愛宕山に咲く花 ’19.10.23 晴のち曇

 保津峡-ツツジ尾根-愛宕山-三角点-スキー場跡周辺-西尾根-保津峡

 本日は久しぶりの秋晴れとなってくれそうとの予報で、待ってました!とばかり愛宕山の植物観察としました。お陰様で午前中は誠の秋晴れが空一面に広がって歓迎してくれました。もっとも午後からは昨今の確かな予報どうりで、雲が厚くなってはきましたが、それでも、当地の今回のコースで普段愛宕山のコースでは、花や実を見ることはそう多くない種のウラジロノキを発見できるなど、心楽しきかなの一日となってくれました。

 さて、愛宕山に咲く花といえども、この時季ですから花の開花はありません。でも、樹木たちの果実の完熟期のために、いろいろな樹種の展開を探し回りましょうとの目論見でした。さすがに愛宕のメジャーなコースでしたから、登り道では青空に向けてカメラを長く覗いていると愛宕山の常連さんであるHさんがお友達とご一緒に上がってこられました。「○○さんですね、なにか咲いていましたか・・?」と、の声がかかりました。こちらでは何度かお会いしている健脚さんでした。喋っていると、さらに、大きなザックで静かに追い越される単独行の女性も通りすぎて行かれます。

 すぐの急登直前のお休み処に、先ほど追い越されたデカザックの女性がベンチ休憩されていましたので、ちょっとだけ「その姿であれば、アルプスには登られているのですね、百名山も当然でしょう・・?」と、声をかけてみました。すると「ハイ、ちょくちょく登っています。でも、遠いですからそんなに行けません。それに仲間の男性は早い足ですし、いつもついていけないために、今日はその対策のトレーニングです。でも、百名山はまだ29ほどです」と、楽しそうににこやかに笑っておられます。
 「そうですか、アルプスの山々をせいぜい楽しんでくださいネ、特に百名山にはいろいろなスタイルの山があって最高ですヨ」と、声を交わしてこちらはここまで写真を撮ってばかりのために、このベンチで休む用はないことから、先に急登へさっさと取りつきます。

 さぁ、植物観察の本番です。本日はこの愛宕山はもちろん、その他の山域でも出会っている樹種ばかりですが、このコースで沢山の果実をつけていた木を初めて見つけることができました。それは、ウラジロノキでした。この愛宕山でも他のコースのあちこちでは見てはいますが、これほど赤い完熟の実を沢山つけた個体は初めてでした。と、いうのも落葉樹の10~15mにもなる高木ですから、ふつう花の開花期の5~6月では、枝葉が高すぎてほとんど気がつきません。高い所でしたが赤い実が多くついているのを見ることができ感激でした~。

 ただ、ウラジロノキはバラ科のアズキナシ属だけあって、アズキナシと特徴が酷似します。両者は以前の分類ではバラ科ナナカマド属でしたが、昨今のAPG分類体系によりますと、バラ科ナナカマド属からバラ科アズキナシ属に変わっているくらいです。要するに酷似する樹種のため、それらの違い等を見比べてみることにしましょう。

ウラジロノキとアズキナシの相違点等

   落葉高木  開花期 花直径   花色  葉身長さ 葉身幅   葉柄等  果実  果実色等 果実長さ姿   果実皮目
ウラジロノキ  10~15m  5~6月  1~1.5cm   白色 6~13cm  4~9cm 1~2cm毛密生   ナシ状果 10~11月赤く熟す  約1cm楕円形 目立つ白 
アズキナシ  々  々  々   々 5~10cm  3~7cm  1~2cm赤帯毛少   々  々 8~10mm楕円形  まばらな白
 
ウラジロノキ(バラ科アズキナシ属) 
         
1cmほどの細長い赤い実がびっしりとつく    落葉高木で5mくらいまでの幼木では花は咲かず    葉の裏が特に白いのが名の謂れ、葉脈きれい 

 10/27に追記です。本文内も一部訂正しています。
本日ウラジロノキとアズキナシと思っていた二ケ所を再訪してきました。まずは一ケ所目のウラジロノキです。最初の一ケ所目は先日ウラジロノキと同定していた以下の画像のとうり、間違いなくそのとうりと確認できました。

