比叡山に咲く花 ’19.5.26 晴のち曇

 見ていただく予定のセッコクはこちらではどうやら昨秋の台風過で杉の大木からどっかへ飛んでいってしまったらしいです。それに比較的珍しいバイカツツジは今年の天候不順によって開花が大幅遅れとなっているようでした。やむなく、次のような樹々を中心とした植物観察をお楽しみいただきました。

 本日の花の中心はヤブデマリのようでした。この花のように落葉するガマズミ属の中では、装飾花をつける仲間には他にムシカリにカンボク、それに日本海側に咲くケナシヤブデマリがあります。とりわけヤブデマリとケナシヤブデマリは花びらのような装飾花がアジサイ類は4枚なのに対し、こちらは小さなガク片があり5枚です。
 この極小さい花びらのような萼片があることは一目ではなかなか気がつきません。また花序柄が長く、花時には直立する花序柄先に上を向いて咲くヤブデマリの花姿が並び、このさまは実に美しさ見事といえるでしょう。さらには8月にもなれば花序の枝と共に真っ赤に色づいた果実たちの光景は、暑苦しい野山ではありますが、一番鮮やかな彩と思え、その頃も楽しみにしているのです。 

         
 超満開のヤブデマリが方々に~   ヤブデマリ(レンプクソウ科ガマズミ属)    装飾花の内側には雄しべが目立つ両性花も美し 

 植物層豊かなこちらではありますが、本日は花にお詳しいお客さまの「ウリハダカエデでしょうか・・?」とのご質問の声で、この『ウリノキ』を当地で初めての発見となりました。この種の開花は6~7月といわれ、今しばらくかかりますが、でも、ここではもう少しで開花を迎えるような状態でツボミを下げていました。白い清楚な花で6個の花弁をくるっとカールさせ、長い雄しべを黄色く染めてアクセントをつけ、ともに下向きに咲かせるさまは実に「アッ、このお花可愛い!~」との感嘆の声が出るというものです。

 葉の形はウリハダカエデ似ですが、徹底的相違点はウリノキの葉は互生であり、カエデの仲間たちは全てが対生であるところを知っていると、その点が大きな相違点となって同定は容易ではないでしょうか。もっとも↓左画像のように、ツボミの姿を目にすればウリハダカエデではないと一目瞭然ですが・・。

     
 ウリノキ(ミズキ科ウリノキ属)    葉は浅く3~5裂し、ぱっと見はウリハダカエデ


 さて、続いて今度は『アワブキ』とい木が上を向いてツボミをつけているのが目につきました。この木の名前が面白そうです。その謂われは、晩春から初夏にかけて咲く白い花を泡に見立てて「アワブキ」と名付けられたという説と、燃やすと切り口から勢いよく泡を吹き出すことからの名だという説があるようです。
 開花は6~7月で、小さな白い花が集まって大きな花序を作ります。加えて秋の黄葉は見事というほかありません。この種は日本全国の山に普通にある種のために、ハイカーであればどなたでもご覧になっていることでしょう。葉は20cmを越えて細長く、測脈が綺麗に揃う葉が足元に落ちているのによく出会うことから、植物に関心のある方であれば必ずといっていいほど、「この葉はなんだろう・・?」と歓声が聞こえることとなります。

 なお、このアワブキ科の仲間を山歩きのなかに比較的よく目にする木もあります。それはミヤマハハソという面白い姿の花を咲かせる種であります。この種もちょうどこれから6~7月には開花を迎えますから、ハイク中に是非見つけてみましょう。

     
アワブキ(アワブキ科アワブキ属)    この葉は25cmと大きく、測脈20~28対で綺麗 

 次にイヌツゲはどこでも見られるのですが、『ツゲ』の果実は比較的珍しい部類ではないでしょうか。この樹も早春の3月ころに淡黄色の地味な花を咲かせます。その頃には早春に花歩きの中においてツゲの花は見る機会が多いのですが、その果実は時期的に出会うことはほとんでありませんでした。しかし、この度は上手く果実時と重なり合ったようで、初めての出会いとなりました。

 ツゲといえば本ツゲで、古くは櫛の原材料とされたことは知られていますが、イヌツゲなら見飽きるほど見てはいても、本ツゲには数えるほどしか出会ってなくて、特に果実時の出会いはなかったために嬉しかったのが本音ですから、あの山で会った、ここで出会ったといえるほどでした。

 
ツゲの果実は先端に3個の花柱が角状に残り 

 さて、つる性の植物は多数ありますが、花好きハイカーであればこの三種くらいは知っておきたいですね~。それは個体数多く、目にすることが多いからです。ではその違いを記しましょう。

①ツルアジサイの花は装飾花の萼片が3~4個つきます。葉の鋸歯は片側だけで30個以上つき細かいです。葉をもむと、無臭かあってもちょっぴりキュウリ臭いくらいです。この二つで花時でも葉だけで同定は容易です。

