愛宕山に咲く花 ’19.8.26 曇のち晴

 保津峡-ツツジ尾根-愛宕三角点-西尾根-保津峡

 久しぶりに愛宕山へ登りましたが、ようやく涼しくなり山頂である神社の温度計では20℃となっていました。そうはいってもここまでで汗はたっぷり流れ出ていますから、ズボンまでしっかりびしょ濡れでした。水の補給は度々ですが、この山塊はあちこちに湧き水地があり、歩き始めから多くの水分を持ち上げる必要はないために、湧水地の水場が助かります。
 そして裏愛宕一帯のぶらり自然観察を楽しみます。登りでかいた汗もすっかり消えて、辺り一帯は静けさに満ち溢れて爽やか百景のなかに身をおき、美味しさあふれる空気を胸に収めながらの至福の喜びが堪えられません。そうです、為すべきことは方々の木々の観察に鵜の目鷹の目のみですから・・。 

 
 ジープ道からの比叡山から比良山系の山並み続く~

 まずは、ツルリンドウが方々で咲き初めとなっていました。今年初めて咲くツルリンドウでしたが、それにしても今夏も酷暑が続き閉口したのでした。そんな夏の終わりを告げるように咲きだすこの花を目にすると、「やっと秋が近づいてきたのだ~」と思わせてくれ、「これから急速に花も気候も秋に向かって進んでいくのだ」と、目にしたとたんに嬉しくなる花です。
 今年も元気で出会えたツルリンドウでありましたが、そうだ、秋が深まればこの花はリンゴアメのような色、姿をした美しい実のりの秋を演出してくれるのを待つこととしましょう・・。

 
ツルリンドウ(リンドウ科ツルリンドウ属) 

 次にはヤマジノホトトギスがまだ一株のみ咲いていました。「この花の造りは面白いネ・・」と近寄ってまず目を凝らします。まず、花びらがヤマホトトギスのようにそり返ることはありません。花被片には紅紫色〜暗紫色の斑点があり、そして幅広の方が外花被片で狭い方が内花被片といいます。
 ↓画像の上のツボミの下側が膨らんでいるのは、すなわち外花被片基部の膨らみを距といい、密をためるところです。雄しべの花糸は金色で先にはもちろん葯がつき合計6個です。雌しべの先は3裂してさらに柱頭は二つに割れます。ヤマホトトギスも以前は見たと思いますが、近年はヤマジノホトトギスしか咲かなくなってしまったようです。もちろん、六甲山の方で見られるといわれるセトウチホトトギスはこちらでは分布しないようです。それに、ややまれではありますが、比良山系ではタマガワホトトギスも咲くようです。

 
ヤマジノホトトギス(ユリ科ホトトギス属) 

 そして、サワオトギリがまだ咲いておりました。サワオトギリと同じような仲間で比較的小さめな花を咲かせるコケオトギリにヒメオトギリの三者を下表で比較してみます。

  生える所等  茎高   茎  葉長さ・幅等 黒点・明点等  花 苞 
サワオトギリ 低山や山地の水辺や湿地 15~40cm  稜無 葉は茎抱かず、長さ2~3.5cm倒卵形~長楕円形、先丸い  黒点縁有、明点多数  直径約1cm  苞は花弁より短く鈍頭 
コケオトギリ  野原や休耕田などの湿地  3~10~30cm  4稜  葉は茎抱く、長さ0.5~1cm、幅3~8mm 広卵形で円頭 黒点無、明点多し  直径5~8mm  苞と葉とほぼ同形の広卵形
ヒメオトギリ  野原や山麓の湿地  15~40cm  4稜 葉は茎抱く、長さ5~13mm、幅3~10mm卵形  黒点無、 明点あり 直径6~8mm  線形~披針形

 

 
サワオトギリ(オトギリソウ科オトギリソウ属)  


 イケマがこちらで久しぶりに咲いたようです。道ばたの草刈りにより一時消えたのですが、また今年復活したようでイケマの残花がありましたが、探すも果実はまだできていませんでした。二日前には別の地ではもう8cmほどと細長い果実が、ぶら下がっていたのにも出会っていたのでした。

 
 イケマ(キョウチクトウ科イケマ属)

 こちらのズミは相当の古木のようです。今年はもう台風が西日本に上陸もあったりしてか、果実はほとんど落ちたようです。探したのですが数えるほどしかついてなかったようです。それに、久しぶりに出会ったズミの実が色づくのが待ち遠しい気持ちで一杯でした。最も、信州の方面とは違い、関西圏でのズミの果実がそう密につけた個体には出会ってないのですが、そのあたりも東日本との相違点なのでしょうか・・?