         
前回よりやや下部の実を撮る    幹肌を撮る、直径15cmほどで成木より古そう     葉の表裏と実と果柄も

 続いて、愛宕山塊では初めて見つけたアズキナシです。と、先日は書いていました。ところが、この木も高すぎて、それに実は小さすぎ写真が上手く撮れませんでした。こちらの山では初見であるためにもっとじっくりと写真タイムにすべきであったことが大反省でした。近い内に好天時再訪をすることにしました。こちらの花、葉に果実等の生態は↑のウラジロノキとの比較一覧をご覧願います。
 なお、春に花の咲いていた頃の二種については、過去に見た愛宕山のウラジロノキと蓬莱山のアズキナシの花や葉についてそれぞれ比較して見てください。

 
ウラジロノキ(バラ科アズキナシ属)
         
こちらも真っ赤な実がびっしりとつきます    この個体も高木で高すぎ実もハッキリせず   落ち葉を拾い集め左葉裏、右表毛深い 

 最初のウラジロノキから約200mほどでしょうか、標高を上げたところへあった二ケ所目のアズキナシと最初思っていた地の樹木地にも確認してきましたが、ここで、えらいミステイクしてたことが分かりました。その間違いはアズキナシではなく、一ケ所目と同じウラジロノキでした。お詫びして訂正です。

 その根拠はウラジロノキの葉裏には白い面毛が密生するために白く見えるのですが、アズキナシの葉ははじめ両面に軟毛が密生するが、のちに無毛となるため、ウラジロノキの葉裏のように白っぽく見えません。
 また、幹が両方とも相当古かったのですが、アズキナシと思っていた古い老木の幹↓中央の画像(今回見た二か所の上の地の方での幹は20cm以上でした。)は、鱗片状のようですから、ウラジロノキの老木のようです。なお、アズキナシの老木は、縦に細長い浅い裂け目が入るようです。ただ、幹のこの点の相違点はやや判別が容易ではなさそうです。

 
 ウラジロノキ(バラ科アズキナシ属) 高所の果実をUP
         
幹の周りに落ちていた枝葉と実、葉裏は極白い    幹が老木になると鱗片状に剥がれてくるよう    左が葉裏で表より白っぽく見えるのが特徴


 オオウラジロノキはウラジロノキの果実より大きいことから名がついたとの謂れらしいです。このオオウラジロノキは愛宕山塊ではこの個体しか見ていません。しかし、この木が最近枝が強風で折れたりして、枯れてしまうのではないかとの異変が心配となっています。
 その原因のひとつではないかの点ですが、手ごろな山歩きのために愛宕山へは多くのハイカーが押し寄せます。近年どうしたことか、この樹j木の周りがあたかも掃いたごとく綺麗になっています。思うに花時やびっしりとついた大き目な赤い実時には、みんなの目に留まった大勢のハイカー達が木の周りにへたり込んで昼食などしてはいないでしょうか・・?。
 と、実は変なうがった案じ方をしていたりします。「そんな非常識な、それはないだろう・・?」、とは思うのですが、大勢の人たちが木の根っこを踏みつけます、と樹木の命を極端に縮めることとなります。どうか、いつも多人数で歩き回る山の会等のリーダーさんにお願いです。
 「もしこのページが目に入りましたら、このオオウラジロの木は、もうそんなに長くはなさそうな非常事態となっています。このオオウラジロノキは北山にあってはふつうに見られることはあっても、愛宕山にとっては、大変希少な樹木であります。この木の周りに、一度に多人数で踏み込まないでやってください。とその木になり替わってお願い申し上げる次第です。」

         
 例年ならびっしりとついた実も葉もまばらです   オオウラジロノキ(バラ科リンゴ属)    例年木の下へ多数の実が落ちるのですが0です 

 雑木を眺めまわしていると、高い所の枝先に赤い実がチラホラ見え隠れしました。株へ垂れていた葉を掴んでみますと、モチノキ科のアオハダでした。すぐに上の赤い果実を撮ろうとするも、なかなかうまくいきません。悪しき腕ではどうにもなりません。↓中央は株別れしたその枝たちです。まだまだ青年の樹木でしょうか。

