比良 アラ谷右岸尾根からの釣瓶岳 ’17.3.5 晴後曇
JR堅田=細川バス回転場-アラ谷右岸尾根-P886-釣瓶岳-ナガオ-広谷-ダケ道-JR比良 |
二年ぶりのアラ谷右岸尾根から登って、釣瓶山からイン谷口への長めのスノーシュー歩きを楽しめた。今回の計画前に釣瓶から北への縦走路を引き返して地蔵山、そして地蔵峠から車道下の古道を畑への下山に考えたのだが、畑の下山口はどれを取っても鹿除け柵が設置されており、今年のように多雪時はその柵が雪に埋まって開かない場合がある。この注意点を思い出し、それらのルートは中止してやっぱり広谷下山へとしたのであった。(ただし、蛇谷本峰からの下山時は須川峠別名ボボフダ峠から下山すれば、登山者多しのためその柵は比較的出入りしやすいと思われるが・・)
それにしても、今回は暖かすぎて、稜線上まで上ってもすべて樹木たちは雪を落として裸同然となっており、樹氷なき山景色は予想通りだった。だが、しかし、積雪が久しぶりに多雪年となったことから、これだけ気温上昇(ちなみに前日京都16度)なのに、まだまだ多くの残雪があって、それに程よい締まり具合の雪質に恵まれ、スノーシューも5cmほどしか沈まず、お陰で前回よりJR比良駅へ一時間も早く帰ることができた。山歩きというものは、何らかの良さというものを見つけることのできることを求めた遊びとすれば、楽しみはより広がることだろうと自らを納得させることとなった本日のアラ谷右岸尾根の登りであったのだ。
さて、細川バス停終着先のバス回転場(9:50)で下車させてもらい、北へ10分で地形図上のP248地点の車道から野街道の集落へ上がって、最奥の民家横から尾根末端に取りつかせてもらった。歩きだす最初から標高300~400mの間は急登間であるためにツボ足で上がろうと決めていた。それでもCa500あたりまでツボ足歩行だったが、さすがにアイゼンもつけていないと20~30cmほど潜る所もあって歩きづらくなってきた。緩やかな500mあたりの右側から古道の上がってくる場所に白っぽい「公社営林地」との看板が立つ所でようやくシューを履いた。
その後も長い杉檜の植林帯歩きであるが、これも仕方なく、その内に赤松が出てくれば次第に雑木林や緩やかな部分もあったり、急登になったりと変化ある斜度が続いた。しかし、尾根は一本やりのために地形図なんて確認など必要はない単純尾根であって、考えようによっては山歩きの勉強になるとは言えないだろう。あえていうのであれば、今回のコース取りがやや長いために体力トレとなることくらいが取り得といってもよいか・・。
P886あたり前後より自然林となって、まもなく左方向の見晴らしが出てきてくれる。北側直近の尾根は朽木栃生から上ってくるイクワタ峠の尾根、その奥にはゴマ塩気味の頭の蛇谷ケ峰が近い。さらに上がれば北の山並みが一望となってくれる。野坂山塊の大谷山の先に赤坂山や三国山、そして東には湖北乗鞍岳だろう。
また、蛇谷西峰の西北方向には西へ三重嶽、武奈嶽や三十三間山の山並みが白銀に見える。さらに進めば白倉岳の奥には三国岳から百里ケ岳もハッキリ見せてくれた。いずれもその頂は足跡を残しているだけに、それらの頭を思い出しながらの楽しい歩きであった。
白色はイクワタ峠、蛇谷の奥に三重嶽等 | 三国岳から東へ百里ケ岳も見え | この景色を見ながら昼飯としよう |
ほどなく、坊村方面から12時のチャイム音が山狭に響いて心酔いしれた。すぐ目の前には北主稜縦走路沿いに琵琶湖を見下ろせ、足元には真っ白い雪庇も広がっていた。「ここだ!」、と昼飯場所はすぐに決まって腰を落として腹に入れよう。本当のところ雪庇がもう少し物足りない出来映えであったのだが、これも寒くもない無風の雪の上という代わりなのだからやむを得ないだろうと辛抱し、この景色を喜びとしよう。
半時間もしないで雪庇近くを歩きだした。そして釣瓶直下のブナやアズキナシなどの大木達の木肌をなぜ回して、「また来たヨ」と挨拶しよう。またすぐ他の樹のことも思い出した。この近くには「フウリンウメモドキ」という面白き名の、可愛いい花を咲かす樹木があり、この花時にも逢いに今年こそやってきたいものだと物思うのであった。着いた釣瓶岳は一週間前にも、いや、今年2月には二度も来ておりこれで三度目・・ってバカではないか・・?、だが、写真一枚撮ればすぐにナガオへ進んだ。
雪庇の奥上が釣瓶岳 | ブナの大木が通りの王様だい! | 釣瓶岳山頂(1098m)は杉で暗い |
そして、ナガオ尾根をトントントンと歩いて最後のP991手前のCa990の小ピークから急坂を下って、品のいいナツツバキを見て、最後は広谷サワグルミ地へ降り立ったのである。この広場には広谷という道標があるのだが、この時期はもちろん完全に雪の下であり、「レスキューポイント広谷」の表示がカエデの樹の下の方へ貼られている。