②イワガラミの花は装飾花の萼片が1個しかない点が大きな同定ポイントでしょうか。それに葉ですが、鋸歯は粗く片側だけで20個以下です。また、葉をもむと青臭く、思わず放り出したくなるほどイヤな臭いがします。

③ツタウルシのみ科が異なりますが、名のとおりウルシですから、観察時は取り扱い時には特に要注意です。それは有毒成分である葉に漆成分のラッコールが含まれるため、触れるとひどくかぶれることがあるからです。↓右画像は幼木時のツタウルシですが粗い鋸歯が3小葉につきますが、成木になれば鋸歯は消えます。もちろん、成木になれば5~6月頃に黄緑色の小さな花を多数つけます。

         
①ツルアジサイ(アジサイ科アジサイ属)    ②イワガラミ(アジサイ科イワガラミ属)    ③ツタウルシ(ウルシ科ウルシ属)幼木の葉 

 次に早春時の黄色い花が咲き、「アッ、あの黄色花は何かな・・?」との声が聞こえます。来年のその時のために今から覚えましょう。笑 それは春の黄色い花を見ても初心者では違いが分からず、その場で同定はほぼ無理となります。もちろん花が終わって葉を見比べれば、それで一目瞭然となるのです。さらに今年の秋ころの果実でも見比べて違いはOKでしょう。

①ダンコウバイの花の方が②より見た目やや大きく見えますが、この方法は見慣れないとやや難しそうです。その時には幹を見てほぼ一本立ちとなっておればダンコウバイでしょう。もっとも比較し易いのは葉です。葉は三浅裂することから容易です。(↓左画像) 秋の果実は直径約8mmと小さめです。実の色は9~10月ころに赤色から黒紫色に熟します。

②アブラチャンの花も黄色ですが花だけ見ても①との違いはほとんど分かりません。この花の別名がムラダチともいっているように、幹が群立って何本もひこばえが成長して幹から枝となって花を咲かせています。この幹の様子を見ればアブラチャンとの判断がつくかもしれませんが、それもなかなか容易ではないでしょう。
 やっぱり葉からの違いが一番分かり易すそうです。ただ、↓右写真の葉のように特別に何の特徴もなさそうでありますから、逆に花のない時にこの葉を見つけることすらできない場合があります。この葉姿は鋸歯もなく全縁の単葉ですから特徴がないのが特徴でしょうか・・。笑 そして秋の果実での比較が分かりやすいでしょう。大きさは直径約1.5cmとダンコウバイの実の倍ほど大きいですから、大きさを覚えることでしょうか。果実の色は9~10月に黄褐色に熟すことになります。

     
①ダンコウバイ(クスノキ科クロモジ属)三浅裂    ②アブラチャン(クスノキ科クロモジ属)単葉 

 樹木で開花咲き初め・咲き残りの残花・ツボミ・果実・比較的珍しき葉等毎に並べてみました。

       
 コゴメウツギ(バラ科)咲き初め ジャケツイバラ(マメ科) 〃  オトコヨウゾメ(レンプクソウ科)残花  コバンノキ(ミカンソウ科)〃
       
 カマツカ(バラ科)〃  オオバアサガラ(エゴノキ科)ツボミ シロダモでなくイヌガシ(クスノキ科)果実 クマシデ(カバノキ科)〃、葉は互生 
     
 バイカツツジ(ツツジ科)珍しき葉 マタタビに酷似 サルナシ(マタタビ科) カジイチゴに似るクマイチゴ(バラ科)  ↑と葉酷似チドリノキ(ムクロジ科)対生


 ハエドクソウ科のムラサキサギゴケの仲間三種の違いを見ましょう。区分点はランナー(走出枝、ほふく枝ともいわれる)があるのか、ないのかで見分けるのが分かりやすいでしょう。

         
ムラサキサギゴケの花は大き目でランナ-有    白花をサギゴケというよう、ランナ-有     トキワハゼは一番小さめ、ランナ-無

 最後に山野草の開花をご覧いただきましょう。

         
 シライトソウ(シュロソウ科)    シソバタツナミ(シソ科)    ミヤマヨメナ(キク科)
         
 ミゾホオズキ(ハエドクソウ科)    マルミノヤマゴボウ(ヤマゴボウ科)*   カキノハグサ(ヒメハギ科)ツボミ

 * マルミノヤマゴボウは雄しべの先にある葯が白色です。また花は初め白色ですがしばらくで淡紅色に変わってきます。近縁種のヤマゴボウの葯は淡紅色である点が相違点です。昨今このヤマゴボウはほとんど目にすることは難しそうです。

 ご参加の皆様、暑い一日でしたが、コース的には木陰の下多くて、心配するほどの猛暑とならずに有難かったですね。でもお疲れ様でした。来月も梅雨にもめげずに歩きましょう。

4/13ネコノメソウ類満開 ホームヘ 6/6バイカツツジ満開






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