の中において咲いていたのが初見だったからなのです。多分、持ち込みか理由の程は計りかねますが、おそらく野化したのでしょう。この付近もこれまでから何度も足を運んでいたのにどうして目に入らなかったのか摩訶不思議です。どうやらたまたま開花時にこの道へ登っていなかったのでしょうか・・。
 そばにもあった幼木のヒイラギの葉にそっくりで、鋸歯となったするどい棘が目立ちます。まだうすら寒いこの時季に総状花序の黄色い花を咲かせて、結構人の目をひきますね。下界ではこの植木も素通りでしたが、山の雑木林の中でなら雰囲気もいいので、この後も観察を続けて見たいと思います。

 
 ヒイラギナンテン(メギ科ヒイラギナンテン属)

 サラサラと静かな水音の中にこれまた今年も咲いていましたタチネコノメソウです。近年は荒れ放題の谷間ですが、人の姿もなく心行くまで花と戯れましょう。以前は他にも多くの種が咲き誇ったのでしたが、鹿や猪の害獣被害が大きく、さっぱり寂しくなってしまいました。なんとも花好きなハイカーには居たたまれません。でも、わずかに咲き残る種だけでも優しく愛でる気持ちを無くさないようにしたいものです。

 このタチネコノメソウは萼裂片が緑色で平開しますがその部分より、雄シベの先の花粉を造る役目の葯の色が黄色でこの部分が目立ちます。雄しべは8個ありますがネコノメソウ類の葯8個は普通ですから余談です。それより花は二つがやや離れた位置で咲く姿もほかの仲間とは違いでしょうか。見た目がなよなよとした弱弱しそうなところが魅力でしょう・・。

     
タチネコノメソウ(ユキノシタ科ネコノメソウ属) 

 同じくネコノメソウの仲間であるヤマシロネコノメもまだ咲いていました。こちらはネコノメソウの仲間の中では、ヤマネコノメソウとともに最初に見られる早咲き種でしょうか。そして、肝心なことは京都府RDBでは『絶滅危惧種』となっている超希少種であります。ぜひ、この点を知ってその注意点等を同じハイカー仲間にも教えてあげて下ださいね。
 1999年に新種発表されたものでまだ比較的新しい種ですが、「コガネネコノメソウと似ているが萼片は緑色鐘状で、円形で萼筒とほぼ同長である。萼片には毛がまばらにある。雄ずい、花柱は萼より突出し葯は黄色。花の直径は約4.6mmと大きい。」と京都府のRDBに記されています。
 約4.6mmと大きいとはいえ、ネコノメソウの中では大きいとのことであり、5mmもないほど極めて小さな花であります。観察時には踏みつけ等厳重なる注意が必要で、不注意ではすぐに消えてしまいかねません。よってオーバーユースも絶大な脅威となるものですから、ただ、「友が行くから俺も行こう・・」くらいな、植物にほとんど無関心なハイカーの皆さんは歓迎されないでしょう。とにかく充分なる注意の上で愛でることとしましょうね。

     
 ヤマシロネコノメ(ユキノシタ科ネコノメソウ属)   

 スミレもアオイスミレに続いて当地ではナガバノタチツボスミレもようやく咲きましたが、ありふれた種でほとんど関心はないのですが、今日のこの時季はこれしかスミレ類も無しでした。でも、西山にもこれからいろいろなスミレも咲いてくれることでしょう。ところで、今年は雪が極端に少なかったのですが、雪の少なかった割には3月後半はそんなに温度も上昇せず、寒い戻り寒波もあったりしていることから、花々の開花は昨年よりは遅めの感じと今となっては思っています。花巡りのご案内には気温の影響が大きなことから一喜一憂するほどヤキモキ、右往左往しています。涙

     
 ナガバノタチツボスミレは根生葉は丸っぽいが茎葉が細長いのが名の謂れ、左の細長い葉が茎葉、右が根生葉 

 次に樹木も雌雄別株もあって、どの木にもすべて果実ができるわけではありません。次の二種も典型的な雌花と雄花がそれぞれ異なる株に咲きます。果実は当然雌花の株にしかつきませんよね。

       
 イヌガシの雄花もほとんど終盤 小さな雌花の株はそばでなく離れてあるよう   ツルシキミの雄花はびっしりつく まばらな雌花だが、この雌雄はそばで咲く 

 さて、樹木観察は面白い話が盛りだくさんありまして、植物好きなハイカーには喜ばれます。最初はサネカズラ↓左画像で、樹皮からとった粘液を整髪に使ったことから美男葛の別名があります。サネカズラはつる性ですが、このつるは左巻きですね。さぁ、なぜ左巻きかですが、次の要領でやってみてください。

 両手のひらを手前に開き、まず、親指だけを握らないで、ほかの四本指を握りましょう。さぁ、葛の巻き上がり方を見てどちらへ向かって上がっていますか・・と眺めてください。↓中画像のカズラは左上に向かっていますよね。よってサネカズラは左巻きだということになります。

 このように植物観察会はフィールドでお遊びしましょうね。でも、そのお遊びでもって帰宅後に図鑑やネット情報を確認する習慣がつけば、より植物への関心度の増すこと請け合いです。そうして次回の山歩きにはぜひ、お試しあれです。笑

 もう一種残っていました。何度もこちらのサイトでは取り上げていますが。↓右端画像はクスノキ科クロモジ属のヤマコウバシです。こちらの名は植物学者の牧野富太郎氏が名付けたらしいですが、葉の展開後に葉や枝の匂いを嗅げば山香ばしさがよいことからの謂れといいます。
 最もクスノキ科は本家のクスノキ等はもとより良い香りがします。それにクロモジも香りが上品なことから、京では高級和菓子の爪楊枝に用いられる話題は日本人はどなたにでも知られるほどですね。もちろん、ヤマコウバシの面白情報は他にもいろいろありますよね。いずれにしてもわたしの『山歩きと花歩き』にご参加いただければ、フィールドでのお遊びはもちろん、いろいろな楽しみ方のご紹介をさせていただきます。是非ご一緒しましょう。ご連絡のメールお待ちしています。

         
 サネカズラはつる性植物です。    つる性は左巻きなんですが・・    ヤマコウバシは話題多し種

 まだ寒さも感じる季節ですから冬芽についてもご覧いただきましょう。

       
 スノキ(ツツジ科スノキ属) ウスノキ(ツツジ科スノキ属)  アクシバ(ツツジ科スノキ属)   カナクギノキ(クスノキ科クロモジ属)

 最後に①タラノキの冬芽も面白いでしょう。葉痕はU字型で、維管束痕は30〜40個と多いです。具体的な解説はまた今度お会いした時にしましょうね。②と③は後しばらくで開花が見られることでしょう。

         
①タラノキ(ウコギ科タラノキ属)    ②アカシデ(カバノキ科クマシデ属)     ③ウワミズザクラ(バラ科サクラ属)

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