 モチノキ科はすべて雌雄別株です。しかし、経験上から雌株は総体的に多くありそうと思っています。手持ち図鑑には高さ12mと表記があります。でも、この種は比較的背が低くても開花してくれますから、ハイカーには馴染みがありそうです。花は直径4mm程と極小さく、5~6月の花時でも背が低くても見つけるハイカーの花好き以外には無関心となります。でも、実時となれば真っ赤な実がびっしりとつくために、低ければどなたにでも「アッ、この木の実は何・・?」との声が出ることでしょう。しかし、今回のように7~8mにもなっている高い実に気づくのはほとんでないことでしょう。

 こんな自然観察をしている所へ、「竜ヶ岳からです。」と帰ってこられた、M2さんが登場でした。どうやら、近くの地蔵辻から首無へいったん降りて、竜の小屋から急登で知られる東尾根を竜ヶ岳へ登られたようです。この後、「愛宕山三角点に寄り、その後で昼食とします。」とのことで、13時を回っていたと思いますが、「エー、遅いですね~」と、びっくりしてお別れしたのですが、「しまった!、M2さんは『山と写真』のブログを展開中」で写真の上手い方だということを忘れていたのでした。アオハダのそばで立ち話の時に、果実を代わりに撮ってもらったらよかったのに・・と別れてから思う始末でした。残念!

         
高いところの枝先へ赤い実が風になびくアオハダ    アオハダ(モチノキ科モチノキ属)の株元の様子    この種は実がついても葉を比較的長く落とさない 


 1、次はまたまた赤い実を沢山つけることで知られるカナクギノキです。この木も落葉高木で高さ6~15mにもなります。この種もふつうに見られる種で珍しい訳ではありません。でも、クスノキの仲間にしては果実が黒色ではなくこの種だけが赤色なので分かりやすいでしょう。

 2、近くにはズミも立っていました。ところが、葉はもちろん、実もまったくついていません。この木も6~10mにもなります。枝は見るからに元気がなさそうでした。どうやらヤドリキがついているようですから原因のひとつでしょうか。でも、なんとか頑張って生き延びてくれることを祈るばかりでした。

 3、さらに、こちらへ来る度に気になっていた木ですが、「ツゲかな、イヤ、イヌツゲだろう!」と一般的にはこの二種は山ですぐに分かるというものですが、実はこの個体は愛宕山へ昔あったスキー場跡のものです。大豪邸の庭木のように君臨しているかのように見えます。そのようなことから幹やら枝が立派であり、もちろん葉まで本ツゲなのか、どちらなのかはっきりしない程に成長逞しくなっている個体なのです。
 しかし、今回やってきて初めてその根拠となる果実を見つけました。その実は直径5~6mmで10~11月に黒色に熟す果実であるということで、本ツゲの実とは時期も姿も全く異なります。イヌツゲそのものの実を見つけたのでした。↓三種目の画像です。これで、愛宕山へ毎日のように登られるという植物好きな方にも、確かな名前をお教えできることでしょう・・。ヤレヤレ笑い

         
1カナクギノキ(クスノキ科クロモジ属)   もう紅葉が始まったよう   2 ズミ(バラ科リンゴ属) 元気ないのは寄生のヤドリギが原因か 
イヌツゲの根拠である黒い実発見↓         
         
3イヌツゲは黒実が決定的な根拠   姿かたちも立派な庭木のよう   タンナサワフタギ(ハイノキ科)   ナツハゼ(ツツジ科)
         
 カマツカ(バラ科) カラタチ(ミカン科)愛宕神社植栽    ツルリンドウ(リンドウ科)  ミヤマカタバミの閉鎖花(カタバミ科) 

 歩いた地点等です。

     
愛宕神社 12.5℃ 愛宕三角点 (890.06m)  愛宕山スキー場跡の台座のみの碑 
     
スキー場跡から左の地蔵に竜の眺め    西尾根米買道地点交差地の大岩 

9/24ひぐらしの滝 ホームヘ 11/23ウラジロノキ






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