センボンヤリとハルリンドウ ’19.4.9 晴のち曇

 珍しくお天気が続きそうだ。だが、明日は全国的に雨、しかもまたまた寒の戻りのようである。ならば今日は山へ入らなければならない。笑、ところで4月中旬ともなればそろそろセンボンヤリが咲くのだろうかとふと気になった。センボンヤリの花に出会ってから相当古くなってしまったようだ。その数年は北陸、信州方面の山々に通いその花にハマっていた。しかし、その後はすっかり忘却の彼方へいってしまってた。ところがこの山域で閉鎖花を見つけてから、やっぱり開放花である早春の花にも出会いたいとのことでその日が本日となったのだ。

 
センボンヤリ(別名ムラサキタンポポ) 
 
センボンヤリ(キク科センボンヤリ属)開放花の葉には切れ込みはない

 春の花は直径約1.5cmで、高さは5~15cmとなっているが、ここでは今日はまったく咲き初めだった。でも、ようやくひと花のみの開花であり、他7輪はみな蕾ばかりであったから、咲いていたのもまだ5cmほどで背が低い。そのようなことから別名の謂れとなった肝心の花(頭花)裏が赤紫色を帯びていることも確認してみるとたしかに紫がかっていたのだが、その色あいを撮ることは背が低いこともあって至難の業であり、あきらめざるを得なかったのが惜しまれた。もちろん、9月末ころからの秋の閉鎖花は背が30cmほどにもなったり、葉も羽状複葉になったりして、春の開放花の姿とはまったく変わる点など一年に二度楽しめる面白い花の代表格だろうと勝手に思っている。


 続いて、ハルリンドウの開花が始まっていた。ただ、これまた陽当り良しのこの一輪のみだった。ハルリンドウを見れば、やっぱり仲間のフデリンドウとの違いを語らないといけないだろう。

『ハルリンドウとフデリンドウとの見分け方』

 ・ハルリンドウは根生葉が大型で地を這うようにロゼット状となるが、フデリンドウの根生葉は小さく、ロゼット状とはならない。ただ、実際の根生葉そのものの姿はなかなか見分けにくいのが難点だが・・
 ・一番見分けやすいのは花のつき方で、ハルリンドウの花茎は数本が集まって立ち、先端に1個の花を上向きにつける。一方、フデリンドウの花は茎の先に数個ずつつける点が大きな相違点であろう。。

 
ハルリンドウ(リンドウ科リンドウ属) 


 こちらの山域では春はまだ浅く、花の開花は限られている。そんな中だが、スミレ類はシハイスミレ、ニオイタチツボスミレ、ヒメスミレにもちろんタチツボスミレと珍しきスミレはないのでそう喜べない。でもありふれたスミレばかりの山の散歩道となっているが、いかんせん、これらのスミレは飽きた心情だったといえばスミレが可愛そうだろうか・・。やっぱり『山路来て何やらゆかしすみれ草』と口ずさむ散歩道としよう・・。

 
なんとか可愛らしいシハイスミレ咲き~ 


 でも、本日の花の数ではショウジョウバカマが最多であった。この仲間にはシロバナショウジョウバカマやツクシショウジョウバカマがある。シロバナショウジョウバカマも以前はここもかしこもといろいろ方々で見られたが、昨今は個体数を減らしているのだろうか。今日もその旨意識して探したが出会えなかった。
 そうそう、九州の山々に咲くといわれるツクシショウジョウバカマの思い出は薩摩富士の開聞岳にあった。そこで出会ったツクシショウジョウバカマが忘れられない。こんな想い出花を思い出しながらの植物観察もいいもんだ。

 
ショウジョウバカマ(ユリ科ショウジョウバカマ属) 


 さて、草本類はこれくらいにして、木本類に移りたい。最初はまだ冬芽そのものを探すが、流石に冬芽の活動もすすんでおりその時期も過ぎようとしている。ならば、冬芽と関係のある枝の面白い姿をご覧いただこう。今回目に入ったのはタカノツメとアオハダの短枝だったが、偶然だが、たまたま同じ木の冬芽でないの・・?、と声の出そうな短枝である。