その前の沢には短い丸太橋があるくらいで、この時期であれば人工物はほとんどない。ところがこれよりイブルキノコバへ上がるのだが、ここで渡渉はナガオ等から下山した方は結構苦慮していそうだ。こちらはいつもその丸太橋利用は安全上無理であるために、それより下流10mあたりのサワグルミの手前から渡渉をし、すぐに沢沿いを上流側に進んで左の沢の雪道を上がってイブルキノコバに進むこととしている。
広谷の右上が丸太橋、橋左渡渉は手前難 | 広谷のサワグルミ、この姿がいいね! | 丸太橋から左10mほど下流が渡渉地 |
さて、このあたりで冬季での事故事例を聞いていただき、この広谷あたりを歩かれる方に、他山の石として特に注意喚起としたい。今回は広谷からイブルキノコバへ上っていたのだが、逆にイブルキノコバから広谷へ降りてナガオや細川越あるいは武奈ケ岳東尾根へ進む場合の注意点である。最も冬季にこのような方向へ歩こうとされる方は相当の熟練者であろうことから、注意は怠りないだろうが、そうはいっても初めて入山されるツワモノへあえて述べるものである。
①さて、今回3/5はナガオから広谷へ降りてきて、広谷の丸太橋下流10mほどの地を渡渉してイブルキノコバ(下の軌跡右を参照、赤線ルートが今回進んだ道)へ上ったので、問題なく進めた。
②問題は前回の2/27の今回とは逆にイブルキノコバから下ってきての事故が起きやすい点について説明してみたい。(下の軌跡右で緑線で、*事故地)
イブルキノコバからやってくる場合に①の赤線方向に歩かないで、②のルートで、少し右上部をトラバースし、丸太橋近くを渡渉しようと直に斜面をトラバースした場合の話である。その斜面のトラバース地点は斜面降りで、大きな太い倒木が横切って倒れているのだが、これだけの多い雪の場合にはこの倒木があることすら、もちろん見た目には分からないために、心理として直進して降りようとしてしまう。そうすれば太い倒木下側に足を置いた時には深い踏み抜きで完全に身体は一回転して、4~5mほど下の沢あたりへ落下してしまうだろう。
そうなった時にシュー等もろともうまく抜け出して落下した場合にはまだしもだが、シュー等が抜けない場合には足の骨折あるいはストック等での怪我では済まされない事故となりかねないので要注意である。実はこれは当方の一週間前の体験談からの実話であるのだ。
最もこちらはその時一回転して、落下時に足元を見ればシューはしっかりついており、結果的に上手く着地したようで、お陰で無傷であったのだ。両手にはストックも握ったままであった。もちろん、その時ザックの腰ベルトはきっちり締めていたのだ。その時には武奈への東尾根を登ったので、その先の右下の丸太橋の沢は渡渉せずに、その橋の手前左上をトラバースして黄色い広谷小屋右横から、その奥の左の沢の雪上を越して東尾根に取りついたのである。
要するにこの場所に限らず、特に積雪期の斜面を降りようとする場合には、そこへ大きな倒木等があれば、深い踏み抜きが待っており、その踏み抜きの結果は頭が真下になって一回転状態は免れなくなり、落下地点が雪深い沢や岩、崖地形等であれば、もうこれはどうしようもない大事故につながることだろう。
当然その時も、当方は単独行であったのだが、それ以来一人はよそうと思いながらの葛藤で、やはり孤独を愛する身にとっては・・、の境地である。こんなことを書きながら、やっぱりマイナールート歩きでの単独行は可能な限り自重しようと思い直している男がいる・・。なお、これらの情報はわたし個人の判断のため、これらの情報どおり歩かれ、万が一事故発生時でも当方には責任を取れません。あくまで自己責任であることを悪しからず了承願います。
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こう思うのは、実は今回バスの隣に座った男性が「梅の木の三舞谷から武奈へ登るのだ!」という4人のパーティの話を聞き、そのリーダーから「そちらは単独で野街道からですか、不慮の事故時には困りますヨ」、と逆にいわれて前回のことを思い出し、ハッとする始末であったのだ。そろそろマイナールートの一人歩きから一般コースへと、転換すべきではなかろうかとの心境となってしまうのであるが・・。
さて、話は横道にそれたが、イブルキノコバから八雲ケ原に降りれば、やっぱり人、人の姿ばかりだ。ここまでは誰一人とて出会いはなく、自分流の格別の時を歩き通すことができ、大満足の山であったのでよしとしよう。後は北比良峠からダケ道をイン谷口からJR比良駅へ帰るだけであった。駅には16時過ぎと前回時より1時間も早く帰ることができたのは、やっぱり雪質の賜物であろう。