     
 ズミ(バラ科リンゴ属)    ズミの全体像で7~8mほどと古木のよう

 さて、肝心のオオウラジロノキですが、こちらは何が原因なのか判明はしないのですが、どうやら涸れるような運命ではないでしょうか・・?、一部の葉はまだ緑がかったものも残ってはいますが、枯れてしまっているものの方が多そうです。根元の周りには強風で落下した実がいろいろな大きさで散らばっていましたので、集めて撮ってみましたが、何か痛々しそうで残念でした。もっとも何とか持ち直ってくれたら嬉しいのですが・・。
 どうもこの樹種が多くのハイカーに見つけられてしまったのか、あたりの地面は掃いたようにとは言い過ぎですが、以前より地面がきれいな状態になっているような気がしました。まさか、団体さん達がこちらで大勢が座り込んで食事をしたりとか、この木を見上げてしまいには遊び半分で木登りするとかして、この木を結果的には虐めつけてはいないでしょうかね・・?、どうか、愛宕界隈ではここしかないと思っています希少な樹種のオオウラジロノキを、大事に見守ってやってほしいと願いたいものです。

     
心配なオオウラジロノキ(バラ科リンゴ属)   強風で落下したと思われる若い果実の大小 

 旧愛宕スキー場跡地には90年ほど前のその当時からあったと思われるイヌツゲがあたかも自然の中の盆栽のごとき樹形そのままに残っています。なお、愛宕スキー場とはネット上に「1928(昭和3)年、旧制京都第二中学校(現京都府立鳥羽高等学校)の初代校長・中山再次郎によって拓かれた。当時は関西で最大規模を誇っていた。 そして、1944(昭和19)年、鉄材の供出による愛宕山鉄道廃止に従い閉鎖。中山校長の胸像も供出され、台座のみ残っている。」と説明があります。

 ↓の画像のように高さおよそ5mくらいで、木の幹は35cmもありました。そして、イヌツゲかはたまた、よく似るツゲ(別名ホンツゲ)のどちらかなと葉の様子をシゲシゲと見ますと、互生か対生かなかなかどちらともいいがたいような状況です。それではと、一番低い位置につく枝を手に取ってみますと、どうやら小さな鋸歯もあったりします。対生ではなく互生で、全縁でなく鋸歯があればその樹種はイヌツゲとなる訳ですが、枝につく葉をいろいろみますとどうやら対生もあるようで、頭の中は混乱してしまいます。

 ではと帰宅後PCで調べ回します。するとやっぱりツゲかイヌツゲかの区別は容易ではなく、昔から植物学者も困られていたのでしょうか。いろいろ存在する地方の個体が分かれることも多いようです。機会があれば詳しい方の見解を聞くこととしましょう。でも、わたし的にはやっぱりイヌツゲではなかろうかと思うのでした。以後もこの個体の葉のつき方中心、イエ、花の開花時期や果実の様子も調べたいとの再訪を重ねてやってみたいものです・・。
                                結局この年の10月23日にこの木はイヌツゲであることの根拠の黒く熟す果実を見つけました。

  分類  葉 花   果実 *核果と蒴果の違い 
イヌツゲ モチノキ科モチノキ属  互生、葉身は長さ1~3cm幅5~15mm  雌雄別株、6~7月  核果、直径5~6mm、10~11月に黒熟  核果=梅や桃等のように中心部に堅い核をもつ果実をいう 
ツゲ  ツゲ科ツゲ属  対生、葉身は長さ1~3cm幅7~15mm   雌雄同株、3~4月   蒴果、長さ約1cmの倒卵形  蒴果=果実のうち,乾燥して裂けて種子を放出する裂開果のうちの一形式 
         
枝ぶりがなかなかシャレていますネ~    イヌツゲ(モチノキ科モチノギ属) 幹太さ35cm    この枝の葉は互生か対生のどちらでしょうか?

 樹木の果実たちをご覧願います。

         
ムシカリ(レンプクソウ科)    ヒロハゴマギ(レンプクソウ科)    ヤブデマリ(レンプクソウ科) 
         
 カマツカ(バラ科)   カナクギノキ(クスノキ科)     タンナサワフタギ(ハイノキ科)

 愛宕三角点地によってお昼としましょう。旧スキー場内から左に地蔵山、右に竜ヶ岳が指呼の間でした。芦見谷の水場から先には昨年21号台風の大被害で道は廃道となりそうです。下山はいつもの西尾根を下りましょう。途中の米買道の大岩の標示でしたがこの道も台風禍で人の姿はなくなってしまいました。’18年の21号台風被害がハイカーにとっても返す返すも残念な自然災害でした・・。

             
愛宕三角点    旧愛宕スキー場からの地蔵に竜ヶ岳    芦見谷源流の水場は元気な流れ     西尾根、米買道交差の大岩地

7/10サワオトギリ ホームヘ 9/24ヒグラシノ滝







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