東山の花と果実たち ’19.12.11 晴のち曇

 東山のキクタニギクは最盛期は過ぎました。しかし、残花が元々の花茎の根元へ今日も背が低くひっそりと隠れるようにまだまだ咲き誇っていました。この菊は古くから岩手県から近畿地方や九州北部に咲くという全国版であります。直径1.5cmほどの小さな黄金色の花が密集して咲く様子を泡に例えてアワコガネギクとの名で愛されています。
 ただ、京都ではキクタニギクという方がよく知られています。それは別名であり菊渓菊と呼ばれて、東山の京都菊渓にちなむことからずっと京の人たちに愛されてきましたが、渓を取り囲む周囲のシイ類等の常緑林が大木化して、日あたりが悪くなって菊類の山野草がすっかり姿を消してしまうこととなりました。
 長年にわたって東山区菊谷では絶滅となっていましたが、昨今の「京都伝統文化の森推進協議会」を中心に自生地復活に向けた活動によって菊の再生となったようで、誠に嬉しい限りとなっています。この山塊にはこれまでからハイカーなど皆無のようだったのですが、一昨年からの強力台風後の道整備以降には観光気分に見える人の姿を目にするようになったこと事態が、希少種の野草類が今後も大事に育ってくれるのだろうか・・と心配してしまうのはわたしだけではないでしょう・・。とにかく希少種である草花を次の世代にまで引き継ぐためにも、より注意して入山したいものであります。

 
アワコガネギク別名キクタニギク(キク科キク属) 

 前回見かけたカラスウリが赤色ではなく黄色く見えたことから、単純に「アッ、キカラスウリだ!」と喜んだのでしたが、帰宅後よくよく調べるとウリ科のカラスウリも段階を踏んで緑色に白線が入った「うり坊」から、黄色になり、その後に赤や朱色となってくるようなことを知って、「さてはあの日に見たものはキカラスウリではないのでは・・?」とのことで再訪しました。もちろん、事前に調べた決定的な同定ポイントは種子を取り出し、縦に隆起した帯があるのがカラスウリで、なければキカラスウリとなることも知り得たことから、安心して向かいました。

 この「カラスウリの種子には縦に隆起した帯がある」では、ネットによれば種が大黒様に似ているということや、打ち出の小槌にも似ていることから、「金運のお守り」としてお財布に入れておくと金運に恵まれる等、楽しめる種子でもあるようです。この点は試させていただきましょう・・笑い

 現地で早速、たくさんあるその実(1個につき15~20個くらい)をナイフで切り裂いて取り出してみました。するとこの種子にはやっぱり縦に隆起した帯がありましたので、キカラスウリではなく単なるカラスウリであることが分かりました。

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種子には縦に隆起した二本の帯があり
キカラスウリでなくカラスウリでした

 カラスウリの果実で赤くなく、黄色に見えた果実は単純にキカラスウリではないことがこれにて判明しました。↓4枚画像で最終的に赤くなるのだろうと考えることとしました。数年前に堤防の土手の藪でみたものはキカラスウリではないのではと思います。今後はなんとしてもキカラスウリを発見してみたいものです・・

     
①今回探したうり坊、キカラスウリの若い実に白線無    ②前回12/6に見た黄色の果実でキカラスウリと判断 
     
③今回見た果実で、種子の帯から結果カラスウリ    ④表面租毛密生光沢なしで、キカラ・・は光沢有 

 続いて、フユイチゴが赤く熟して美味しい時期となりました。昔はフユイチゴは葉先が尖らなくて丸っぽいが、葉先が尖るものはミヤマフユイチゴと名が変わると教えてもらっていたのですが、近年はフユイチゴなど見飽きた種には目に入らなくなっていました。でも、寒くなって山歩きの中に目ぼしい植物が少くなくなるこの頃ですから、テカテカと光輝く真っ赤なイチゴの実が大群生であれば、やっぱり目に留まるというものです。

 こちらも前回12/6に葉先が尖ったフユイチゴをミヤマフユイチゴだと安易に決めつけていましたが、帰宅後調査のネット上では、昨今その二種以外にアイノコフユイチゴという名前のフユイチゴが認知されていることを知りました。しからばと再訪して確認としたのです。

     
アイノコフユイチゴ(バラ科キイチゴ属)    参考までにフユイチゴは葉先が尖らず丸い 

 フユイチゴはもちろん葉先が丸っぽいですが、さりとて、葉先が尖るのはミヤマフユチゴとは限らないようですから、その点をあたってみましょう。まず、葉先が尖り気味なものを抽出します。そして、以下の状態からアイノコフユイチゴと同定していきました。

     
①葉先が尖っています    ②茎の下部の毛が密生でなく散見されるくらい 
     
③葉先は尖り、葉裏の脈上にかすかに毛あり    ④葉柄には毛が多いが棘は見当たらず 

 その他の植物たちも実等が見られました。中でもイズセンリョウは面白い生態ではないでしょうか。それは、「早春につぼみを付けてから果実が熟す冬から春まで、1年以上を要することになる。長い期間に果実と花を同時に付けた個体を見ないので、果実を付けた個体は花を付けないのであろう。」と旧植物生態研究室(波田研)のホームページを参考にさせていただきました。

     
果実のイズセンリョウ(サクラソウ科イズセンリョウ属)     暑い夏の花コクランも実殻や葉で越冬する

 ベニバナボロギクが寒さの中でも下向きに花をいつまでも咲かせています。他にもノコンギクが咲き残っていました。

         
 ベニバナボロギクの開花期間は長い ジャノヒゲの光沢ある碧色は美しく    ヒヨドリジョウゴの果柄も多毛なり   サネカズラ真っ赤な果実がよく目立ち

12/6アイノコフユイチゴ ホームヘ 12/25.タマミズキ

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