比叡山に咲く花 ’17.5.12 曇

 今年の積雪は久しぶりに多かったためだろうか、ここにきて植物の開花状態が昨年に比べて著しく遅くなっているようだ。本日の比叡山ではヒメシャガが開花しいるだろうと出かけてみたが、まったくの花の姿は見ることができなかったのだ。先月中旬にもその群生地を確認にやってきていたのだが、葉の芽出しが進んでおり、これなら5月には花が見られるだろうと期待しての再訪だったのである。
 はたしてこれは鹿の食害なのだろうか。葉すらまったく姿もなくなっていたのであった。山野草は他にもギボウシ、オオバギボウシの葉も食いちぎった残害が目立っており無残な状態であったのだ。その他の咲いていた種は、クリンソウの咲き初めと、ミヤマハコベ、ノミノフスマにタネツケバナやムロウテンナンショウくらいが咲いていたほどで極めて寂しい状態での花巡りとなったのであった。

 結果として、本日は樹木観察となってしまった感である。

             
      ウスノキ(ツツジ科スノキ属)↓     
       この花を見るポイントは萼筒である。      
そこに稜角が有る無しで、あればウスノキ
なければスノキとなる。
果実は角張って臼のような形になり、赤 
くなる。
 コバノガマズミ(レンプウソウ科ガマズミ属)             オトコヨウゾメ(レンプウソウ科ガマズミ属)   
             
新しいAPG植物分類体系ではガマズミ属           今回は開花が大幅遅れで蕾ばかりであ
ニワトコ属とともに、 スイカズラ科からレン         った。実はこの葉は特に左のコバノガマ
プクソウ科に移されている。         ズミと酷似するが、葉柄は3~8mmで無毛
近縁種にガマズミ、ミヤマガマズミがあり、         または長毛がまばらに生えるものや密生
特にオトコヨウゾメとも酷似し、同定容易         するものがあるが、決定的な区分点は
ではないが、↓のようなポイントがあり、         托葉がないことである。
観察時には決定的な見分け方があるの         他には押し葉にすれば、この葉は黒くなり
で、この点を覚えれば困難ではなかろう。         他のガマズミ類にはない特徴もある。
           
          ←画像のとおり
       オトコヨウゾメの押し葉は黒くなり       
コバノガマズミ葉裏葉柄基部の托葉            オトコヨウゾメの咲き初め 
             
 コクサギは雌雄別株でこれは雄花だが
それは総状につき、雌花は1個ずつ咲く
葉は「コクサギ型葉序」と呼ばれて、2個
ずつ互生する珍しいつき方である。↓
コバノガマズミの確実な見分け方としては           面白い名だが、謂れはガマズミ類をヨソゾメ
↑画像のように葉柄基部へ針状の細い と呼ぶ地あり、他のガマズミに比べ実が
二本の托葉がついておれば間違いなく、 やせており、食用になりにくく、男を冠して
コバノガマズミと同定が可能である。 オトコヨウゾメになったのではとの見解
       コクサギ(ミカン科コクサギ属)      

 

 本日はもちろん、樹木類も咲く種は少なく、ほとんどが蕾状態であり、そのような中で開花していたのはツツジ科では、コバノミツバツツジはとっくに終わっていたが、モチツツジ、ヤマツツジの咲き初めが始まり、ウスギヨウラクがやや終盤で咲いていたくらいであった。
 お目当てのバイカツツジは開花時期が6~7月というために蕾すら姿なく、ずっと先となろうが、今年も花の再会を期待しながら葉もしっかり同定可能とした。他にミツバウツギにツクバネウツギの咲き初めがあり、ハナイカダ、ミツバアケビが咲き残り、また、コアジサイ、コゴメウツギにヤブデマリたちは蕾であった。もちろん、バラ科サクラ属ではヤマザクラ、ウワミズザクラは終わっていた。このように開花は極めて数少なく、山の中の木本類の本格的な開花シーズンはまだまだ先になりそうだ。

       
 ウスギヨウラク(ツツジ科ヨウラクツツジ属) バイカツツジ(ツツジ科同属)の葉  ミツバウツギ(ミツバウツギ科同属)   ハナイカダ(ミズキ科ハナイカダ属)

 最後に山野草はほとんど咲いていない状態でがっかりであった。せいぜいムラサキサギゴケが足の踏み場もないほどの大満開があったのだが、わたしにとってはなぜかそんなに感動ものではない花であるのだ。それとクリンソウの咲き初めが沢筋にチラホラと始まっているようだった。
 また、どちらの山でも見られるオオバノトンボソウだが、ここでも結構新しい葉の展開が何枚も始まっていたことは、喜ばしい花の開花の期待となった。それにササユリの葉っぱも目にしたのだが、共にこちらでも鹿の食害がやっぱりまず気になるのであった。

           
 ①ムラサキサギゴケ(サギゴケ科同属)  ②クリンソウ(サクラソウ科同属)        ③オオバノトンボソウの芽だし(ラン科)

 *①と近縁種のトキワハゼの区分点で一般的に分かりやすいのは、走出枝(ランナー)があるのが本種で、ないのがトキワハゼである。花の色あいでの同定は初級者にはほとんど容易ではなさそう。

   ③の開花時期は図鑑によれば6~7月とある。もちろん、その標高によって大きく異なり、7月も中旬となることもある。このような葉っぱの状態から期間が長くなって、どうしても鹿の食害や、時には心無い盗掘の危機に遭う場合が多そうである。

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5/22比叡山に咲く花

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