 ①の↓画像は短枝化した本年枝の冬芽であり、葉の展開に入ろうとしている直前状態であろう。また、②のアオハダだが、こちらは短枝がよく発達するのが特徴といわれるが、この短枝から花や葉が束生するのだ。とりわけアオハダの短枝は目につきやすく、わたしはこの木は何だろう・・?、と思った時にはこの短枝を探して、「この短枝がポイントでアオハダです」と案内することにしている。なお、①と②の違いは①の短枝基部が曲がってから上を向き、②は最初から空を向くのだ。

     
① タカノツメ(ウコギ科タカノツメ属)    ②アオハダの短枝(モチノキ科アオハダ属)

 次に冬芽から葉や花の展開が始まった状態を見よう。

         
ヘビノボラズ(メギ科メギ属)互生、棘一対*     ゴンズイ(ミツバウツギ科ゴンズイ属)対生    マルバアオダモ(モクセイ科トネリコ属)対生

*ヘビノボラズは京都府では絶滅危惧種の位置づけで希少種である。もっとも当地では普通にみられるのだが・・。

       
 ハンノキ(カバノキ科ハンノキ属)  ヒメヤシャブシ(カバノキ科ハンノキ属)  クロモジ(クスノキ科クロモジ属) ミツバアケビ(アケビ科アケビ属)蕾 

 乾いた丘陵や山地でよく見られるネズはハイカーの皆さんは結構知っているようだ。でも、今日は触ると思わず痛い!と声の出るネズではなく、触って握ってもそれほど痛くはないトショウについて語ってみたい。この木は普通常緑針葉樹であり、小低木~高木で古いものは5~6mにもなる。当地で見たトショウは3~4mほどだった。
 葉がかたくて鋭く尖っているため、ネズミの通り道に置いておくと、ネズミが通れないことからネズミサシとの別名があるのだが、こちらトショウは手で触ってもほとんど痛くはないようだ。そのようなことから盆栽や生け花等にも使われているという。だが、そのトショウが当地にもあるが限られており、触ると痛いネズがほとんどである。杜松はトショウと音読みでいい、昨今では盆栽界の用語の感じではなかろうか。
 なお、このトショウには株立ち状になる立性種と、地面や岩上を這って生息する這性種があり、それぞれ「立ちネズ」「這いネズ」と呼ばれているようだ。わたしは遠い昔に福井県の山で這性種である『ハイネズ』を見たのを当地のトショウを見て思いだしていた。それは懐かしくあの荒れ果てた山道から暑いころに取りついて、樹林の中に楚々として咲くナツエビネの華やかな花に出会いたいナ!、その折に一面を覆い隠すようなハイネズにも逢ってみたいなと、あの頃をしみじみ思うのだった。

     
トショウ(ヒノキ科ビャクダン属)杜松     トショウの果実

 こちらでもツツジ科の仲間の一番乗りはやっぱりコバノミツバツツジであった。だが、しかし、まだまだ咲き初めで数は少なかったが、寒の戻り気味の寒い昼下がり、枯れ野の中に一枝っきりで紅色のツツジが晴やかに目立っていたのが見事だった。
 そばには青年が一人だけで綺麗な咲き初めの花を見上げており、「この美しい花の名はコバノミツバツツジでいいんでしょうか・・?」と、遠慮がちににこやかに声をかけてくれた。優しそうな若き青年が「このツツジはミツバツツジですか」などとぶっきらぼうな質問でなく、ちゃんと正式名称まで知ってくれているのに思わず感動してしまい、つられて「美しいですね、おっしゃる通りの名のようですね~・・」と曖昧な声を出していた。

     
コバノミツバツツジ(ツツジ科ツツジ属)関西圏で一番に咲くのはほとんどがこの種だろうか 

 清々しい青年と別れてすぐに、今度は桜の一番手ヤマザクラの大木が高きところより開花し、見下ろしてくれてた。近くにはまだ花はなく冬芽から葉の展開が始まった桜の仲間にも出会えた。左↓にはまだ巻ながらこの世に出たばかりの葉が写っているのだが、ルーペで見ると、密腺が葉柄上部に一対ついていたのを探し見届けた。どうやらその様子からカスミザクラだろうと同定しよう。帰宅後その可能性大だったのがうれしい。
 それにもまして、直前に出会った自然好きな青年に出会えたこともさらに嬉しかったことだ。カスミザクラとともに今日の二つの思い出としていつまでも脳裏に残ってくれるだろう・・。

         
カスミザクラ(バラ科サクラ属) 冬芽から葉の展開始まりと右は樹皮の様子     高いところでヤマザクラの花が風になびく

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